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連載お疲れ様でした✨どのお話も一個一個詳しくてとても面白かったですそしてまたいつか会えたらいいですね!本当に連載お疲れ様でした(*^^*)
連載お疲れ様です! これだけの深い内容をとっても 分かりやすく書いたり 一個一個のお話が良い所区切られてこっちもわくわくしてました!
最高!
fjsw side
皮のソファのひんやりとした感触を感じた。
少し離れた位置から小さな機械を通して流れる元貴の歌声が聞こえる。
重たい瞼を開けてみたが照明が眩しく、すぐに目を瞑って薄い意識の中考えた。
─ 僕、何してたんだっけ…
凄い体調が悪い中レコーディングしてて、それで、えーっと…
─ あ、僕気絶したんだ。
ってことはめちゃくちゃ時間すぎてない?!
焦ってソファに両手をついて上半身を起こした。
まだ頭も瞼も重いが音のなる方をゆっくりと見上げる。
パソコンから流れる元貴の歌を確認する数名。
その中には元貴も若井も居た。
元貴の歌レコが終わって今は最終確認中なのだろう。ってことはめちゃくちゃキーボードは飛ばされてる。計画が狂っただろうに、申し訳ない。
がっくしと肩を落とし、重い視線を枕に戻す。
─ あ、これ、元貴の上着だ…
自分が枕にしていたのは元貴の上着を丸められたものだった。なんで?クッションはちゃんとソファの端にあるのに。
ふと自分に掛けられていたものを見た。
─ え、これ若井の上着じゃん…
枕に続いて自分に布団替わりに掛けられていたのは若井の上着だった。毛布だってスタジオには常備されている。
疑問に思いながらも、好きな匂いと2人のものという暖かさで少し幸せを感じる僕が居た。
なんてことを思ってるうちに2人が僕に気づいたらしい。
omr「あら、眠れる姫が起きた」
wki「お〜、プリンセス起床」
2人が近くに寄ってくる足音を聞きながら、
「、すいませんでした…。」
と謝る。
若井が僕の下半身にかかってる上着をどかし、元貴が僕を肩を支えるようにしてソファに座らせた。そしてすぐに若井が僕の膝に上着をかけなおす。
まだ身体はだるく、ソファに深く座って俯いた。
元貴が僕の前でしゃがみ、力があまり入らない僕の手を取って脈を測る。その後首に指を置いて測った。
omr「ちょっとは安定してきたけど、血圧はほぼ下がったままだね。血糖値も低いっぽい。」
wki「涼ちゃんなにか食べれそうなものある?血糖値上げたいから、なんでもいいよ」
若井が覗き込むようにして僕の顔を見た。
少し考え、今食べたいものを思い描いた。
「、たまご…、どうふ、、」
wki「卵豆腐ね、了解。」
その後、ふわふわとした意識の中で元貴と若井とスタッフさんの進んでいく会話を聞いた。その会話に僕は1ミリも挟まれていないが、話の内容は全て僕のことだった。
内容的には、これからスタッフさんの運転する車で元貴と若井同乗の元、僕を家に送る。
僕を少しでも早く家で寝かせたいので、さっき言った卵豆腐や薬系などを買うスタッフさんは別行動で買い出しが終わり次第僕の家に届けに来る。
という内容だった。
流石に止めた。レコでも迷惑かけまくったのにそんなこと出来ない。そんなのただのパシリだ。申し訳ないとかそんなレベルの話じゃない。
僕はタクシー使って1人で帰るし、買い出しも途中で自分でできるからそんな事しなくていい。はっきりそう伝えた。すると元貴が
omr「はい、お黙りお黙り。涼ちゃんはされるがままでいいの、」
と立ち上がろうとする僕をまたソファに沈ませた。
若井も笑って頭を振り、「元貴の言う通り」という顔で僕を見た。
