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8,740
拗らせysdさんを書こうとしたらとても長くなってしまったので分けます。それでも少し長いです。次回は数字稼働が入ると思われます。
nmmn、sojn
上記の言葉の意味がわからない方は閲覧ご遠慮ください。
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「好きなんよ。俺と、付き合ってくれへん?」
「…………は? 」
ありがたいことに俺も参加させていただいているユニットでファンの方などに向けて述べ、何度も何度も聞いた台詞を、太智は俺に向けて言い放った。その顔にいつものようにおちゃらけた雰囲気は全くなく、真剣そのものだったことで更に困惑が滲む。どうして俺なんだ。太智ほど愛嬌があってモテるであろう人が、なんで俺に来た。
「……え、っと、」
「……どうやった!?!?」
「ど、……」
此方はまったくと言っていいほど処理しきれていないと言うのに、すぐにいつものおちゃらけた表情に戻り、どうやった?だなんてワクワクした様子で問いかけてくる。どうと言われても。コイツは俺に、何を求めているんだ?
「告白!!ドキッとした!?あんなあんな、俺好きな子できてん!」
「それでなあ、告白しようと思ったんやけど、やっぱしいきなりはあれやん?やから、吉田さんに意見を聞こうと思って……ってあれ?どうしたん?よっしーー? 」
あのな、太智。俺さ、お前のこと好きなんだよ。いきてる?じんちゃん?じんとー?なんてぶんぶんと視界の端で手を振る太智が目に入って、不覚にも泣きそうになる。こんな所で泣くなんてダサすぎる。と流石に涙を引っ込めた。好きな人の幸せは、願うべきものだろ、吉田仁人。練習したいと言うのなら、存分に付き合ってやろう。
「正直ダサい。パフォーマンスと同じ台詞ってどうなの?舐めてんの?真剣さ伝わんねえだろうが。」
「えっこわ。急に喋るやん…。しかも口悪っ!なんでそんな怒ってんのお…?」
「太智さ、俺に相談したってことは、わかってんだよな?」
「………ひょえ、」
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「す、好き、じんとのこと、めちゃくちゃすきやねん、っやから、おれと………」
「必死さは伝わるけどさ、ガチガチすぎない?その人とどれくらい親しいのか知らないけどさ、そんなガチガチだとかえってダサい。」
「あとさ、俺の名前使うのやめない?なんか複雑なんだけど……」
「んんんんもうっ!!何回やらされてんねん俺!もう嫌やってえ………」
かれこれ10回程試行錯誤を重ねた太智の告白を受け続け、そろそろ気持ちは慣れてきた。ただ、じんとが好き、仁ちゃんとずっと一緒にいたい、付き合いたい、そんなことを言われるたびにとくんと少女漫画の如く蠢く心臓に嫌気はさすのだが。俺、まだ太智のこと諦め切れてないのか。未練ったらしい男は良くないんだけどな。
「……あ、名前なあ…じゃあ、そうやなあ、好きな子の名前聞く? 」
「嫌だ。」
「なんやねん!!吉田さんが変えろって言ったんやんか…」
「………いやほら、今後その、同じ名前聞いた時に太智過るの嫌っていうか。」
「そんなに俺のこと嫌い??」
「それは、断じて違うから。複雑なだけ。知りたくないだろあんまりメンバーのそういう事情。」
そんなのは嘘だ。太智から他の女の子が好きな旨なんて、聞きたくない。別に、太智に好きな女の子がいることは頭では理解している。ただ、上手く実像が結べないおかげでなんとか耐えられているのだ。俺の中の想像で勝手に作り上げられた小さくふんわりとして可愛らしい、俺とは真逆な彼女に名前がついたら俺は、いよいよ耐えられない。今でさえ、太智から好きな子、と言う言葉を聞くたびにズキンと胸が痛むのだから。
「………??よくわかんないな。そや吉田さんさあ、今度のんー…水曜?だったかな。空いてる?デートしようや!」
「……デートお?」
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太智曰く、今後来るであろうビッグイベントのデートに備えたい、とのことだった。コイツ俺を利用しすぎだろ。俺がお前を好きで、断れないのをいいことに。まあそんなこと、太智は知る由もないし、言うつもりも全くないのだが。俺としたくてするデートじゃないとはわかっているのに変に気合いが入って、2時間服に葛藤した挙句30分早く現地に着いてしまった。スマホを見て太智からの連絡が目に入ることで変に緊張するのも嫌で、手持ち無沙汰になった指を絡めたり解いたりと繰り返した。
