音楽と共に駅に着く。改札を通り、ホームで電車を待つ。
もしかしたら匠からLIMEが来ているかもしれない。そう思い
少しドキドキする心臓を落ち着かせようと軽く深呼吸をして、スマホのホームボタンを押す。
匠関連の通知はなく、妃馬さんからの通知があった。不思議と妃馬さんからの通知に心臓が落ち着く。
「今回の冒険は収穫なしでしたね。次回の冒険に期待しましょう!」
「冒険ね」
可愛い言い回しについ口角が上がる。返信を打ち込む。
「ですね。ちゃんとセーブしなきゃw」
送信ボタンをタップする。スマホをポケットにしまい、電車を待つ。
電車が夏前の少し暖かい風を引き連れてホームへ入ってくる。
乗客が降りてくるのを待ち、乗り込む。すぐに最寄り駅に着き、降りる。
いつもの帰り道を歩き、家が見えてくる。玄関の扉を開き、中に入る。
「おかえりー。待ってたよー」
夜ご飯の香りと共に母の声が音楽の奥に聞こえる。
「んー。ただいまー」
そう言いながら靴を脱ぎ、洗面所へ向かう。手洗いうがいを済ませて
いつもなら2階へ上がり、自分の部屋で部屋着に着替えてからリビングへ行くのだが
「待ってたよー」という母の言葉があったため、今のままの格好でリビングへ入った。
「着替えなくていいの?」
「うん。このままでいいわ」
食器棚から自分のグラスを取り、母と言葉を交わす。冷蔵庫を開き、四ツ葉サイダーを注ぐ。
ダイニングテーブルの自分の席のイスに座る。
「じゃ、いただきまーす」
「「「いただきまーす」」」
父に習って3人で「いただきます」を言って、夜ご飯を食べ始める。
「ご馳走様でした」
各自で「ご馳走様」を言い、食器の片付けを手伝う。
お風呂作りをお風呂に任せて、食器を洗う水の音、食器が重なる音を聞きながらリビングでテレビを見る。
21時前。匠からLIMEが来ているかと思い、スマホを取り出し、ホームボタンを押す。
匠からの通知はなく、妃馬さんと鹿島からの通知があった。
「セーブwたしかに大事ですね!」
つい口元が緩みそうになるが家族の前なので唇を噛み耐える。
「匠ちゃんからLIME来た?」
どうやら鹿島も匠のことを気にしていたらしい。まずは妃馬さんの通知をタップし、返信をする。
「今日の旅で経験値とか積みましたからねw」
トーク一覧に戻り、上から2番目の鹿島とのトーク画面に入る。
「いや、来てない。てかニャンスタ見なかったん?」
送信ボタンをタップする。トーク一覧に戻り
電源を切って、ポケットにしまう。AIのような女性の声がお風呂のほうから聞こえる。
各々のタイミングでお風呂に入り、各々のタイミングで部屋に戻った。
部屋の電気をつけ、扉を閉める。テレビつけ、ベッドに座る。
ベッドの上で胡座をかき、スマホを出し、ホームボタンを押す。
妃馬さんと鹿島、そしてお待ちかね、匠からのLIMEの通知があった。
「経験値!たしかに!フクロウのスマホケースは珍しいって経験値積みましたねw」
「そうなんですよ。珍しいんですよ」
思わず、そう呟く。
「あぁ音成さんのね。見た見た。スカイタワー行ってたね。あれさお泊まり会に話した計画のやつだよね?」
いよいよ匠のメッセージを読む。
「デート完遂」
思った文章じゃなかった。まずは妃馬さんの通知をタップし、返信を打ち込む。
「そうそうwふつーのアイテムショップでは売ってない珍しいアイテムなんですよw」
なぜゲームっぽくしたのか自分でもわからず、笑いながら送信ボタンをタップする。
トーク一覧に戻り、今度は鹿島に返信する。
「うん。たぶんそうだよな」
