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こ ぁ 🍍
その夏は、やけに音が少なかった。
セミの声はしているはずなのに、遠くで鳴っているみたいで、世界全体に薄いガラスがかぶせられているようだった。
中学二年の 美咲(みさき) は、昼間からカーテンを閉めた自分の部屋で、天井を見つめていた。
学校はもう夏休みに入っていたけれど、心はまったく休まっていなかった。
クラスの中で、美咲は「いないみたいな人」だった。
話しかけられない。
でも完全に無視されるわけでもない。
笑い声の中に、自分の名前だけが入っていない。
一番つらいのは、誰も何もしていないように見えることだった。
「気にしすぎだよ」
「考えすぎじゃない?」
そう言われるたびに、美咲は自分の感覚が壊れている気がして、ますます黙り込むようになった。
だから夏休みは、少しだけ救いだった。
少なくとも、教室という場所に行かなくていい。