別に出かけることが初めてなわけではないし、そんなに緊張する必要ないのにな。メンバー同士だし。でも、これはあれだ。太智が悪い。デート、とか、変な言い方するから。
そんな悪態を心の中でついていると、バタバタと言う足音と共に太智の声がした。
「よっしださん、ごめんなあ!…待たしたやろ、にしてもはやいなあ笑、まだっ…、はあ、10分前やで……?笑」
「10分前やから余裕やろ!とか思ってたんに、来たら吉田さんおったからびっくりしたやん笑」
そう肩で息をしながら述べる太智。俺を見つけて、わざわざ走ってくれたのか。再びとくんと小さく心臓が鳴る。チョロすぎるだろ俺(笑)心なしか太智も少し気合いが入っていて、かっこいいなあなんてぼんやり思った。予行練習だもんな。本番通りいかないと。
「行こ、映画見るんでしょ?」
そう述べてから改めて見た太智の顔はやっぱりカッコよくて、ああこれからこの顔は、俺以外の誰かが沢山見ることになるんだななんて思うとまた胸が苦しくなった。
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映画館はわりかし好きだ。物語に没入出来る感じがあって、ワンシーン毎に変わる景色が飽きも来ずありがたい。今回の映画は恋愛モノだった。太智がチョイスしたのだが、何もこんなに初心初心なものを俺と見なくても。あれか?予行練習だからか?本番に忠実すぎるだろ。
それでも見ないのは失礼なのでわりかし真剣に見入っていると、肘掛けに置いた手にそっと触れる感触があった。当たり前だがそんなこと予想していないのでびくりと肩が跳ね上がり、怒りの気持ちも込めて太智を見ると、そこにはとんでもない顔をしている太智がいた。
「………練習、やからさ? 」
なんて悪戯っ子のように目を細める太智と目が合って、俺の手の上に重なる太智の指はぎゅ、と俺の指と絡まって、俺の思考はもうキャパオーバーだった。とくん、なんて可愛らしいものじゃなく、ばくばく、どくどくと血液が心臓から物凄い勢いで流れ出るのを直で感じて、顔が赤くなるのも、太智の顔が見れなくなるのも、全部が恥ずかしくて、もどかしくて、俺はそっと顔を背けた。
ちなみに映画の後半は何も話が入って来ず、気づいたら主人公は幼馴染と結ばれていた。
「………あのさあ太智、ああ言うのやめた方がいいよ。」
「!?出て開口一番それかい!」
がーん、なんて自分で口に出して言う太智を軽く叩くと、いてっ、と間抜けな声が聞こえてきた。ふざけんなよコイツ。俺の気も知らないで、手なんて握ってきやがって。映画代がパーだよ。およそ2,000円払って得られたのは、お前の手の感触なんだよ。…喜んでんのも、意味わかんないし、最悪だよ。俺の頭をぐちゃぐちゃに乱しやがって。
「あんまし集中出来なくなると思うし、物語に」
「……え!なあに吉田さん、ドキドキしちゃったんですかあ゛ッで!」
先ほどの3倍ほどの威力をお見舞いしてやると、ごめんやて〜…なんて言いながら俺の後を少ししょげたようについてくる太智がいた。お預けくらった犬みたいで可愛いが、そんなことで機嫌が治る俺ではない。人の気持ちを弄んだ罪は重いんだよ。男とか女とかこの際関係ないからな馬鹿野郎。とくと反省しろ。
「あ、そうや。パンケーキ食べやん?」
「パンケーキ?」
前言撤回、しょうがないから許してやろう。
甘い物に釣られたとかそういうわけではないけれど、俺だって甘いものが好きな訳で、これなんやけど、と見せられたパンケーキはふわふわで、色鮮やかでそれはもういいものだった。それに、太智が俺とのデートを思って…は、自惚れすぎな気もするけれど、わざわざ調べてきてくれたことが凄く嬉しい。どうしても緩んでしまう頰を誤魔化すようにごくりと唾を飲み込むとそれすら甘いような気がしてきて、これから得られるであろうとびきりの甘味に脳を浮つかせた。
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「…………えっぐ、」
「あかん、俺……これ並ぶんは無理や。」
一体どこまで続いているのやら。行路の途中横に列が見えた時点でなんとなく嫌な予感はしていたが、今日は平日で、しかもそこそこ遅い時間だというのにとんでもない行列が出来ていた。まあ、太智が穴場を見つけるとは思えないし、そうだよな。すっげえ美味そうだったもん、あのパンケーキ。可愛らしい女の方が沢山並んでいて、それを見つめる太智を見てまたずきんと胸が痛んだ。意味わかんない所で嫉妬心を燃やす自分に嫌気が差した。 今回のデートの気分は最悪だ。上がり下がりが激しすぎる。ジェットコースターか。乗れないからどんなもんかは知りませんけど。
