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「 まーろ! 」
今日も無視される呼びかけ
無視されるってわかってるのに声をかけ続けるなんて、なんて健気なんだろうと自分で思う
「 あ、 出張? 頑張ってね ! 」
荷物をまとめる 姿を発見し
出張へ行くのだと予測し声をかける
が、 またまた無視をされてしまう
まろが 俺を無視し始めて何ヶ月すぎたのだろう
始めは凹んでたのも数ヶ月も経つと 慣れてしまう
出勤時間が迫ってるのか急ぎ足で玄関に向かう
まろ、
「 行ってらっしゃい! 気をつけて ! 」
返事なんかなくてもいい。
俺の自己満だ
「 記念日には帰ってくるな 、 行ってきます 」
「 え … 。まろ…、 」
ガタンと重めの音を立てた扉。
初めて呼び掛けに答えてくれた返事
色々重なり涙が出てくる 。
「 まろぉ” …っ 」
ボロボロとこぼれてくる涙
床に落ちても何も残らないことを
皮切りに沢山の現実を実感する
俺が死んでから 、 毎日、毎日毎日
まろに呼び掛けを続けた
この現実を認めたくなくて、ずっと
この人のそばに居たくて
忘れて欲しくなくて
けれどもこの人は俺が思ってる何倍も
俺の事を想っててくれてた
そんな事を知り申し訳なさが込み上げてくる
俺の事を一刻も早く忘れて幸せになってほしい
誰よりもまろを愛してくれる人と
一緒になって欲しい
矛盾した考えが産んだ結果なのか
彼はずっと俺だけを見てた
生きてるうちも死んでからも
震える手でペンを持ち
メモ用紙にありがとうの5文字だけを書く
最後まで愛してるだなんて言えなかった
自分に嫌気が差す
けれども今はこれでいいのだ
まろが年老いて、こっちに来てから
ありがとうの代わりになる5文字を彼に伝える
『 ありがとう 』
下手っぴな字で書かれたメモ用紙を見つける
数ヶ月経っても鮮明に思い出す
可愛くて優しくてかっこよくて仲間でもあった
恋人の字
きっと彼のことだ
愛してるなんて照れくさくてありがとうだなんて
書いたんだろう
「 ほんま …ばかたれ “ … 」
今も昔もずっと愛してる
あのピンク髪が特徴的な恋人
今、彼の元へ行っても怒られるだろう
記念日を迎える度にその思いは強く
前を向こうと思える
それもこれも彼のおかげなのか
とにかく誠意一杯の5文字を彼に伝える
「 ないこ 、 ありがとう 。 」