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五条家の許婚①
「このお方が将来おまえの旦那様になるお方だ。 ほら、あいさつせんか」
お祖父様がそう言う。私は言われたとおり、練習したとおりに正座をし、頭を下げる。畳の匂いが私の鼻をくすぐる。私は覚えたとおりの言葉を発する。
朱里 「お初にお目にかかります…加茂朱里と申します。どうぞよろしくお願い致します。」
そう言い顔をあげると、そこには美しい瞳をした男の子がまっすぐこちらをみていた。私は目を合わせることができなかった。目を合わせてしまったらその瞳に吸い込まれそうで、なんとなく怖かった。
しばらく間が空いた。とても気まずかった。今日は顔合わせの予定。緊張などしなかった。拒絶されてもどうでもいいと思った。自分の人生の道はもうきめられているのだと、子供ながらに悟った瞬間は未来の結婚相手さえも決まったときからだ。そう考えていたらお祖父様がどこかへいってしまった。おそらく何か話したと思うが何もきいていなかった。私はどうしようと思ったが何もすることができなかった。ただ沈黙が続く。先に口をひらいたのは向こうだった。
「この縁談君 はどう思う?」
その質問に一瞬戸惑ったが冷静を装い口を開く。
朱里 「この縁談は両家の利害関係が一致したことが理由だとききました。それ以上もそれ以下もないと思います。」
そう言うと呆れたように口をひらいた
「そうじゃなくて…。君もしかして話通じない?君自身はどう思ってるってきいたんだけど。」
口調から気を悪くさせてしまったんだと気づく。
朱里「申し訳ありません。私自身とても光栄だと思っております。…」
と言った。正直返答はこれであっているのか分からない。むこうが話す。
「あっそ僕はこの縁談はぶっちゃけどうでもいいんだけど。なくてもあっても変わらない。」
そう言いまた話を続ける
「20歳までお互い乗り気ではなかったら破談にしよう」
私はその発言に驚いた。私は恐る恐るきいた
朱里 「できる…のですか?」
「できるっしょ」
その言葉は即答だった。私は何も言うことができなかった。
それが彼と初めて出会ったときの話だ。