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【4月 サクラサク】
「おお~~~!!アキ」
「素敵よ!アキ君 」
直哉が明をみて目を見張った、その横でアリスもうっとり明を見る
「えへへ・・・(照)」
明が紺色チェックの、バーバリーのキッズ用三つ揃えのスーツに身を包み、黒のランドセルを背負って、まっすぐにそこに立っている
同じ紺色のボタンで装着するタイプのネクタイを、窮屈そうに付けているその姿は
初々しくも将来とびきりの美青年になりそうな、片鱗をもうすでに彼は7歳で醸し出している
頬を染め、アリスに朝からセットされたセンター分けの裾を、綺麗にヘアアイロンで外側にカールされている
まるでバーバリーのカタログか何かから、飛び出してきたような美少年だ
「どこかの宮殿の王族みたいだな」
腕を組んで直哉が小さく口笛を吹いた
キャーッ!キャーッ!
「この日のために私が選んだのよぉ~、コンセプトはイギリス紳士風よ!、すてき!すてき!アキ君後で薔薇園の薔薇を、バックに写真撮らせてぇ~~~、インスタにあげるのぉ~~~」
明が笑顔でランドセルを背負って立っているだけで、アリスがスマホをあちこちに掲げ、カシャカシャと忙しく50枚ほど写真を撮っている
「入学式楽しみだね!アキ君!」
「うん!ぼ・・・僕、自分で教科書・・・名前書くんだ!」
「お名前ペン持った?」
「持った!」
今日はアリスも保護者として入学式に参加するため、薄いピンク色の上品なタイトスーツに身を包み、パールのネックレスに胸には可憐なコサージュを付けている、髪は三つ編みにアップして、母親にしては若すぎる姉といった所だろう
「そろそろ学校へ行こうか?」
これまた入って来た北斗は、仕立ての良いグレーのスーツを着こなす、三十代半ばの威厳のある男性で
サングラスをかけたその出立ちは、なんだか保護者というより、シークレット・サービスのようにいかつい
「ちょっと早いけど、入学式の前にアキの担任の先生に挨拶したいんだ」
「兄キが張り切ってどうするよ?」
呆れる直哉の言葉が聞こえないかのように、北斗はジャケットから小型の、タブレッドを取り出すと、クルリと直哉達に背を向けて、心療内科の明の診断書を確認している
クドクドクド・・・「何を言うんだ!アキは普通の子と少し違うんだぞ!アキの吃音症の症状をちゃんと理解して、対応してもらうには、しっかりした保護者がついていることをアピールして、日々の学校生活で、アキをサポートしていくには、家庭と学校の両方で考えてだな―」
「あっアリス!帰りに明石饅頭買ってきて、知り合いに渡すんだ」
「OK!何個入り?」
クドクドクドクド・・・「またグループ活動ではアキが仲間外れになって、孤独感を感じないようにだな、俺は気配りをしてもらえるように先生に願いたい、なんなら町の教育委員会の畑田さんに会ってハンデを追った子供の人権を―」
二人が自分の話を聞いていないとわかった北斗は、ブツブツ言いながら車の方に歩いて行った
カッコいいし長い脚で歩く姿が颯爽としているのは確かだけど、北斗はいつもよりどこか緊張しているなと、アリスは思った
「アキが心配でたまらないみたいだな」
「そうなの夕べもずっとスーツ選んでいたわ」
「その結果あれか?どこかのシークレット・サービスみたいだぞ」
「あんな北斗さんみたいな怖い父兄に、詰め寄られちゃ担任の先生も可哀想よね」
アリスが肩をすくめる、ふと直哉が明を見る
「・・・それにしてもアキはなんだか、リラックスしてるな 」
「そうそう!私が女子校時代の学校の、思い出とか楽しかったことを、いつも話して聞かせていたから、アキ君も学校に対しての先入観が変わったみたい」
アリスは微笑んだ
「だって・・・宝物よ・・・学生時代の友人って・・・それに初めて家庭以外の社会にもまれるのも経験よ、それで傷ついたら私達がいるわ」
「アキは幸せ者だな・・・ 」
直哉がため息をついて微笑んだ
「とにかく!アキ君が楽しい学校生活を、送ってもらえるように、私も北斗さんも全力を尽くすつもり」
「よぉ~し!アキ!友達100人作れるか!だな!」
「うん♪」
「あら!アキ君の学年100人もいないわよ、20人編成のクラスが二クラス」
「少ねぇ~~~(泣)」
「少子化だからね~」
・・・・
―数日後―
アリスは成宮牧場の、入場ゲートのそばでウロウロしていた、今日から一年生は授業開始だが、短縮授業なのでもうすぐ帰って来る