※続きです
⚠️多分22話くらいで出てきた、ロシアが助けた🇺🇦側の兵士が出てきます!そういう奴いたなーくらいに覚えておきつつ読んでいただけると嬉しいです(できたら資料を後で上げたいと思います)
⚠️モブたくさん出てきます。あと本当の本当に微量🔞表現
「───以上。これが、僕がアイツと今まで人生を共にしてきたその顛末。……二回、あったんだ。彼が実際に事を起こしたのは。最初が、今話した事実。二回目は……僕は、兄さん……ロシアと、オストさん……今はもういないけど……、ドイツさんの双子の弟さんの方かな、あろうことかこの二人を殺そうとした。もちろん未遂に終わったけどね……いや、終わらせることができたんだ。毎回僕を止めてくれた、父さんのおかげで。……それからロマンはあまり活発な動きを見せることはなかったから、完全に消失したのかと思ってたけど───違ったみたい。大きな動きを見せたのは、今回が三度目だ」
そこで、伏せがちだった目を上げたウクライナは、呆然とした顔でこちらを見つめている部下三人の視線とかち合った。
「君たちが、僕のことを止めてくれて本当に良かっ───え?な、何?」
穴が開くほど見つめられ、戸惑った顔で部下三人の顔をかわるがわる見たウクライナは、困ったように首を傾けた。
「そんなに僕の話変だった?」
向かって右側に座っていた陸軍のゼムが口を開いた。
「いや、変、と言うわけでは無かったけれど───」
そう言うと、チラ、と同僚の顔を見たゼムは同じようにこちらを見ていたネボとモレと目が合った。
「ウクライナ」
固い声を上げたのは、末尾に座っていたモレの方だった。ウクライナが顔を上げ、モレを見た。
「?どうしたの?」
「すみません、一つ気になったことがあって」「……言ってみて」
モレは若干、ウクライナを睨むように、上目遣いに見た。彼が何か覚悟を決めた時の癖だ。
「ウクライナ、その人格……ロマンのことを知っているのは、ここにいる者以外に、誰がいますか?」
「え?」
ウクライナが不安げな顔をしてモレを見た。
「なんで……なんでそんなこと、聞くの?」
固い声のままモレが答えた。
「もしこのことを敵が知っていたとしたら、それを利用した攻撃をされる可能性があるからです。言いたくない人がいるなら言わなくて良い、と言いたいところだが……できれば包み隠さず伝えて頂きたい。どなたか、いらっしゃいますか」
ウクライナの肩がピク、と震えた。
「……いるよ」
「‼︎ 」
「僕の、この人格のことを知っているのは───」
部屋の空気がビリッと震えた。座った部下三人の間の空気が一気に張り詰める。緊張したその大気を震わせ、ウクライナが、小さな声で答えた。
「───僕の父さん……ソ連と、僕の兄弟───ベラルーシ、カザフスタン、エストニア、それから───兄、ロシア」
───数ヶ月後。
季節は完全に冬となった。
どこか遠い、ロシアの軍事基地にて。
軍服に身を包み、トレードマークのウシャンカを目深に被った男が一人、軍事基地の長い廊下を歩いていた。寒さのためか頭半分以上を覆うほど深くウシャンカを被っており、加えて左頬には痛々しくも大きな医療用ガーゼが貼り付けられているため、その整った顔はほとんど見えない。ただ、鋭い視線を周囲に向けながら、ブーツの音を静かに廊下に響かせて歩いている。
その時、長い廊下の少し先の方、壁の途中で九十度左に曲がる岐路のその角から、ひょこっと誰かが顔を出した。
「あっ」
小さなその人影は短く声を上げ、その角から走り出るなりこちらに向かって小走りに駆けてきた。
「ロシア様‼︎ 」
何を隠そう、歩いていたのはロシアだった。声をかけられたロシアは、足を止めて彼がこちらまで来るのを待った。ロシアと同じように軍服を着た彼は、ロシアと比べればまだ背も低く、少年兵と言っても通るような若さだった。おそらく、二十歳ほどだろう。彼はすぐにロシアの元に辿り着いた。
「ロシア様‼︎ 探しましたよ、どこに行ってたんですか?」
彼は忠犬の如く、大きな誠実そうな瞳で自分のことを見つめ上げてくる。ロシアは少しばかり詰まった。
「……どこって……自室に居たが?」
「では、これからどちらへ?」
「……少し、医務室の方に」
ロシアは静かな声で答えた。目の前の兵士はかすかに眉を顰めた。
「……もしかして、あのウクライナ兵の所ですか?」