「でも、」とも言おうとは思ったが、多分元貴達的にはバンドメンバーが道端でぶっ倒れる方が問題なんだろう。
そう考えたら反論などできるはずもなく、黙って動く元貴達を見ることしか出来なかった。
omr「よし、涼ちゃん立てる?」
元貴が僕に声をかけたのは数分後のことだった。元貴も若井も荷物をまとめ、帰りの準備を終わらしたようだ。
元貴は自分の荷物の他に僕の荷物も持っていた。目が覚めた時よりも身体の感覚が戻ってきていたので、「荷物まとめてくれてありがと〜、」と彼の持つ僕の荷物に手を伸ばしたが、元貴は僕の荷物を即座にすっと後ろに引いて「あ”ぁん??」という顔で僕にメンチを切った。
若井は元貴の横でケラケラ笑ってる。
元貴はこうなるとほんとに頑固なんだよなぁと僕は諦めて足に力を入れ、立ち上がった。
身体はまだふらつく。
若井が少し考えたような素振りを見せたあと、元貴に「ちょっと、」と言って自分の荷物を持たせ、すぐに僕を姫抱きした。
「わっ、」
凄。
誤差ではあるけど自分より身長が高い相手をこんな安定して抱き上げられるものなんだ。
─ まあ確かに…若井は鍛えてるけど、僕は一生痩せ型だしな…。
なんか悔しくなって軽く若井に頭突きした。
若井は「いでっ、」と情けない声を上げ、少し下で「いいなぁ〜」と口をとんがらせる元貴が居た。
「元貴も抱っこしてもらう?」
と聞くと、元貴は一瞬で顔を顰めて「え”、絶対嫌だ。」と即答した。
─ あれ?若井に抱っこして貰いたかったんじゃないのかな…??
疑問を表情に浮かべていると、元貴が僕の手を持って「俺が涼ちゃんのこと抱っこしたいの」と拗ねたような、照れたように言った。
元貴の思ってた以上の子供っぽい表情に「なにそれ」と軽く笑うと、2人は少し驚いた表情をしたあと、顔を見合せて安心したように微笑んだ。
そこからはあまり記憶が無いので、多分また寝てしまったのだろう。
いつのまにか車は家の前についていた。
「ちょ、え、待って…」
流石に姫抱きでマンションの廊下を歩くのは恥ずかしい。一般の方々に見られるのはちょっと話が違う…
ご近所さんに目撃されるのを想像しただけで自分の頬が熱を持つのを感じた。
「ごめん、ちょっと、流石にお姫様抱っこでの移動は恥ずかしいかも…///」
と伝えると、先に車を出て荷物を持って僕を抱く気満々の2人はニヤッと笑って「可愛い」としか言わなかった。
顔を両手で覆い、車の奥の方へずりずりと逃げる僕を普通に捕まえて抱き上げる若井と、大した量では無いが3人分の荷物を持ってくれる元貴。
運転してくれたスタッフさんにいつも通り3人でお礼して、スタッフさんも「お大事にね」と優しく笑って車で走り去った。
この時に少し違和感を覚えたが、その時には何が違和感なのか見つからなかった。
そのまま若井と元貴は慣れたようにマンションのオートロックを通り、エスカレーターで上階へと上がって僕の部屋の扉を開けた。
何回も来ているし、合鍵も渡していたのでそこに疑問は無かったが、そのまま「お邪魔しまーす」と言って普通に部屋に入っていったのが謎だった。
─ 僕的には部屋に送って行って貰うことだけで十分だったんだけど…
若井が僕を降ろしてから
「送ってもらったし、2人も疲れてるだろうからもう大丈夫だよ、?」
と言うと、
omr「涼ちゃんは俺たちに帰って欲しいって言うんだ…っ」
元貴が両手で顔を覆ってその場で俯いた。
「だー!違う違う違う。ごめんねぇ…」
僕が慌てて元貴を抱きしめに行くと、元貴は顔を伏せたまま強く僕を抱き返した後、顔を上げてずる賢くにへっと笑った。
─ やられた…
僕は元貴のこの手にいつも引っかかる。
それも10年間ずっと!
