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「あれ…?中に何か紙が入っている。」
「『さあ、残るは宝のみ。大広間へ戻るがいい。』……何これ。」
「まあ、いいからいいから、大広間へ戻りましょう。」
箱を開けたとき、打ち合わせにはなかった謎の紙が入っていた。打ち合わせでは、楓ちゃんに最後の箱を開けてもらって、終わる予定だったはず……。
「15分遅れ…まあ、ちょうどいいでしょう。」
「……何企んでるんですか?」
「とってもサプライズなことよ。」
ガチャ
パーン パーン
ドアを開けると綺麗に飾り付けがされた大広間。劉磨さんと奏が私たちの方へ向かって何かを発している。
「僕たちの屋敷へようこそ、姫。」
「特別に歓迎してやる。」
「え、これ、どういうこと!?たしか打ち合わせでは……」
「打ち合わせ…?」
「あ……。」
「花月と僕たちで姫の歓迎パーティーを企画したんだよ。花月は嘘をつくのが苦手だから、途中までしか教えてなかったんだけどね。それに劉磨にはさっき教えたし。」
「何が、察して、だよ。んなもん言われなきゃ気づくわけねえだろ。」
「何…これ……本当に、バカじゃないの…?こんなこと……私なんかにやっても、何の見返りもないのに……。」
「楓ちゃんは私たちの家族。それじゃ…ダメかな…?」
「家族家族って、血のつながりも何もない他人じゃない。ただ一緒に住んでいるだけなのに……何でこんなに…。」
「血のつながりがないからこそ、本気で向かい合うことができるのよ。お金を稼いできているから親だとか、養ってもらうから子どもとか、そういうことって本当に大切なことなのかしら。皆が平等の立場になれたとき、初めて感情を露わにして生きていける。アタシはそう思うわ。」
「楓ちゃん…私ね、思うんだ。確かに、皆との血のつながりはあるわけじゃない。他人と言われてしまえば他人だけれど、利益や見返りがないからこそ自分自身をお互いを受け入れることができる。他愛のないことで笑ったり、泣いたり…時には喧嘩も…できるんじゃないかな。何もなくてまっさらな状態。だからこそ、自分を飾らなくていい、誤魔化さなくていい、ありのままでいていいんだよ。だからね、今すぐには無理でも……私は、理事長の娘としての楓ちゃんじゃなくて、ありのままの朱鷺院楓ちゃんを見てみたい。少しずつ今までの氷を溶かしていこうよ。」
「私は…怖いよ…。理事長の娘としての私がなくなってしまったら……私には本当に何の価値もない。それが分かってしまうから…。」
「もしそうなったとしても、私たちはずっと側にいるよ。大丈夫……もう、強がらなくていいんだよ。」
「…楓、これが最後の箱だ。お前が開けるために用意した。」