「………しゃあない、飲もか。」
「あ?」
コイツの選択肢ってパンケーキか飲むかの2択なの?ヤバいだろ。というか飲むってあれか?俺に奢らせる気じゃねえだろうな。こっちは彼女の定なんだぞ。あれだろ、彼氏が奢るのが鉄則っていうか。そんなこと今の時代に言ったらぶっ飛ばされるだろうが、普段から散々奢らされているんだし、今回くらいはいいだろう。ちょっと気合い入れたのにな、またいつも通り店で飲んで、またなーってして、太智は普段と変わらない生活を送るんだろう。俺みたいに拗らせたりせずに。
「さ、コンビニ行くでー、甘いもんとかあるんかな?パンケーキ気分やったんにな…」
「………えっ、は、コンビニ?」
「おん。滅多にない機会やし、俺ん家来たらええやんか。なんなら泊まってく?(笑)」
そうへらりと笑って見せる太智。驚いた。太智の家に行くのなんていつぶりだろうか。おまけに泊まっていく?だなんてお決まり文句付き。やり手だなコイツ。彼方は冗談のつもりなのだろうが、生憎こちらは明日もオフなんですわ。弄んだ罰はここで受けて貰うとしよう、パンケーキも食べられなかったことだし。
「うん。泊まる」
「おー。………えっ、まじい!?」
「お前が泊まる?って言ったんだろ。」
「ほお…へえ……そう。吉田さんて、…なんかそんな感じやったっけ。」
「ぶっ飛ばすぞ」
「んは!笑冗談やんかあ〜。ほら、行こ。ええよ、久々にお泊まり会しよか笑。男二人って奇妙やけどな。」
そう楽しそうに太智は笑い、流れるように俺の手を取った。きゅん、と可愛らしい音が心臓の奥で聞こえる。少女漫画か。こういうことを自然とやってのけるからコイツは、きっとモテるんだろうなと思う。あんなに色んな人に思われている太智に手を引かれるのが俺でいいのかと少し思ったが、この際開き直ることにした。未来の彼女になるであろう人、み!るきーず、ごめんな。今太智は俺だけのものだから。今から太智と飲めるのも俺で、太智が今手を引いているのは、誰でもない俺なんだから。今この瞬間だけだったとしても、これくらいは許して欲しい。誰にも負けない自信があるほどに、俺は塩﨑太智を好きになってしまっているんだ。
「……吉田さんが握り返してくれると思わんかった笑」
だなんて言いながら振り返って目を細めた太智と目があって、俺はもう隠すこともせず頰を緩めた。今だけ、俺だけの太智。握り返したっていいだろう、少しくらい夢の中にいたい。そんな浮ついた気持ちでいるうちにコンビニへと辿り着き、ここは夢の中などではなく紛れもない現実なのだと我に返った。折角掴んでいた手はそっと解き、熱くなる頰を隠すように太智から目線を背けた。
大量にある酒に目を向けてうわあ、と小さく声を漏らした太智は、これも、あれも、と幾つかの種類の缶を手に取った。
「あんま飲み過ぎんなよ?」
「泊まってくれるんやろ?いざとなったら助けてや笑」
「あ…でもあれな、先に風呂な? 」
「相変わらずだなお前。」
こいつはこの先彼女ができたとしても同じようなことを言うのだろうか。こいつ程の潔癖に耐えられる物なのか?それとも太智の中で、好きな人は清潔だの不清潔だのそんなもので区切れないのだろうか。なんか考えたら嫌になってきたな。やめやめ、こういう時こそパーっと飲もう。そう思い気づけば太智と大差ないほどの缶をカゴに入れ込んでいた。
「お?吉田さんも乗り気やん笑」
「たまにはいいだろ。」
アイドルたる物美容には気を使わないといけない。もちろん健康にも。でも、たまには酔いしれたい夜だってあっていいだろ。人間以前にアイドル、とは言われるが、多少の欲くらいは解消させて欲しい物だ。それに、あれだ。好きな人の家に泊まるんだぞ俺。素面で行けるわけないだろ、二人きりだし。酔って変なことを口走らないかという心配はあるが、それはそれでもうしょうがないような気もしてしまう。
「ようし、買うもん買えたし俺ん家行こかー!!」
ちゃっかり甘い物、しょっぱいものと幾つか買い込み、これは美容に強敵だななんてぼんやりと思ったのを頭から消した。そんなことより、と探検家気取りで手を上にあげずんずんと歩き始めるの太智の後を、今度は荷物に取られてしまった手を見つめながら追いかけた。
コメント
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うわ、これめっちゃ刺さるわ……!じんとの心情描写が細かくて、太智の無自覚な優しさとか行動に一喜一憂する感じがリアルすぎてしんどい。手を握るシーン、映画館でドキドキして内容全然入ってこなかったってとこ、完全にわかる(笑)。拗らせ系の片思い、解像度高くて大好き。続きが気になる〜!