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一. プロローグ “ハル”
また、夢を見た
ゆらゆらとぬるい風が吹くのと同時に彼女は現れる。いや彼なのだろうか。
「*あは**また来たね、今日もつまんなかった?*」
「うん」
最初に出会った時に、何て呼べばいいかと聞いたら好きに呼べと言われたので、春に出会ったからという安直な理由でハルと呼ぶことにした。ハルはつかみどころがなく、どこから来たのかも、何歳なのかも、何一つとしてわからない。僕が質問をしても曖昧な会話で終わってしまう。ハルから何かを聞かれることは多いが僕自身のプライベートに関わることはあまり聞いてこない。むしろ聞く必要がないかのように振る舞ってくる。
僕がハルと初めて出会ったのはこの公園で、僕が下校ルートをたまたま外れたから見つけた。すごく小さく、地図にも載ってないところだ。夕日が落ち緋色から紅色に差し掛かるような空をしている時間に出会った。ハルはここにしかいないし、この時間にしか現れない。どう頑張っても粘っても日が落ちる頃には必ず消えるようにどこかに行ってしまう。
「*ねぇ、今日の空も綺麗でしょ*」
「そうだね。ハルには似合わない」
「*えぇ~一番似合ってるでしょー*」
少し怒りながら笑う。僕らの会話はいつもこんな感じだ。
”キーンコーンカーンコーン”
あ、
「*またね*」
「ちょっ今日こそ、、、」
また帰ってしまった。
「ほんとにいつも早いなぁ、」
いつもこれだけ短い時間なのに、何よりも記憶に残ってしまう。
はぁ、僕も家に帰らないと