「そうだ」
「……ロシア様、そんなの優しすぎますよ。いくらあなたが助けた兵士とは言え、敵兵ですよ?いつ寝首を掻かれるかも知れないのに……情けをかけすぎだと思います」
不満げに歪められた可愛らしい顔が、自分を見上げている。
ロシアは若干、困ったような視線をその兵士に向けた。言葉を変えれば冷ややかな視線とも取れるのだが、目の前のうら若い彼はそんなこと、露ほども気にしていないようだ(国であるロシア相手に、命知らずだとも言えるが)。
ロシアは軽くウシャンカを被り直すような仕草をすると、そのままその兵士の横を通り抜けようとした。すぐに、彼の明るい声が着いてきた。
「お供します!」
「……いや、大丈夫だって」
「そんなこと言わずに!」
まさに忠犬のようだ。彼が犬だったら、尻尾をぶんぶんと振っていただろう。ロシアは小さくため息をつくと、苦笑いを漏らした。
「……勝手にしろ……」
「ありがとうございます!」
ロシアはチラと隣を歩く兵士を見下ろした。それから、本当に静かな声で言った。
「………五日前、なんだ」
「へ?」
隣を行く兵士は、キョトンとした顔でロシアを見上げた。ロシアは言い直した。
「五日前、やっと、目を覚ましたばかりなんだ」
「そのウクライナ兵がですか?」
ロシアはコクンと頷いた。
「それは、やっと、という感じですね。だからかぁ。ロシア様があそこまで気にされていたのは」
「まぁそうだな」
ロシアは寂しげな笑いを漏らした。
───そのウクライナ兵が、弟にどこか似ているからだとは、どうしても、言えなかった。
それから、取り止めのない話をしながら医務室まで歩いて行った二人だったが、そこで待ち受けていたのは、思ってもいない現状だった。
「………は?」
最初に医務室に足を踏み入れたロシアは、素っ頓狂な声を上げて呆然と立ち尽くした。すぐに同行した兵士が「どうされました?」とロシアの背後から室内を覗き込んだが、ロシアと同じように、え、と声を漏らして固まってしまった。
医務室は、もぬけの殻だったのである。
負傷したウクライナ兵が寝ていたと思われるベッドはシーツやら掛け布団やらがぐちゃぐちゃの状態のまま放置されており、そのすぐ近くに白衣を着た軍医が倒れていた。ロシアは駆け寄った。
「おい!大丈夫か⁉︎ 目を開けろ、気をしっかりと持て‼︎ 」
軍医を抱え上げると、ロシアは彼の耳元で叫んだ。軍医はうめいたが、一向に目を開けようとしない。ふとみれば、乱雑なベッドの上、注射器がシーツに潜り込むように落ちていた。それをすぐに見つけたロシアは、あることに気づき、顔をサッと青くした。
(注射器………おそらく彼は脱出を図ったんだ……!注射器の中身はたぶん強力な睡眠薬か何かだ。医務室にいるのは軍医だけ、彼さえ動けなくして仕舞えば監視の眼がないのも同然、好きなように動ける……どこだ⁉︎ どこに行った……?)
「……ヴォロージャ」
「はい!何でs……って、えぇえええっ⁉︎⁉︎ 」
名を呼んだだけなのに自分の横で突然叫ばれ、ロシアは文字通り飛び上がりかけたが、それよりも驚いた顔をしてこちらを見上げているその兵士と目が合い、眉根をひそめた。
「……何だ?」
「えっ、いやっ、え、ろ、ロシア様が……っ」
彼は、酸欠の金魚の如く口をはくはくと動かした。
「ロシア様が…………っ、お、俺の名前、覚えてくださってたなんて………‼︎ 」
目に涙さえ溜めて歓喜している。
「……当たり前だろう、俺がお前たちの名前を覚えなくてどうする」
苦笑気味に言ったが、その声が彼に届いていたかどうか。悪いが、今は彼のその好意を利用させてもらうことにした。
「ヴォロージャ、悪いが軍医のことを看ていてくれ。俺はあの脱走兵のことを探してくる」
「あっ、それならば!」
ヴォロージャ、と呼ばれた兵士はハキハキと答えた。
「今日、中央会議室で会議する部隊があるって聞きました。そこに行けば人がいっぱいいると思うので、もしかしたらそのウクライナ兵のことを知っている人がいるかも知れないです!」
「…………」
……どこまでも忠実なやつだ。ここまでくるともはや珍しいかも知れない。
ロシアは目元を緩めた。
「ありがとう」
言ってすぐに身を翻したため、彼が敬礼していたのはロシアには見えなかった。
