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それからは、ひっきりなしに木箱に入ったギフトが届きました。大小さまざまな木箱が女神の部屋に転送されてきます。中に何が入っているか分からないという部分もまた楽しみを加速させました。

「やった、お酒!」

「すごい、え、何の肉!?」

「こっちはチーズ!でも、この前のとは違うわ!」

「うわ、なにこの豪華な木箱。中身は…ナイフ…?こわ…」

「わ、お魚!でも待って、どうやって食べるの、これ」

「服ー!え、かわいい!すごーい!」

「これは…魔石?うーん、魔石かぁ…」

次々に送られてくる木箱に一喜一憂する時間はとても楽しいものでした。世界に住む者たちの笑顔を見ながら、彼らと同じものを口にするのは女神にとっても幸せな時間でした。唯一の困りごとは木箱の処理に困るくらいのことでした。彼女は整理が苦手なうえ、贈り物はどんなものでも捨てられない性格でした。それはもちろん木箱も然りであり、部屋には木箱が溢れました。


しかし、そんな幸せも長くは続きませんでした。女神が捧げ物を開けたときのリアクション、その一喜一憂は、そのまま種族の力の差となっていきました。女神を喜ばせた者がより富み、そうでないものは貧する。その積み重ねは遠からず争いを招きました。より良い捧げ物をするために他種族を襲う。襲う者も襲われる者も、口々に女神の名を叫びます。

「この国に生まれて良かった」

「もっと強い力をお与えください」

「僕はこの種族であることを誇りに思います」

「なぜ私たちは愛してくださらないのですか」

「下賤な者は滅ぶべきなのです」

「食べ物が足りない、子どもが死んでしまう」


神器を通じてたくさんの祈りの声が届きます。次々と流れる感謝と怨嗟。部屋に渦巻く通知の鈴の音と民の声。こんなはずじゃなかった。どこで間違えたんだろうか。女神は頭を抱え震えました。彼女には特定の種族に肩入れした覚えが無いのです。みんな等しく幸せであれと思うことはあっても、争え奪えと思ったことは一度もありませんでした。捧げ物も極端になっていきました。黄金や宝石、豪華な食べ物が届く一方で、わずかばかりのパンや空っぽの木箱が届きます。もう限界でした。女神レオノラは神器をミュート設定にして、遠くへ放り投げてしまいました。もう見たくもありません。しばらくしたら、元のような世界に戻ってくれる。戻って欲しい。そう祈るようにして、足を抱えて座り込んでしまいました。


部屋が静かになりました。


今日も捧げ物が届きます。

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