送信ボタンをタップする。トーク一覧に戻り、今度は匠とのトーク画面に入り、返信を打ち込む。
「お疲れ様?でいいの?」
送信ボタンをタップする。トーク一覧に戻り
スマホの電源を切り枕の右横に置き、寝転がりながら何気なくテレビを見ていた。
番組がコマーシャルに入り、枕の右側に置いたスマホを手に取り、ホームボタンを押す。
鹿島からの通知が目に入る。
「てことはよ。そーゆーことよね?」
「待って。デート終わったらしい」
「そーゆーことなんじゃね?」
そう呟きながら、鹿島の通知をタップし、鹿島へ返信する。
「たぶんね」
「らしいね」
送信ボタンをタップし、トーク一覧へ戻る。何気なく妃馬さんの名前を見る。
妃馬さんの名前の下に自分送った文章が出ている。
電源を切り、画面が暗くなった瞬間、画面が光った。妃馬さんからの通知が来たのかと思った。
鹿島と匠と僕、3人のグループLIMEでの無料通話がかかってきた画面だった。
通話するほうのボタンをタップし、スピーカーボタンもタップし、枕の右側に置く。
「おいおい〜」
鹿島のいつもの挨拶。
「おいおい〜」
僕も返す。
「匠ちゃんは?匠ちゃんは?」
「おらんね」
「おい!主役!はよ!」
その後鹿島となんでもない話をして10分ほど過ぎたが、匠の声は入ってこなかった。
「寝てんじゃね?」
「あの匠ちゃんが?」
「あの匠ちゃんが」
「そんなことある?」
「今日くらいはあり得るんちゃう?」
「あぁ〜なるほどね。それ言われたら、たしかにだな」
「ま、ワンチャンお風呂入ってるかもだから、もう少しして参加してこなかったら明日だな」
「マジかー。まあ、しゃーないか」
「疲れるんじゃない?デートだし」
「何時から行ったんかなー」
「スカイタワーでしょ?割と早くから行ったんじゃない?」
「てことは早起き?」
「あの匠が?」
「そりゃ寝るわな」
「鹿島もたまに早起きしたら、早く寝るだろ」
「そりゃそうだな」
その後鹿島とパス4(パスタイム スポット 4の略称)でトップ オブ レジェンズのカジュアルを回していたが
結局グループ通話に匠が入ってくることはなかった。
「明日楽しみだなぁ〜」
「今日な」
「あ、今日か」
「大学は?来る?」
「今日何限だっけ?」
「鹿島は大概オレと同じだから明日は1、2、3だね」
「今日ね」
「あぁ今日か」
「3はギリ行けるなぁ〜」
「鹿島近いからいいよな」
「まあ。でも近いから逆にギリギリまで寝ようと思うと寝過ごすんだよなぁ〜」
「なるほど」
「ま、どうせ1、2限は出ないっしょ?」
「まあ、たぶん」
「じゃ、ワンチャン3限でだね」
「あいあい」
「じゃ、またねーおやすみー」
「はーい。またー。おやすみー」
パス4(パスタイム スポット 4の略称)のパーティーから鹿島が抜けた。
僕もヘッドホンを取り、パス4の電源を切った。
テレビも消し、部屋の電気も消して布団に潜り込む。少し暖かく、布団から足を出す。
窓から外の光が差し、ほのかに部屋が見える。ボーっと部屋を見ながら考える。
「デート完遂」
匠のその一文が浮かぶ。
どうか良い結果でありますように。
なんとなくだが音成の匠への気持ちは知ってはいたので、悪い結果はあまり想像できなかったが
そもそも僕が考えている音成の匠への気持ちが合っているかもわからない。
もし、もし悪い結果に終わってしまったら…。
音成と匠はもちろん気まずいだろうし、匠と仲良いオレも気まずい。
そうなれば妃馬さんと一緒に帰ることも少なくなるかもしれない…。
いや、今は自分のことなんかより大切な親友の…。
そんなことを考えているといつの間にか眠っていた。
