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そこら辺のかんひゅ好き
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#ボカロ
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みずか
212
楽曲「少女レイ」が小説になったらこんなんだろうなーって想像して書きました。
今回は短編です。
そのうちバカながいのもだしたいなー
羽月ちゃん(?)目線
入道雲が、今にも空を突き破りそうなほど白く、重たくのしかかっている午後。 錆びきった踏切の音が、世界を切り離すように鳴り響いていた。
「ねえ、羽月。死ぬなら、こんな暑い日がいいね」
アスファルトから立ち上る陽炎の向こう側で、レイが笑った。 セーラー服の襟元は汗で肌に張り付き、透き通った白い項には、後れ毛が数本、呪いのように絡みついている。
私は、彼女の少し後ろを歩きながら、その細い背中を見つめていた。 彼女が歩くたびに、古ぼけたローファーがペタペタと情けない音を立てる。それが、この静まり返った田舎町の唯一の心音のように思えた。
「……また、そんなこと言わないでよ。暑すぎて頭が沸いてるんじゃない?」
私の言葉に、レイは立ち止まり、ゆっくりと振り返った。 逆光のせいで彼女の顔はよく見えない。ただ、彼女の髪の隙間から漏れる陽光が、痛いほど眩しかった。
「だって、冬に死ぬのは寒くて可哀想じゃない。夏なら、全部が熱に溶けて、きれいになれる気がするの。幽霊になっても、エアコンの風くらいにはなれそうでしょ?」
彼女は冗談めかして言うけれど、その瞳の奥には、底の見えない暗い沼のような色が混じっていた。 私たちは、この学校で「異物」だった。 都会から転校してきた「冷たい」私と、クラスの誰とも馴染もうとしない「浮いている」彼女。 屋上の隅、誰も来ない視聴覚室、そして海沿いの崩れかけた防波堤。 世界から見捨てられたような場所だけが、私たちの居場所だった。
「羽月は、私がどっかに行っちゃったら、探してくれる?」
羽月が防波堤の縁に立ち、両手を広げた。 その先には、青すぎる海と、どこまでも続く水平線。 風が吹き抜け、彼女のスカートが大きな羽根のように翻る。一瞬、彼女が本当にそのまま鳥になって、空へ溶けていくのではないかと錯覚した。
「探さないよ。……一緒についてって、怒るだけ」
私の答えに、レイは子供のようにあどけなく笑った。 そして、堤防からひらりと飛び降り、私の目の前で着地する。 近づいた彼女からは、石鹸の匂いと、少しだけ焦げたような夏の太陽の匂いがした。
彼女の手が、私の頬に触れる。 指先は、驚くほど冷たかった。
「……ねえ、約束だよ。もし、私がいなくなっても、この夏のことは忘れないで。セミの声も、この生温い風も、私が羽月の横にいたことも」
その言葉は、まるで遺言のようだった。 私は彼女の手を強く握り返した。壊れてしまいそうなほど細い手首。そこには、彼女が隠しきれなかった小さな傷跡が、青白い血管の横で静かに疼いていた。
「忘れるわけない。忘れてなんてあげない」
あの日、踏切が閉まる音がした。 遮断機の向こう側で、彼女が笑った気がした。 蝉時雨が激しくなり、視界が白く爆ぜる。
「君は友達」 そんな言葉で片付けるには、私たちはあまりに求め合いすぎていた。 「好き」という言葉は、この灼熱の太陽の下ではあまりに無力で、口にした瞬間に蒸発してしまいそうで怖かった。
今でも、夏が来るたびに私は思い出す。 君の冷たい指先と、あの日の壊れそうな青空。 線路沿いに咲いた向日葵が、首を垂れて私たちを見送っていたこと。
君のいない夏が、今年もまた、残酷なほど美しく始まろうとしている。 私は一人、あの錆びた踏切の前に立ち、二度と開かないはずの向こう側を見つめている。
「……暑いね、レイ」
返事はない。
コメント
3件
読了しました。冒頭の「死ぬなら、こんな暑い日がいいね」というレイの台詞、そこから続く羽月の視点の距離感が、もうたまらなく切なくて。遺言みたいな「忘れないで」に、思わず息を止めました。最後の「暑いね、レイ」に返事がない静けさが、余韻として長く残ります。夏の匂いと、冷えた指先の温度差が美しい一篇でした。