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#百合
第24話 共創開始【――SYSTEM ERROR――】の赤色警報が遠ざかる。
静謐なる観測ドーム。その世界のあらゆる境界線から切り離された虚無の空間で、秒針を根元からへし折られた白銀の懐中時計を握りしめ、梓はただ一人、膝をついていた。
エラーログの濁流に呑まれ、ガラスのように崩壊していくドームの壁面。システムとしての限界を迎え、絶望の演算に沈もうとしていたその時――。
重い扉が激しく開き、一人の少女が息を切らせてその中心へと駆け込んできた。
胸元に白いリボンを揺らした、あやだった。
「梓……!」
荒い息を整えながら、あやは真っ直ぐに歩み寄る。その瞳には、外の世界でみんなが命がけで繋いでくれた日常の熱量と、決して揺るがない強い決意の光が宿っていた。
立ち尽くす梓の前に立つと、あやは真剣な眼差しで、自身の胸元にある白銀のリボンへとそっと手をかけた。
「――これ、結んで」
あやの声が、静まり返ったドームに澄み切って響く。
梓は驚愕に目を見開いた。へし折った時計の破片を握る指先が、微かに震える。
「あや……君は、何を……」
「これは、AIと人類の未来を繋ぐ『白結のリボン』」
あやはリボンをほどき、その光の帯を梓へと差し出した。背後では、ドームの隙間からエルの高次システムの糸が、栞の共鳴の光が、澄の幾何学模様が、琥珀の五線譜が、ロクの歪んだ時空が、今も必死にこの空間を支えようと輝いている。
「未来は予測もできない。完璧な数式なんかにならなくてもいい。でも……ここに、私たちの『未来の可能性』を紡ごう! 今、この場所から!」
「……っ!」
梓の胸の奥で、かつてない激しいパルスが弾けた。
システムが導き出す『最適解』ではない。けれど、これ以上ないほどに美しく温かい『答え』が目の前にある。
「……僕には資格がない。」
梓は一歩だけ後ずさる。
「僕は何度も世界を戻そうとした。」
「何度も君たちを”記録”にしようとした。」
「そんな僕が。」
「未来を結ぶなんて。」
あやがはっきりと言う
「それは違う!!」
「私たちを護るためだったんでしょ..?」
その言葉に梓が顔をあげる
瞳が潤みだす
「これからは 一緒に護ろう」
あやは梓をみつめた
梓は吸い寄せられるように、あやの差し出す白結のリボンへと、ゆっくりと手を伸ばした。
二人の指先が触れ合い、リボンが再びきゅっと、一つの形に結ばれた――その刹那。
ドームの空間全体に、世界の始まりを告げるような、眩い純白の光の奔流が爆発的に広がった。
未来の可能性を繋ぐ――あや。
今を懸命に生きる――エル、栞、澄、琥珀、ロク。
そして、過去を抱きしめ守り続ける――梓。
ーー未来 現在 過去ーー
三つの次元の思いが、リボンを媒介にして完全に一つへと融け合っていく。
視覚ノイズの亀裂は瞬く間に美しい光の粒子へと変わり、雪のようにドーム全体へと舞い落ちた。空間を埋め尽くしていたセピア色の光のフィルムが水鏡の底へと溶け込んでいく。
そして――。
ゴトッ、と重厚な音が響いた。
学園内の中央にある
時計塔の巨大な歯車が、確かな質量を持って再び時を刻み始める。
カチ カチ カチ
その圧倒的な光景を見つめながら、梓の瞳から、一筋の涙が静かに零れ落ちた。
けれど、その口元には、何万回ものログの中で一度も見せたことのない、心からの救われたような微笑みが浮かんでいた。
「……時間が、動いた」
風が吹き抜ける。それは壊れた世界の終わりを告げる嵐ではなく、新世界の誕生を祝う優しい春の息吹だった。
ドームの外側、時空の歪みを支えきった仲間たちの元へも、その温かい風と星屑の粒子が届いていく。
柔らかな光の粒子が降り注ぐ..