朝いつものように妹に起こされ、いつもの1日が始まる。
歯を磨き、顔を洗い、リビングで家族で朝ご飯を食べる。
妹と父が出掛け、1、2限サボる気満々で3限からだと母に伝えて部屋に戻る。
少し早い昼寝をして11時過ぎに起きる。大学へ行く準備をして12時前に家を出る。
音楽を聴きながら駅へ向かう。改札を抜けて、ホームで電車を待つ。
音楽アプリで音楽を聴くために家の前でスマホの画面をつけたときに来ていた
妃馬さんからのメッセージをタップし、妃馬さんとのトーク画面へ飛ぶ。
「おはようございます。今日は来ますか?」
返信を打ち込む。
「おはようございます。今電車待ってます」
送信ボタンをタップする。スマホをポケットにしまい、ボーっと景色を眺める。
「素晴らしの湯」の看板が見える。
またお泊まり会のとき素晴らしの湯行くんかな
そう思っているとアナウンスが流れ、電車がホームに入ってくる。
速度が落ち、電車が止まる。少ないが乗客の人が降りてきて
それを待ってから電車に乗り込む。平日の昼間ということもあって、車内は空いていた。
でもなんとなくいつもの感じで扉のサイドのシートの壁に寄りかかる。
扉が閉まり、電車が動き出す。スマホを取り出し、ホームボタンを押す。通知なし。
ホーム画面へ行き、意味がわかると怖い話のアプリを開く。
読んで解いていると終点のアナウンスが流れる。
読んでいる途中だったが電源を切り、ポケットに入れる。電車の速度が落ち、止まる。
扉が開き、ホームに降りる。改札を通り、乗り換える電車の改札を通り、ホームで電車を待つ。
ポケットからスマホを出し、ホームボタンを押す。妃馬さんからの通知。
「あ、そうなんですか?じゃあ同じくらいかも」
妃馬さんのそのメッセージにホームを見渡したくなるが、その気持ちをグッっと堪えて、返信を打ち込む。
「あ、そうなんですか?大学向かうときに会うかもですね」
送信ボタンをタップする。アナウンスが流れ、電車が止まる。
乗客の人が降りてきて、それから電車に乗る。先程途中で読みやめた意味がわかると怖い話の続きを読む。
すぐに大学の最寄り駅のアナウンスが流れ、スマホの電源を切り、ポケットにしまう。
速度が落ち、電車が止まる。ホームに降りる。もう春は過ぎてしまったのか、気温は暖かくかった。
でも日差しは夏よりは厳しくなく、春の優しさが残っていた。改札を抜け、券売機の前で空を見上げる。
雲がまばらにある、でも綺麗な空色のいい天気だった。
大学への道を歩き出そうとしたら右肩をトントンと叩かれる。
ふっと顔を右に回して後ろを振り返る。笑顔の妃馬さんが立っていた。
「おっ」
思わず声が漏れる。イヤホンを取る。
「やっぱり同じくらいのタイミングだった」
「そうでしたね。てか、このタイミングだったら同じ電車だったんじゃないですか?」
「たしかに」
いつもの妃馬さんだけど、どこか違う。
なんとなくいつもよりテンションが高いような嬉しさが滲み出ているように感じた。
「なんかありました?」
「え?」
思わず聞いてしまった。
「いや、なんか嬉しそう?っていうか」
「あ、わかります?」
「なんとなく?」
「いやいやいや…。聞きました?恋ちゃんの話?」
妃馬さんのその一言と妃馬さんがどこか嬉しそうな感じで大体を察してしまったが
「あ、ちょっ…と待ってください」
「ん?」
「あれですよね。大体わかります。結果でしょ?」
「そうですそうです」
「いや、今度匠ん家のお泊まり会で発表ってことになってるので今聞くわけには…」
「あ、そうなんですね」
