テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
言葉もなく気を休めている俺たちを、シルキーちゃんたちが口々に労わってくれる。
「お疲れ様ですぅ」
「緊張しましたね~!」
「王子様可愛かったぁ」
「私ユリウス様が好み。カッコ良かった♪」
後半ただの感想になってたけど、まぁいいか。
シルキーちゃんたちがきゃいきゃいと女子トークに花を咲かせている横で、ゼロはちびちびとコーラとやらを呑みながら遠くを見ているような目をしている。
「練兵場の事、考えてんのか?」
「ううん。それはまた、アライン様たちの考えが纏まってからにする。今は、ダンジョンどう造り変えたらいいのかって考えてた」
「そうだな。実際に人が入ってみると、結構問題点もあったしなぁ」
最初に聞いたときには驚いたが、視察に来てくれた事はむしろ感謝したいくらいだ。なんせオープン前にいろいろな問題点が洗い出せたんだから。俺たちは忘れないうちに問題点を纏めるため、マスタールームに戻る事にした。
「自分たちだけお茶とか、酷くない?」
マスタールームに戻るなり、ルリからクレームを入れられる。
「ゴメンね。でもおみやげ持って来たよ。プリン、好きだよね?」
ゼロは抜かりなくルリを懐柔すると、ユキにもミルクを与えていた。なんて準備のいいヤツ。うん、ユキもしっぽがフリフリと振られていて、すごく幸せそうだ。癒やされるなぁ。
「今日はみんな、お疲れ様! みんなのおかげでアライン様もすごく褒めてくれたよ。練兵場造ってこれからもちょくちょく来てくれるって」
「ほんと! 良かった」
「わんわん!」
ルリとユキが歓声をあげる。
「でも問題点もいっぱい分かったから、これからそれを皆で出しあって、オープンまでの間にダンジョンを手直ししたいんだ」
ゼロの説明を受けて、俺たちはでかい紙に問題点を次々に書き込んだ。各々が気づいたものを全部書き出すと結構な数がでたな、やっぱり。
俺たちはそれを元に、ダンジョンをどう変えるかを話しあう。
「やっぱ駆け出し用は難し過ぎたし、罠も多過ぎだろう。対象レベルが細かすぎるのもなんだし、逆にモンスターを強いのに変えて、対象レベルをあげた方がいいんじゃないのか?」
「うん、そっちの方がいいかもね。やっぱりもう少しレベルが高い人も対象にした方がいいかも。低レベルだけだと、1チーム3時間位かかるのに、貰える経験値もポイントも少ないし」
「そう言えば、制限時間は絶対に必要だよな」
「制限時間……そっかぁ、超初心者用ダンジョンは、2段構えで制限時間があればいいのかも」
「そうね。エリカ姫ってお店を見るのがすごく楽しそうだったじゃない? あれを見ててお店をもっと増やしたら、って思ってたんだけど……ショッピングだけに夢中になられても困るものね」
「奥の廃墟部分はモンスターを強化して、対象レベルももう少し幅をとろう」
「だとしても、もう一つはダンジョン要るよねぇ」
「そう言えば、モニターで冒険の課程を見守るのって、ハラハラして意外と楽しかったのよね」
「あ、それは僕も思った」
確かに。俺も若干イライラもしたが、中に入ったヤツが予想もつかないことをするのは面白かったし、一緒に探検しているような気になって純粋にワクワクした。
俺たちが頷くのを見て、ルリが嬉しそうに笑う。
「それでちょっと思いついたんだけど、もしかしてカフェとかにダンジョンの中が見えるモニターを置けば、宣伝にもなるし面白がって人気がでるんじゃない?」
「なるほど……!」
「せっかくだもの、見てて面白い仕掛けが欲しいわ」
ルリが言ったこのなんとも不謹慎な一言が、新たなダンジョンも含めた、今後のダンジョン運営のメイン企画になった。
確かに人が見る事を前提で考えると、新たなダンジョンの方向性はかなり大事だ。
今は街&廃墟系、洞窟系、そしてご褒美ルームの草原&森系がすでに出来ている。せっかくもうひとつダンジョンを作るなら、これと見栄えがかぶらないフィールドにしたい。
煮詰まった俺たちは、一旦話し合いを中断し、王子様が帰ったらやる予定だったものから片付ける事にした。
王子様が帰った今、一番試したいのはこれだ!
「ユニークチケット、使っちゃう!?」
「待ってました!」
すごく試したかったが、何が起こるか分からない謎のチケット。視察が終わってから……と我慢したんだ。
何がでるんだ? いったい何が起こるんだ!? ゼロが取り出すチケットを、ワクワクしながら見つめる。
『ユニークチケットを1枚、消費しますか?』
「承認!」
しかして現れたのは…ゼロを狂喜乱舞させている、この設備。
『錬金釜』!
複数の何かを入れると、違う何かに精製され直すという、恐ろしい釜だ。正直言うと、あまりゼロには触らせたくない。
俺の気持ちを知るよしもないゼロは、もう嬉しくてたまらないらしく、止める間もなくマスタールーム横にものものしい『錬金部屋』なるものを設置してしまった。
「うわぁ~! うわぁ~! どうしよう、嬉しいよぉ!」
狂気乱舞してるからな、それは見れば分かる。だが、あえて止めるからな!
「錬金術師もいねーのに、どーすんだよ。そんなもん」
「もちろん僕がやるよ! スキルチケット、とっといて良かった!」
「だーめーだ! それならちゃんと錬金術師を召喚しろ。お前は絶対にマスターの仕事しなくなる!」
思いついたら試さずにいられない癖に。絶対にダンジョンが恐ろしい事になると断言できる。