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今日もリビングには、空いた缶やグラスがいくつも並び、笑い声と話し声が飛び交っていた。メンバー全員での宅飲みは、いつもの緩いテンションとは少し違って、どこか特別な時間だった。
「もうさ、今日は俺たち、全員酒強いからさ、気が抜けないよな〜」
ないこが軽口をたたきながら、手にした缶をくるくる回す。
Ifも静かに笑いながら、薄く目を細めていた。
そんななか、初兎はいつもより多くビールを口に運んでいた。
普段は飲む量を抑えているが、今日はみんなと一緒でなんとなく楽しくて、ついつい飲みすぎてしまいそうだ。
「初兎ちゃん、大丈夫? 顔赤くなってるよ」
りうらが近づき、心配そうに声をかける。
「……うん、大丈夫……ただ、ちょっと……熱いだけや」
言葉少なに答えながらも、初兎の頬はほんのりと紅潮している。
「もう一杯、いる?」
りうらの手に握られたグラスが、初兎の前にそっと差し出された。
「うん……でも、りうらは……飲みすぎないでね」
「俺? 俺は大丈夫」
そう言いながら、りうらは軽く笑い、グラスを傾ける。
しばらくして、初兎の目は少しトロンとしてきた。
話す言葉も少しだけゆっくりになり、体の力も抜けていく。
「りうら……なんか……楽しいな」
その声は普段よりもずっと優しくて、どこか甘えているように聞こえた。
りうらは自然と腕を伸ばし、初兎の肩に手をかけた。
「そうでしょ? 今日はみんなで飲んでるから、無理しなくていいよ」
「ありがとう……」
初兎の視線が少し揺れ、ふいに笑みが零れる。
「りうら……俺、なんだか……お前のこと、もっと近くに感じたい」
りうらは少し驚いたように目を見開いたが、すぐに穏やかな笑みを返す。
「いいよ。いつでも」
そう言うと、りうらは静かに初兎の手を握り、指先で優しく撫でた。
部屋の空気は、酔いに溶けた甘い時間で満たされていく。
「……お前といると、なんだか……幸せな気分になる」
初兎の声は小さくて、けれど真剣だった。
「俺も、だよ」
りうらはそっと初兎の肩を抱き寄せ、二人はふたりきりの世界に沈んだ。
そのとき、ふいにドアの外からないこの笑い声が響く。
「おっ、初兎、甘えてるな〜?」
二人は顔を見合わせ、ふっと笑う。
「……もう、ないちゃんはほっといて」
そう言って、初兎はりうらの胸に顔をうずめた。
静かに、だけど確かに交わされる温もりに、酔いは優しい魔法のように。
「……りうら、ちょっとさ……」
ふわりと甘えた声で初兎が囁いた。
りうらの胸に顔を埋めたまま、ぼんやりとした目でこちらを見上げる。
「なに?」
「もっと、近くにいてほしい……」
りうらは笑みを浮かべて、そっと頭を撫でた。
「いいよ。初兎ちゃんがそうしたいなら、ずっとここにいる」
「……ありがとう」
初兎の手が、りうらの腕に絡みつく。酔いで感覚が鈍くなっているのか、普段より大胆だ。
「なあ、りうら……」
「ん?」
「俺のこと……好き?」
声は小さくて、少し恥ずかしそうだ。
りうらは一瞬驚いたが、すぐに優しく答えた。
「好きに決まってるでしょ。初兎ちゃん以外、考えらんない」
初兎はその言葉に顔を赤らめて、照れくさそうに目を逸らした。
「バーカ……」
甘えたように小さく呟いたあと、初兎はりうらの唇にそっとキスをした。
「……もっと、りうらに甘えたい」
「……初兎ちゃん、酔ってるくせに」
りうらは笑いながら、初兎の背中を優しく撫でる。
「酔ってても、りうらに甘えるのは本当の気持ちなの」
「じゃあ、ずっと甘えてていいよ」
そう言って、りうらは初兎をしっかり抱きしめた。
部屋のざわめきが遠くなり、二人だけの甘い時間が静かに流れていった。