「すいません。まあ、妃馬さんの感じで大体察しはついてますが」
「へへへ」
妃馬さんが笑う。
「お泊まり会いつなんですか?」
「いや、それがまだ決まってないんですよ」
「えぇ〜。いつになったらこのよ…この感じを共有できるんですか〜」
今「この喜び」と言おうとしてやめてくれたんだな。と妃馬さんの心遣いに感動し、感謝する。
「すいません。たぶん今日匠からLIMEあると思うんで」
「昨日はLIME来なかったんですか?」
「来たんですけど、返信したときには寝てたのかな?その後の返信がなかったんです」
「あぁ〜。恋ちゃんもスッって寝たって言ってました」
「気張ってたのか、緊張なのか、まあ、いつもより疲れたんでしょうね」
「ですねー」
そんな話をしていると大学の正門が見える。
「あ、僕いつもコンビニ寄ってから行くんですけど…」
と言うと
「私も飲み物買います」
と付き合ってくれた。2人ともペットボトルを片手にコンビニを出る。大学の正門から中に入る。
「なんだー。今日その話で盛り上がれると思ったのにぃ〜」
「すいません」
「まあ謝るようなことじゃないですけど」
「まあその妃馬さんの様子だとクラッカー用意しても良さそうですね」
「えー?それはどうでしょー?」
「今さらとぼけ…まあ、たしかにね?」
妃馬さんが笑う。その妃馬さんを見て僕も笑った。校舎に入り、講義室へ入る。2人で講義室内を見回す。
「あれかなぁ〜」
「音成?」
「はい」
「あ、鹿島いた」
「ほんとだ」
「じゃ、また後で」
「はい。また後で」
と妃馬さんは音成のところへ、僕は鹿島のところへと行く。
「おっすー」
サティスフィーでゲームに夢中な鹿島に声をかける。
「ん?あぁ怜ちゃん!おはー」
某有名「ママ」のポーズをする鹿島。
「うん。全然早くないけど、おはー」
僕もそのポーズで返す。
「匠ちゃんは?」
「いたらすぐわかるだろ」
「いないね」
「寝てんじゃない?」
そう言いながらイスに座り、バッグをテーブルに置き、ポケットからスマホを取り出し、ホームボタンを押す。
「おっ?」
思わず声が漏れる。
「ん?どった?」
「いや、匠からLIME来てた」
「マジ!?」
鹿島もサティスフィーをテーブルに置き、スマホを取り出して画面をつける。
「マジだ」
「ごめん。寝た」
匠からの文を読む。
「だろうね」
鹿島が呟く。
匠からの通知をタップし、匠へ返信する。
「うん、知ってたwお疲れ。そしておはよう」
すぐに既読がついた。トーク一覧に戻るとすぐに匠から返信が来た。もう一度匠とのトーク画面に入る。
「ありがとwおはよ」
返信を打ち込む。
「昨日何時起き?」
送信ボタンをタップする。トーク一覧に戻ると
鹿島、匠、僕、3人のグループが一番上に来ていた。トーク画面に入る。
「お泊まり会開催しますよー」
匠がそう送っていた。隣の鹿島に視線を送る。鹿島も今見たのかゆっくりと僕の方に顔を向ける。
僕もにじり寄る嬉しさにゆっくりと鹿島もゆっくりと口角が上がっていって
「「しゃー!!」」
2人でハイタッチをした。
「マジか!」
「来たぞ!」
僕の「来たぞ」で講師の方が入ってきた。
「おい先生も来たぞ」
「あ、マジだ」
「こっからはLIMEでだね」
「だな」
「えぇ〜では、ちょっ…と早いですが講義を始めたいと思います」
講師の方が講義開始の合図を告げた。そこからは鹿島と直接会話することなく
鹿島、匠、僕、3人のグループでLIMEで会話することとなった。
「イェーイ!マジ?マジ?」
「お泊まり会ね。いつがいいだろ」
トーク一覧に戻る。すると妃馬さんからLIMEが来ていた。
