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こんにちは♪最終話です!!ラッキーセブンで終われるように頑張ったかいがありました
葛葉と叶は無事にもう一度結ばれるのでしょうか。長めだけど…良ければ見てって下さい。
叶『』葛葉【】
退院の日。
病院の玄関はやけに広くて、外の光は眩しすぎた。
今までこの白い世界の中で完結していた俺の時間が、無理やり外に引きずり出されるみたいで、足が少しだけ震える。
【……ほんとに、出るんだな。】
手続きは全部終わっていて、手元にあるのは最低限の荷物と、スマホだけ。
叶からは朝に一度だけ、「迎えに行くから待ってて」って短いLINEが来ていた。
来ないでって言ったのに。
それでも来るんだろうなって、どこかで分かってた。
【(会わせる顔、あるかな……)】
記憶が戻らないって、昨日医者に言われた。
その事実は一晩経っても薄れることはなく、胸の奥に重たい石みたいに居座っている。
前の俺を知っている叶。
前の俺を好きだった叶。
今の俺は、ただの“空っぽの葛葉”なんじゃないかって、どうしても思ってしまう。
「――葛葉」
名前を呼ばれて顔を上げると、そこに居た。
少し息を切らした叶が、病院の入口に立っていた。
いつもと同じ服、同じ声、同じ顔なのに……それだけで胸がぎゅっと掴まれる。
『退院、おめでと』
【……ありがとう】
それだけ言うのが精一杯だった。
目を合わせるのが怖くて、視線を落とす。
沈黙。
気まずさが空気を支配して、俺は早くこの場を離れたくなった。
【なぁ……叶。】
『ん?』
【昨日は、ごめん。来なくていいとか……】
『あー、あれね』
叶は少し困ったように笑ってから、俺の前に一歩近づく。
『正直、ショックだったよ』
胸が、ずきっと痛む。
【……やっぱり】
『でもさ』
叶は俺の顔を覗き込むみたいに、少し屈んで続けた。
『逃げられる方が、もっと嫌だった』
その言葉に、心臓が跳ねる。
【……逃げてない、つもりだった】
『うん。でも葛葉、全部一人で抱え込もうとしてたでしょ。』
『昔から変わってないよ。』
何も言い返せなかった。
図星だったから。
叶は深く息を吸って、ゆっくり吐く。
何かを決意したみたいな顔だった。
『ね、葛葉』
【……なに】
『昨日さ、医者から話聞いた』
一瞬、世界が止まった気がした。
【……】
『記憶、戻らないかもしれないって』
喉がひくっと鳴る。
【……うん】
『それで葛葉が、僕に会うの嫌になったんだって、すぐ分かった』
【……】
叶は、笑った。
泣きそうなのに、無理やりじゃない、優しい笑顔で。
『僕、葛葉に言わないといけないことがあるんだ。』
避けられるだろうか。
叶を遠ざけた俺は、もう自分の気持ちには気づいていた。
『僕ね、葛葉の事好きなんだ。』
【へ…?】
なんで…。そんな事は言えなかった。俺も叶が好きだったから。
知らず知らずのうちに芽生えていた。最近になって気づいた…俺は何があっても見捨ててくれない叶に心惹かれて居たのだ。
『僕と葛葉は付き合ってたんだよ。事故に合う前は、ずっと一緒に帰って、沢山喋って…』
『この時の記憶が無い今の葛葉にこんな事言ったら、避けられちゃうかなって。考えたりもしたよ…したけど。やっぱり好きなんだ、葛葉の事。』
言葉が出ない。でも、記憶が無くなる前から、ずっと俺の気持ちも変わって居なかったんだ。
いつの間にか芽生えたものじゃ無かった…知らず知らずの内じゃ無かった。
俺はずっと、
【俺も…俺も叶の事好きだ。多分記憶がなくなってからも、ずっと。ずっと好きだった。】
叶はふっと顔を緩ませる。
『な〜んだ、僕の作戦は成功してたんだ。』
【作戦?】
『記憶が無い葛葉も、絶対に惚れさせて見せるって言う作戦。』
馬鹿馬鹿しい作戦。なんて思っても、まんまとそんな罠にハマってしまった。
【ふはっ!何だよその作戦、】
笑い声もこの部屋では1つだけ…また静かになった空間で、叶は俺の目を見てもう一度。
心の中ではまだ不安だった…作戦なんて言って、誤魔化してるんじゃないかって。
『僕、葛葉の記憶を好きになったんじゃないよ』
顔を上げる。
『今ここに居る葛葉が、好きなんだ』
【……え】
『シャイで、すぐ不安になって、全部自分のせいにしてやっぱ葛葉は全然変わってないよ。記憶が無くなっても…』
一歩、また近づく。
『それでも必死で生きようとしてる葛葉が、好き』
視界が滲む。
『前の葛葉も、今の葛葉も、同じ葛葉。どの葛葉も僕が好きになった葛葉だよ。』
叶は俺の手を、そっと握った。
温かくて、確かで、逃げ場のない手。
『葛葉は葛葉じゃん!僕は気にしないって』
その言葉が、胸の奥に溜まっていた黒い霧を、少しずつ溶かしていく。
【……叶】
『僕さ』
叶は一瞬だけ目を伏せて、それからまっすぐ俺を見る。
『もう一回言うね』
『好きだよ、葛葉』
【……】
『記憶が無くてもいい。思い出せなくてもいい』
『それでも、僕は傍に居たい』
限界だった。
【……ずるい】
『え?』
【そんな事言われたら……】
声が震えて、涙が落ちる。
【嫌だなんて、言えないだろ……】
叶は驚いた顔をして、それからふっと微笑んだ。
叶は俺に近づいて…
叶の腕が、迷いなく俺を包む。
胸に顔を埋めると、心臓の音が聞こえた。
速くて、必死で、俺の為に鳴っている音。
【……俺、何も思い出せないかもしれない】
『うん』
【……それでも?】
良いのか、は言葉には出せなかった。
もう不安は無い。でも、
『それでも』
叶は、強く俺を抱きしめた。
『これから作ればいい。沢山ゲームして、甘いもの食べて。勉強も頑張らないと。』
胸の奥で、何かが静かにほどけていく。
【……叶】
『なに?』
【……ありがとう】
『どういたしまして』
叶の表情は分からなかったけど、声色も、暖かさも…全部が優しい。
空は晴れていて、未来はまだ怖いけど。
それでも。
『君は僕の恋人何だから!』
【嗚呼…分かってる。】
この腕の中なら、2人で歩いていける気がした。
コメント
3件
最高すぎてシヌゥ!!ww
まじ感動したんだけど…! あーちゃま天才じゃん! 本当に最高!