引っかかり続ける僕も僕だけど、分かっててやり続ける元貴も元貴だ。
キッチンで水をコップに注ぐ若井をチラ見すると、親指を立ててニコッと笑った。
その瞬間に僕は気づいた。
─ うわっ、そうゆうことか…スタッフさんがそのまま元貴と若井置いて帰ったのって元からこの2人帰る気無かったんだ…
あの時からもう手遅れってことだった。
wki「ほらもう意地悪しないの」
若井がそう言って僕をソファに促す。
僕が促されるままソファに座り、元貴が僕の前で床に座って僕の両手を握って僕の目を見た。
若井は僕の横に座って僕を見た。
─ あ、これお説教だぁ…
と僕は察した。
omr「涼ちゃん、少しばかりお説教です。」
「はい…」
─ ほら
wki「ふはっw、涼ちゃん察してるw」
omr「慣れてるじゃんもう、w」
「えへへ、」
omr「…いい?涼ちゃん。今回は低血糖からの目眩頭痛吐き気だったから、まだどうにかなったけど、もし病気だったりしたらほんとにやばかったんだよ。もちろん低血糖も身体に必要な栄養がない状態で低血圧にもなってたしやばかったけど…」
「うん、」
omr「迷惑かけたことを謝れって言ってるわけでも、怒ってる訳でもない。ただ、俺らは涼ちゃんが調子悪いの我慢して溜め込んで苦しんじゃうのを見たくないの。」
─ それじゃあ…
「…ごめん、」
omr「って言うと涼ちゃんはもっとバレないように頑張って隠さなきゃって考えたでしょ?馬鹿。」
「うっ…」
全てお見通しのようだった。
omr「俺らは涼ちゃんが苦しいっていう状況が嫌なの。それに相談してくれないのも、頼ってくれないのも嫌。正直恥ずかしいけど俺ら涼ちゃんに構うの大好きだから、言ってくれるだけ嬉しいの!」
少し照れを振り切るようにして言い放つ元貴。
横で笑う若井。
怒られてる中でも自分の弟2人は可愛いなと思うあほな僕が居た。
omr「だから、ちゃんと言って。迷惑になるとかそうゆう話じゃない。俺らのわがままとしてでもいいから言って。」
元貴の真剣な目に僕は頷いた。
wki「涼ちゃんは俺らのこと沢山知ってるけど、俺らは涼ちゃんのことあんまり知らないの。だからもうちょっと涼ちゃんのこと教えて?」
omr「なんなら全部見せて」
2人の言葉に僕がははっと笑うと、2人は「なんだよー!」 と照れたように僕に抱きつきに来た。
僕が笑いながら抱きつきに来た2人を抱き返して
「なんか告白みたいw」
と言うと僕の体に顔を埋める2人が同時にビクッと肩を震わせた。
─ ん?
元貴と若井がなにかをボソッと同時に呟いて、顔を上げ2人で少し睨み合った後、僕の方を向いて2人が何かを言おうと息を大きく吸った。
(ピンポーン)
その瞬間、インターホンが鳴った。
買い出しに行ってくれていたスタッフさんが下に着いたのだろう。
ぽかんとしながら僕にしがみついたままの2人を丁寧に剥がして立ち上がり、インターホンに向かって感謝を伝え、こちら側からオートロックを外した。
ふと2人を見ると、魂が抜けたように空気を重くしてソファに溶けていた。
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\最終話後記╱
いやー最終話長い…スクロールありがとうございました。
”泡沫の体温に触れる”を最後まで読んでくださり本当にありがとうございます🙌🏻💗
めちゃくちゃナチュラルに名前変更しました。
皆様の沢山のハートやコメント、本当に嬉しく励みになりました…まじで皆大好きです🫶🏻
最後にこの小説の感想を書いて行ってくださると嬉しいです!良かったらお願いします🙈
それではまたどこかで…
”泡沫の体温に触れる”のご愛読、ありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。