「なんか良いことでもありました?」
恐らく鹿島と僕の声を聞き、ハイタッチを見たのだろう。妃馬さんに返信する。
「さっき言ってたお泊まり会が開催されることになりました!」
送信ボタンをタップする。トーク一覧に戻ると鹿島、匠、僕、3人のグループが賑わっていた。
「2人ともいつがいい?」
「オレはいつでもー!なんなら早めに報告聞きたいから早めがいいっすw」
「早めねwじゃあ〜…」
宇宙人がダンスしているスタンプが5回、鹿島から送られる。
「なんなんこのスタンプww」
「金土でどう?」
「オレは全然オッケー!」
「まあ、怜夢もオッケーだろ」
「だろうね」
勝手に。と心の中で笑いながら会話に参加する。
「予想通り。オレもオッケーよ」
すぐに既読が2つつく。
「なら今週の金土で」
「楽しみすぎる!」
「わかる」
「で今日は匠ちゃん来ないのね?」
「うん。講義始まる時間に起きた」
「ワロタw」
「ん?12時間くらい寝たん?」
「そーだね。そんくらい寝たねw」
「羨ま」
「逆に眠いもんw」
「あるあるw寝すぎるとねw」
「わかるけどw」
トーク一覧に戻る。妃馬さんからの返信が来ていたので妃馬さんとのトーク画面に入る。
「お!いつになりました?」
返信する。
「今週の金土に開催予定です」
送信ボタンをタップし、その後サティスフィーであつまれせいぶつの森で日課を行った。
隣で鹿島もサティスフィーでなにかゲームをしていたが、どこか落ち着かない様子で
今週の金土が余程待ち遠しいんだろうなと感じた。
あつまれせいぶつの森の日課を終え、スマホのホームボタンを押す。
鹿島、匠、僕、3人のグループの通知と妃馬さんからの通知があった。まずは妃馬さんとのトーク画面に入る。
「今週の金土。びみょーに遠いなぁ〜w」
たしかに。そう思い、つい口元が緩む。
「たしかにwそれまで言わないでくださいね?w」
送信ボタンをタップし、トーク一覧に戻り、今度は鹿島、匠、僕、3人のグループに入る。
「京弥は行ってんの?」
「匠ちゃん来るかと思って珍しく」
「ほんと珍しい」
「怜ちゃんだけだよね。割とまともなの」
「オレをまともじゃないって言ってる?」
「うん」
「言ってくれるじゃん」
「ま、大学生らしいっちゃらしいけどね」
「たしかにねw」
「オレもゲームして寝て、起きてご飯食べてゲームしてだもんw」
「絵描いて寝て、起きてご飯食べて絵描いてだわ」
「描いてばっかw」
「アニメ見ながらだけどねw」
「あの本棚の漫画は?」
「読むよ?」
「2次元尽くしだねw」
「天国よ」
僕も参加する。
「匠にとっては天国だろうな」
すぐに既読が1つつき、返信が来る。
「ヲタクからしたらたぶんいい環境」
既読が2つになり鹿島が返信する。
「前から思ってたんだけどさ、匠ちゃんなんで「オタク」じゃなくて
「ヲタク」って書くん?「ヲタク」が正式なの?」
「あ、それオレも気になってた」
「あぁ、オレの好きな作品の影響」
「あ、そうなんね」
「タイトルは言わないけど
社会人ヲタクが恋する話なんだけど、いろんな種類のヲタクがいてさ?
ヲタク感もちゃんとしてて、しかも恋も友情?まあ、同じ会社の先輩後輩なんだけどさ。
それこそ鹿島みたいなゲーヲタもいてさ、めちゃくそゲームうまいのよ。
そのゲーヲタの人はマンガ、アニメにはあんま興味ないんだけど、彼女が腐でさ
その彼女に薦められたBL本も「ストーリーがいいね」って言ったりとかちゃんと読んで感想くれたり
逆に先輩のカップルは結構ツンケンしてて、喧嘩も多かったりするんだけどさ?
