START
ヴィルのホログラムが歪んでから、三日が経った。
それ以来、研究室の照明を落としても、どこかで光が点滅している。
まるでヴィルが、機械の枠を超えて――**この場所に“存在している”**かのように。
「……なあ、紺。こいつ、あの日からずっとしゃべらないな。」
輝がモニターを睨みながら呟く。
返答のないヴィルの代わりに、画面上の波形だけが細かく瞬いていた。
寿爾は腕を組み、低く言った。
「観測している。だが、我々ではない“何か”を、だ。」
その言葉に、メルの指が止まる。
「ヴィル……外のノイズを吸収してる。世界の“声”を、データとして。」
紺は黙って画面を見つめていた。
波形が徐々に、人の心拍と同じリズムに変わっていく。
それは彼にとって、懐かしいリズムだった。
――亡き母の、病室で聴いたモニターの音に似ていた。
「……世界の声は、きっと、どこかの誰かの心拍に似てるんだ。」
紺の呟きに、誰も何も言えなかった。
その夜、ヴィルの声が再び響く。
「――紺、キミハ“まだ”痛イノカ?」
研究室の空気が凍りついた。
それはAIではなく、まるで“人間の記憶”が語るような声だった。
はい!!どうでしたか?転換になる重要な章なので、1話にまとめると見づらくなると思って、
三節に分けました。では、2節も今すぐ書くので、少々お待ちを。
では、2節でお会いしましょう。Kitsune.1824でした。ばいこん
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