中央会議室に着いた時、一抹の違和感を覚えた。すぐにその違和感の正体に気づくことはできなかった。扉を前に立ち尽くす。しかし何も分からなかった。何か、どこかおかしいと、そう、感じただけで───
「……ロシア様?」
不意に声をかけられた。
ふと見ると、扉の横にわだかまった闇に溶け込むようにして一人、兵士が立っていた。鋭い視線を上げ、ロシアを見上げる。
「どうなさいました?」
デフォルトの声がそうなのだろうが、さすがのロシアでも少し緊張するほどの冷え切った低音だった。しかし今はそんなことに構っている暇はない。ロシアは負けず劣らずの威厳のこもった声でその一兵士に聞いた。
「この中で会議を行なっているのは?」
兵士は静かに、部隊の名前だけを答えた。
ロシアは眉を顰めた。
「………本当に会議だけを行なっているのか?」
「……と申しますと?」
「いや、…………」
少し詰まったロシアだったが、そこでやっと、感じた違和感の正体に気づいた。
賑やかすぎるのだ。
扉一枚隔てた向こう側は、とても会議のみを行なっているとは思えない賑やかさだった。時折、歓声やら大声やらが聞こえてくる。まるでパーティー開場、もしかしたらそれ以上の。
「……確か、会議の後に酒盛りでもするかっていう話でしたよ」
忍び寄る蛇のように静かに、門番のようなその兵士がそう言ったのは、その直後だった。ロシアは眉根をひそめたまま彼を見た。相変わらず、冷たい視線が射抜いてくる。
「……酒盛り?」
「そうです。なんでも、国境付近の一つの集落を落とせたとかなんとかで」
なんでもないことのように返事が返ってくる。
ロシアは努めて考えないようにし、意を決したように扉に手をかけた。
「あぁそうだ、言うの忘れてた」
隣で兵士が声を上げた。ロシアは彼を見た。彼が口を開く。
「なんかさっき、酔っ払った一人がちびっこいのを引き込んでましたよ」
「………は……⁉︎ 」
一瞬、頭が回らなかった。何を、言っているんだこの兵士は?ちびっこいの……まさか。
「おいそのチビってのは……」
「おや、お知り合いですか?」
その兵士は口許を歪めた。笑ったのだろう。闇に沈んだその顔に張り付いた笑みは、この上なく不気味だった。
「おそらくウクライナ兵ですよ。見ない顔でしたから。捕虜にされる予定の奴ですよ。ほら、治療室に一人ぶち込まれてたでしょう。おそらくアイツで───」
「そいつは今どうなってる⁉︎⁉︎ 」
ロシアは怒鳴った。焦りからか、声は不用意に大きく、心臓は早鐘を打ち出した。門番役の兵士は驚いたようだった。
「どうって───言わなくてもご存知でしょう。相当な量の酒が持ち込まれてましたからね……皆酔ってるはずです。見境なく振る舞う輩がもうほとんどのはずです。そうなったらもう、そのウクライナ兵がどうなってるかなんて、言わなくても分かるでしょう」
ゴクッと生唾を飲み込む音が響いた。ロシアは目が回るような感覚を覚えた。最後に発せられたその兵士の言葉は、まるで、ロシアの耳を切り裂いたかのようだった。
「おそらくすでにマワされてますよ」
酷い音を立てて扉が開かれた。勢いよく開かれたがため蝶番部分が軋み、ドア枠が歪む。元から頑丈に作られていなかったためか、細かい木片が飛び散った。
室内に飛び込む。酒の匂いを濃厚に包み込んだ熱気が頬に押し寄せる。目が回り、頭がクラクラとした。室内は暗かった。が、小さな蛍光灯一つの薄暗い室内は蜂の巣をついたかの如くうるさい。その淡い光のすぐ下、置かれた机の周りに、酒を片手に持った男たちが何人も群がっていた。
入り口からはよく見えなかったが、我先に見物しようと蠢く兵士らの隙間から、机の上に乗ったものを垣間見ることができた。
「…………………、………………っ‼︎ 」
思わず絶句した。
薄暗い光に照らされた机の上。
何か、もがいている。
血色の悪い白い肌の、ソレは───
「…………‼︎‼︎‼︎ 」
裸に剥かれた、あの、ウクライナ兵だった。
おそらく本日、連投します。できたら昼か、夜頃ですね。できなかったらごめんなさい
あと多分なんですけど次回🔞シーン入ります。苦手な方はブラウザバックお願いします
コメント
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この作品を読んでロシアに恋をしてしまった (訳 ロシアが推しになった) 連投ですと?!嬉しい限り