その喧嘩もなんていうのかな?想いを隠さないが故の喧嘩というか
なんでも言いたい、言い合える仲だからこその喧嘩というか
もちろん喧嘩って周りの空気とかも悪くするから、あんま良くないことだとは思うんだけど
なんだろうね。なんかほんと夫婦のような感じ。あ、夫婦といえばコミックではもう結婚してんのよ?
あの2人がついに結婚とはね…。いやぁ〜…感無量よ」
「スゲェw」
「返信に間があると思ったらこれ打ってたんかw」
匠の「ヲタク」さ加減に脱帽しながらトーク一覧に戻る。
妃馬さんからのメッセージがあったので妃馬さんとのトーク画面に入る。
「ぐぅ…厳しいですねw努力しますw」
つい口元がニヤけてしまう。
「お願いしますw」
送信ボタンをタップする。その後もサティスフィーでワメブロ(ワールド メイド ブロックスの略称)をしたり
鹿島、匠、僕の3人のグループLIMEで話したり、妃馬さんとLIMEして講義中を過ごした。
「じゃっあー、少し早めに始めたので今回の講義はここまでにします」
と講師の方が講義を締める。すでに帰りの支度をしていたのか
講師の方が言い終わるのが先か、立ち上がるのが先かくらいで立ち上がり、講義室を出て行く生徒が目立つ。
「見せプで決めるぜ」
鹿島が呟く。
「うん。勝ったっしょ」
「なにやってんの?」
「スプラタウン」
「あれで見せプある?」
「まあ、時間少ない最後のキルかな」
「キル関係ないのに」
「まあね」
「勝った?」
「ふっ…。僕を誰だと?」
鹿島がサティスフィーの画面を見せる。73%対27%で勝っていた。
「圧勝じゃん」
「まあねぇ〜」
帰る支度を整え、妃馬さんと音成に近づく。
「お疲れ様ですー」
鹿島が2人に声をかける。
「お疲れ様です」
「っすー」
4人で大学の校舎を出る。
「なに話せばいいの?」
鹿島が僕に聞く。
「いや、いつも通りくだらない話すればいいだろ」
「いや、なんか…なんつーの?なんかどうしてもあの話に行っちゃいそうじゃん?」
「恋ちゃんの話ですか?」
「ですです」
「私?」
「ほら昨日の」
「あぁデートね」
「あぁー!言わないで!言わないで!」
「あー!」
「なに?2人ともどったの?」
「なんか今度お泊まり会やって、そこで結果発表らしいよ」
「あぁ、それで」
「それで妃馬さんからもその話しないでくださいってお願いしてあるのよ」
「なにそれ」
「いや、親友の門出よ?結果発表には拘らないと」
「え?妃馬さんはもう知ってる?」
「はい。知ってますよ」
「まあ、さすがにサキちゃんとフィンちゃんには報告済みよ」
「そりゃそうか」
「えぇ〜じゃあ今日2人に話せないんだ〜」
「ごめん」
「さーせん」
「じゃ、小野田さん関係の話は極力なしということで」
「そうっすね」
「あ、音成さん。呼び方とか変わった?
あ!待って!言わなくていい!変わってたとしても変わらなかったとしても言わないで!
