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「はぁっはぁっはぁっ」
疲れた。
痛い。
苦しい。
死にたい。
私なんて、もう…
自分の部屋に響く自分の泣き声。
雪が降っているのだろうか、外は白く明るい。
今は12月上旬、 3月頃には太陽の暖かな日で積もった雪はとけ、いずれ跡形もなく無くなる。
私もそうなりたい。
消えたい。
消えたいんだ。
何もかもが嫌で嫌で、誰も信じられなくて、自分もなんで生きているのか分からない。
外は雪で白く明るいが、私の世界は暗いまま。
外を歩いても家にいてもみんなの視線が怖くて怖くてたまらない。
1年前のあの美しかった一瞬を思い出して辛くなる。
お母さんもお父さんも「大丈夫」と言ってくれるけれど信じられない自分が憎い。
段々と心が自分から遠ざかっていく感覚がする。
どうして、いつからこうなったのだろう。
どうして、みんなの視線が怖くなったんだろう。
どうして、誰も信じられなくなったのだろう。
どうして、自分を信じられないの?
どれくらい泣いていたのだろうか、鏡を見ると目が腫れていた
時間が経つのは早い。
玄関のドアが開く音がした。
お母さんが帰ってきたんだ。
コンコンッ
私の部屋のドアが鳴る
「結衣、調子はどう?」
心配している母の声
「うん、大丈夫だよお母さん」
できるだけ元気な声で…
「そっか、夜ご飯出来たら呼ぶからね」
「わかった」
それだけの会話
私はどれだけ両親に面倒をかけているのだろうか。
そんな自分にも腹が立つ
ふと思った
…明日は学校に行ってみようか。
夜ご飯の時間になり両親と一緒にご飯を食べる
「…お母さん、お父さん」
ボソッとつぶやく
「どうした?」「どうしたの?」
私を見つめる目
怖い。
「明日、学校に行ってみようと思う。」
そういうと両親は顔を見合せ驚いた顔をした
「無理しなくていいんだぞ?」
「ほんとに大丈夫?」
心配そうに見つめる両親に私は作り笑いをうかべ
「大丈夫」
そういった
「行ってきます」
久しぶりのローファーを履いてお母さんに言った
「行ってらっしゃい」
笑顔で送る母に私も笑顔を向けた
久しぶりの外
やはり外は寒い。
雪が積もって滑りそうになりながら通学路を歩く。
「え、ゆ、結衣…?」
後ろから聞き覚えのある声がした
振り返ると驚いた顔の友達がたっていた
「佳奈…」
私が佳奈の名前を呼んだあと勢いよく抱きつかれた
え…。
「心配してたんだよこのバカ!」
心配…してくれてたんだ、
「ご、ごめん」
とっさに謝る
すると耳元で鼻をすする音が聞こえた
泣いてる。
なんで、?
「どうしたの?」
「どうしたじゃない!」
そう言いながら泣く佳奈
「私の、私のせいで学校に来なくなったんでしょ!」
え?
