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なんだ?気まずいぞ。すごーく気まずい。移動時間がとても長く感じる。長らく人と話していなかったせいかどういう話題をふればいいのかもわからない。
「 あ、あ…。 」
喋りかけようとしても全然声にならない。声を出そうとするたび喉がキュッてなる。どうしてだ、私はやっぱりこれからも友達ができないのだろうか、それとも人と話すことすらできないのだろうか。どうしよう、私は…。私は、
「 なぁ、なんでお前あんなに背中に幽霊が憑いてたんだ? 」
な、なんで…?それは霊に好かれやすい体だからとしか言えない。でもなんと説明すればいいんだ。
「 そういう体質なんだ。霊に好かれやすい…な。 」
「 なんだそれ、可哀想だな 」
そんな、他人事みたいに。私は本当に悩んでいるんだが、そう考えたら幽霊を祓える力を持っているこいつが羨ましくなった。八つ当たりだとわかっていても、私は本気でこの体質が嫌だからな。
「 ん、ここだよ。 」
そうか、忘れていたが私は今こいつの家へ向かっている途中だったな。異性の家へお邪魔するのなんて初めてだ。あ、菓子折りとか持ってきた方が良かったか?途中でどっかお店でも寄ってくればよかったな。礼儀がないって嫌われるかもしれないぞ…、
まぁ、いい。今更誰に嫌われようが構わない。そう思っているはずなのに、胸の奥の方がキュッとなった気がした。…なんだ今の感情は。
「 お邪魔します。 」
今考えれば、私名前も知らない奴の家にお邪魔してることになるんだよな。それって、めっちゃ失礼なのでは、?友達といえるのだろうか。よし、私の今日の目標はこいつの名前を聞くということに決定した!
「 ここが俺の部屋。 」
思ったより綺麗だな、なんていうんだろうか。このシンプルさが逆にいい雰囲気を出しているというか、なんというか。それにしても、ここに入った途端肩が軽くなった気がするな。安心でもしたのだろうか。
とりあえず、作戦通りにまずは名前を聞こう。どういうふうに聞けば自然に聞けるだろうか、ああ、もうこんなこと考えている時間が勿体無い!ここはどストレートに、!
「 お前、名前はなんというんだ!! 」
言ったぞ、言ってしまったぞ…!どんな反応をしている?なぜだ、なぜかぽかんとしているな。やっぱり何か変なことを言ってしまったのだろうか?ああ、やってしまった…。
「 俺の名前知らなかったのか?俺は最上薫 ( さいじょうかおる )。呼び方は、なんでもいい。好きにしてくれ。 」
ぽかんとしてたのは私がこいつの名前を知らなかったことに驚いていたからか。それにしても薫…、どこかで聞いたことがあるような名前だな、まぁ少なくとも喋ったことがあるわけではなさそうだし、私がただ忘れている最低野郎だと思われることはないな!
「 あ、そう言えば。私は七瀬美琴 ( ななせみこと )だ!名乗るのが遅れて申し訳なかった。 」
相手に聞いたくせに私が答えてないのは良くなかったな。とりあえずこれで目標達成だろう。ただ一つ問題を発見してしまった。これ以上目標を決めていなかったからか何を話せばいいのか全くわからん。そもそも私たち今日知り合ったんだよな?それなのに急に家にお邪魔させてくれて、こいつ結構いい奴なのでは?
「 なぁ、お前さ。幽霊がみえないのか? 」
沈黙に耐えられなくなったのか、薫が私に話題をふってきた。でもよりによって幽霊の話か、まぁ沈黙から抜け出せるならそっちの方が嬉しいか。
「 そうだ、みえないのに好かれるんだ 」
ああ…、我ながらとっても可哀想。なぜこうも私の体質について気になるんだこやつは!!私的には”幽霊に好かれる”という事実を抹消したいぐらいだが?
「 それなら俺がお前に憑いてる幽霊全部祓ってやるよ。 」
今なんと言った?この男、私に憑いてる幽霊全部払うと言ったか?本当にこいつに任せたら祓ってもらえるのか?だったら私の答えは一つに決まってるだろう、
「 いいのか!?是非お願いしたい! 」
「 わかった、わかったから近い!離れろ 」
なんなんだ、こいつは。今のどこにこんな真っ赤に頬を染める要素があったんだ?こいつの感情がわからない。会ったばかりだからということもあるのだろうが、何を考えているのか、どういうところが恥ずかしいのか。全てが分かりにくい。
でも私には時間があるんだ、これから知っていけばいいだろう!今日は泊めてくれるらしいからお言葉に甘えて泊めてもらうことにする。この時間でもっとたくさんこいつのことが知れたらいいな。
第二話 『 本当の君 』