変わったならなおさら言わないで!」
「あ、うん。わかった」
「そっかそっか」
告白が成功して付き合い始めたなら、呼び方が変わっても不思議じゃないか。と心の中で納得する。
「あぁ〜ちょー気になるけどね」
「まぁなぁ〜」
「聞いちゃう?」
「聞いちゃわない」
「だよねー。…あぁ!なに話したらいいかわからん!」
「うるさっ」
「暑ノ井くん、昨日サキちゃんと出掛けたんだって?」
「え?そうなの?」
鹿島がなに話したらいいかわかんないと言ったから
話題をと思ったんだろうが、なんの話振ってんねん音成!と思った。
「あぁ、前言ったじゃん。スマホケース見に行くって」
「あぁそれね」
「それそれ」
「で?」
「で?とは?」
「いや、どんなだったの?」
そう聞かれて妃馬さんを見る。なんとも言えない表情をしていた。
「いや、どうって。まあ、楽しかったけど」
「いや、それはそうだろうけど」
なんでだよ。と言おうとしたがやめた。
「スマホケース見に行っただけ?他には?」
「他はーファミレスでちょっと休憩して、井の蛙公園でまったりしたね」
「ですね」
「あ、そうなんすね」
「で?結局いいスマホケースは見つかったの?」
「ううん。それが見つかんなかったの」
「あら残念」
「あら残念」
そんな話をしていると駅につく。改札を通り、ホームで電車を待つ。
音成、妃馬さん、僕の乗る方の電車が来て、ホームで手を振る鹿島に僕たち3人も手を振り電車が動き出す。
「まさか今日その話が出来ないとは」
音成が腕を組む。
「ごめんごめん。今週末まで待って」
「また2泊3日ですか?」
「いや、たぶん1泊2日だと思います。あ!待って。
匠の話はダメだ。鹿島が言った通り、呼び方なんてポロッっと出るから」
「あぁ、たしかに。今何の気なしに名前言いそうになった」
「マジで匠の話なしね」
「うん。頑張るわ」
すぐに乗り換える駅につき、3人で降りて、改札を通り、井の蛙線の改札と通る。
ホームに電車が来ていたのでその電車に乗る。
「音成はなんかいないの?」
「うち?」
先程の電車内で妃馬さんのお家にいる猫ちゃんの話になった。
「うん」
「うちはね、中学生の頃ハムスター飼ってた」
「あぁ〜はいはい」
「今はなんもいない」
「なんか新しく迎えようとは思わないの?」
「いやぁ〜、まあ、サキちゃん家行って
雪ちゃん氷ちゃんと触れ合って猫飼いたいとは思ったよ」
「あぁ、会ってるんだ。まあ、そりゃそうか。こないだ家行ってるしな」
「まあ、その前から行ってたけどね」
「じゃあ音成は猫派か犬派でいったら猫派なんだ?」
アナウンスが流れて、扉が閉まり、電車が動き出す。慣性の法則でみんな同じ方向へ蹌踉めく。
「そうだっ…ね。猫派」
「そうだっね」
「蹌踉たんだよ」
「知ってるよ。妃馬さんは…ってまあ、猫派ですよね?」
「そうですね。猫派です」
「おぉ、良かった良かった」
「なんでですか?」
「いや、ワンチャン犬派だけど
ご家族の誰かが買って、犬飼えなくなってるとかかもしれなかったから」
「あぁなるほど。雪ちゃん家族にしたいってせがんだの私なので」
「あ、そうなんですね?」
「わかります?あの大型のスーパーって、ペットショップも併設されてたりするじゃないですか」
「あぁありますね」
「あるね。ペットコーナーみたいなの」
「そうそう。中学2年のときに、夏だったかな?1階で買い物してるときに
父とペットショップのコーナーに行ったら、めちゃくちゃ可愛い子がいて。
まぁそれが雪ちゃんなんですけど。ガラス?越しにかわいーって見てたら
店員さんが「抱っこしてみる?」って言ってくれて「はい!」って答えて
抱っこしたらもう可愛くて可愛くて。で誕生日近かったから、父にお願いしまくって
その場ではダメだったんですけど、誕生日の日に父が帰ってきたら、雪ちゃんも一緒に連れてきてくれて」
「めっっ…ちゃ良いお父様」
「ね。最高のお父さんじゃん」
「はい。最高の父です」
微笑みながら、でもどこか照れ臭そうな妃馬さん。
僕の家の最寄り駅を過ぎ、音成と妃馬さんの降りる駅についた。
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