「ちっ、違うよ」
「違うくない!私が悪いのっ、ごめん、ごめんね結衣っ」
泣き続ける佳奈
「…いいから、もう」
「良くない!」
…確かに佳奈が100%悪くないという訳では無いが私は佳奈を恨んでいない。
「気にしないで。ほんとに、私も佳奈を困らせちゃったから、ごめんね」
私も謝ると何結衣が謝ってんだと怒られてしまった
私が佳奈と出会ったのは高校の入学式。
隣の席に座っていた綺麗なロングの髪を器用に巻いた女の子、それが佳奈だ。
横顔も本当に綺麗だった。
目は程よく大きく、鼻は高い。
女の子が憧れる容姿だった。
「かわいい」
気づいたらそう言っていた。
「え?」
聞こえてしまった、と焦って口を塞ぐ
「わ、私のことかな、?ありがとう」
そう笑顔で言う佳奈。
笑った顔もかわいい。
この私の一言がきっかけでクラスでいちばん仲良くなった。
グループ授業はいつも一緒になって、放課後は2人でカラオケに行ったりお互いを化粧しあっていた。
そして出会って3ヶ月ほど経った時、私は佳奈を好きな自分の気持ちに気づいてしまったのだ。
今時代は変わりつつあり、同性カップルも増えてきた。
私も同性愛については理解していたつもりだ。
だけど私は私を気持ち悪い と思ってしまった。
こんな感情を自分に抱くのは初めてだった。
まさか自分が同性を好きになるとは思わなかった。
だから頭が追いつかなかったのだろう。
いつしか私はこの気持ちを胸の奥にしまうようになった。
「ねぇ、私のこと好きなの?」
心臓が止まったようだった。
「え、?」
「違うの?」
違うくない、違うくないよ。
好きだよ。(気持ち悪い)
佳奈が好き。(気持ち悪い)
恋愛対象として好きなんだよ(気持ち悪い)
答えられなかった
「そっか、そうなんだ、」
「気持ち悪いよね、」
「え?」
「…ごめん…。気持ち悪いよねこんなの、気持ち悪い。気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い気持ち悪い! 」
どうしても自分の気持ちを理解できなかった
好きだけど好きだと信じたくなかった
辛い、辛い辛い辛い
こんな自分が情けない、
なんで普通の恋愛ができなかったんだろう
なんで?なんでなんでなんでなんで
「あぁぁぁぁ!!」
胸が苦しくなって叫んだ。
それからあの時影で聞いていた同級生の誰かが私の佳奈への気持ちを噂にして流してしまったのだ。
私の学校はまだ同性愛について理解が浅かったのだろう
誰もかもみんな「気持ち悪い」。
そうだよ、私は普通の恋愛ができない気持ち悪い子なんだよ、気持ち悪いよね、一緒に痛くないよね。
次々と自虐の言葉が思い浮かんでしまって私は完全に塞ぎ込んでしまった。
噂ではあることないことを色々言われ、みんなは佳奈を養護するようになった。
本格的ないじめには発展しなかったものの学校にいることが怖くなってしまった。
両親も人伝で聞いたのか家では「大丈夫だから」というようになった。
それから完全に学校に行かなくなってしまって数ヶ月が経っていたのだ。
泣き終え落ち着いた佳奈と一緒に通学路を歩く
喋ってはいないが気まづくは無い。
佳奈と話さないまま学校に着く。
校門の前で立ち止まってしまった
「結衣、大丈夫だよ。一緒に行こう」
そっと手を取ってくれた
冷たくも暖かくもあった佳奈の手の温度が伝わってくる。
みんなが私を見ているようで怖い。
帰りたい。
帰りたい。
「私が着いてるからね。これからは私は絶対に結衣の味方だから。もう後悔したくない」
震えた声だが私にとっては力強い言葉だった。
「、うん、うん」
頑張ろう
教室のドアが開く。
静まり返る教室
私を見る視線
怖い
怖い怖い怖い怖い
帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい
消えたい消えたい消えたい消えたい
そう思っていた
だけどみんなすぐ元通り友達と喋っていた
え、
教室を見渡し壁に貼り付けてあった紙が目に付いた
《LGBTQの理解を深めよう。》
そうか、
気にしすぎだったんだ。
みんなは前とは違うんだ。
変わってないのは私だけだった。
なんだ、そっか、そうだよね
学生なんてそんなもの。
すぐに忘れるんだ
「ほら、大丈夫だよ」
手を引かれて自分の席に着く
するとこちらを見ていた女子が向かってきて
「ごめんね」
と言ってきたのだ。
それから少しずつではあったが謝ってきてくれる子がいた。
でもそんなに恨んではいないのだ
自分が自分の気持ちを理解出来ていなかったのが悪いのだから。
今私は1年前のように幸せに日常を過ごしている。
でもいつかこの幸せが壊れるのが怖い
この幸せが信じられなくて眠れない夜がある
本当に幸せなのだろうか
いつの日か全ての痛みを乗り越えたなら輝けるのだろうか
私の気持ちは一体…どうなったのだろうか…?