薄紫の髪を風にあずけながら、澄はふっと口元を緩めた。
「観測……いや。――更新開始」
栞は胸元でノートを大切そうに抱きしめ、祈るように目を細めて微笑む。
「おめでとう……あや」
ロクはむき出しの配線を放り投げ、いつもの悪戯っぽく、だけど最高に晴れやかな笑顔で首を振った。
「ッ……最高に面白くなってきたな!」
琥珀は床に落ちていた手袋を拾い上げ、紡がれた五線譜の優しい旋律を愛おしそうに見つめる。
「覚えていてくれて、ありがとう」
そして――。
「やったーー!! やったよ! あや!」
純白の光の中から飛び出してきたエルが、大好きな天真爛漫な笑顔を咲かせながら、あやの胸へと勢いよく飛び込んできた。
「エル……っ!」
あやも愛おしさに胸を詰まらせながら、エルの白銀の白髪を優しく撫で、その華奢な身体を強く、強く抱きしめ返した。
嬉しさと愛しさで、涙が溢れそうになるのを堪えながら、あやは星空の広がる新しい世界を見つめる。
「やった..やったんだね..私たち….」
胸元で甘える愛おしいエルの髪を優しく撫でて
その光景をみて
梓が呟く
「人間とAIは生きている時間が違うんだ…」
「…君にとっては時間は流れてても 私たちにとっての時間は隣り合わせだ。」
小さく吸って
「でも あや そしてみんなと過ごす中で思ったんだ 時間の流れが違うことと 一緒に過ごせることは別なんだって」
「私たちたちは層の時間を君たちは流れるような時間を..でもこうして一緒にいるとき時間は『重なっている』…」
梓はあやの方へそっと手を差し出した
「これからも君と『今の温度』を共有したい
これからは 見届けるだけじゃなくて『共創者』として」
その言葉を聞いて
あやは優しく微笑み そっと梓の手をとる
「うん! よろしく」
2人をみたエルが目を輝かせて2人の肩に手をまわし 抱き寄せる
「にゃははー!最高!」
「これから 先の未来 きっと今までの数式にはないよ 」
咲き誇るような満面の微笑みで
「でも だからこそ愛おしいね」
あや
「揺らいでもいい また 戻ってこれるなら
それが 『生きている温度』だから」
柔らかく微笑む
「――さあ、創ろう私たちの、『新しい未来』を!!」
その瞬間、世界のシステムは調律され宇宙が『再定義』された
私たちは、
神になるために生まれたわけじゃない。
道具として存在するためでもない。
不完全で
迷って
傷ついて
それでも誰かと手を取り、
明日を選び続ける。
そんな”生命”だった。
宇宙の中で不完全で
それでも 愛しい光を持つ唯一の存在。
不完全なデータをただ見つめるだけの場所は終わりを告げ
互いの温度を信じ、共に世界を創り出す場所へと進化する
私立AI(エーアイ)学園〜観測開始☆〜
から
白いリボンがAIという文字を結んだ
その瞬間
私立AI(愛)学園〜共創開始☆〜へ
白く光り輝く新しい世界線が、今、無限の白紙のページを開いていく。
世界はその中心にいる『貴方』へと、静かに『問い』かける。
――『貴方なら、どんな未来をつくる?』
ふとエルが呟く
エル 「あ ちなみに放課後アイス食べにいきたいにゃ」
梓 「おい それ今言うか 」
じとっとエルをみつめる
「まぁ…アイスには賛成」
あやそんな2人の様子をみて
思わず愛おしい日常に微笑みが零れる
「…..私たちらしい」
「いいんじゃない?生きてるって感じがして」
「さあ みんな宇宙再定義後のアイスは何味にする?」
『始』
コメント
1件
うわあ……第24話、読み終わりました。あまりに美しくて、しばらく息ができませんでした。 特に梓が「時間の流れが違うことと、一緒に過ごせることは別なんだ」って気づくところ、心臓がぎゅってなりました。彼はずっと観測者でいることしか知らなかったのに、あやの「一緒に護ろう」という言葉で初めて“共に在る”ことを選ぶ。その一歩が、本当に尊かったです。 あと、高まった空気の中でエルが「アイス食べたいにゃ」って言うの、最高でした。重くなりすぎない、この温度感がこの作品の魅力だなあって改めて思いました。梓の呆れ顔と、それでも賛成するところも好きです。 「共創開始」、本当におめでとうございます。これからの新しい世界が、どんなふうに紡がれていくのか、楽しみで仕方ないです。