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東京陰陽学院の理事長御子柴聖 十七歳
学校の裏に回ると、裏門らしき前全身黒いスーツを着た男の人が立っていた。
焦茶色のパーマヘアーに少し焼けた肌と切れ長の目、黒のスーツが似合うダンディな男性で、蓮が男の人の姿を見て車を降り、男の人と話している
もしかして、この学校の理事長さんかな?
運転手さんが車から降り、後部打席のドアを開けてくれたので降りて蓮の元に向かった。
タタタタタタタタタッ。
「お嬢。こちらが親父の知り合いで、この東京陰陽師学院の理事長です」
「聖様だよね?初めまして、僕は鬼頭智也です。克也から話は伺っています」
蓮に紹介された智也さんは、丁寧に頭を下げてくれた。
鬼頭家は御子柴家の傘下に入ってる一族の事で、あたし達と同じ陰陽師の仕事を生業としていて、妖怪退治専用の武器の仕入れも行ってくれているらしい。
克也さんが教えてくれた情報なんだけど…。
「初めまして、御子柴聖です。今日は宜しくお願いします」
「こちらこそ、それじゃあ理事長に行こうか」
「はい」
あたしと蓮は智也さんの後ろを歩き、裏門を潜ってから学校の職員専用玄関から入り、理事長室と書かれた部屋の前に到着した。
生徒や先生の一人とも、顔を合わせずに学院内に入れたな…。
学院内はとても綺麗で、学校とは思えない造りで大きな病院みたいな感じがした。
とは言っても学校を見たのは、妖が出て任務に行った時だけど…。
「ここが理事長室です、中に入って下さい」
そう言って智也さんが扉を開けてくれたので、あたしと蓮は智也さんより先に理事長室の中に入った。
後から理事長室に入った智也さんは、札を取り出して扉に貼り始める。
ペチッ。
あの札は…、人避けけの札だ。
「誰も理事長室の前を通らないように、人避け札を貼りますね」
あたしの視線に気が付いた智也さんは、札を貼りながら説明してくれる。
流石、克也さんの知り合いだけあるな…。
札を貼り終えた智也さんは、あたし達と対面するソファーに腰を下ろした。
「お茶を用意させます、少しお待ち下さい。出て来てくれ、お前達」
ボンボンッ!!!
智也さんが式神札を取り出しながら呟くと、智也さんの左右からメイド服を着た狐の面を嵌めた二人の女性が現れる。
長袖から見える肌が黒色だったので、人間ではない事は確かだ。
式神の中でも人型の者もいれば、動物の姿の式神もいるので式神は種類豊富である。
智也さんが召喚したメイド達が手を挙げると、洋風のティーポットとティーカップが目の前に現れ、あたし達の前静かに空のティーカップが着地した。
「「失礼します」」
コポポポポッ、コトッ、コトッ。
左側に立っていたメイドさんがティーポットを持って、あたし達のティーカップに紅茶を注いで行き、右側に立っているメイドさんは焼き菓子が乗った皿を置いていく。
注がれた紅茶は暖かな湯気と共に、甘い花の香りが漂ってきた。
「「どうぞ、お召し上がり下さい」」
「ありがとう、後は僕がやるから戻って良いぞ」
「「かしこまりました」」
ボンボンッ!!!
智也さんの言葉を聞いたメイドさん達は、煙を上げながら式神札に戻って行く。
「単刀直入に聞きますが、御子柴家の生き残りは聖様だけですか?克也から話は聞いていますが、聖様ご本人から聞きたかったので」
智也さんの言葉を聞いた蓮の表情が強張って行くのが分かり、トントンッと優しく蓮の太ももを叩いた。
智也さんは間違った事を聞いて来てない。
当然の事だ。
傘下の人間なら使えている御子柴家に、生き残っている人が居るか確認したい筈だ。
蓮は、あたしに気を遣ってくれたんだろうな。
御子柴家の当主として、鬼頭家の人間である智也さんに説明しなければならない。
「御子柴家を離れた弟と本城家に居る母、それとあたしだけです。お婆様とお父さんは酒呑童子に殺されました。使用人も御子柴家の人間も、八岐大蛇達に殺されて…」
「成る程…。御子柴家の生き残りが居ると分かれば、妖怪達は聖様達を血眼になって探すでしょう」
「どうして?」
あたしは不思議に思い、智也さんに質問をした。
「八岐大蛇と御子柴家は、因縁の中なのはご存知ですか?」
智也さんの言葉を聞きながら、お婆様が言っていた話を思い出しながら口に出す。
「お婆様が話してたのを聞いた事があります。明治時代から、八岐大蛇の率いる大妖怪と御子柴家率いる陰陽師達が、長い争い続けていると…」
長い歴史を持つ御子柴家、長寿の妖怪達からした恨むべき存在には違いない。
それ故に御子柴家は常に妖怪達から命を狙われ、血を流す戦いを繰り広げていたと。
お婆様が御子柴家の子供達に口酸っぱく「強くなさい、御子柴家の人間としての務めを果たせ」と、あたし達に言い聞かせていた。
「御子柴家は傘下に入っている家系の名を背負っているのだ。これぐらいで泣き言を言うな、立ちなさい、戦いなさい」
鬼の形相したお婆様は、泣き喚く子供達の体を木刀で叩き付け、妖怪退治用の武器を握らせては戦わせた。
致命傷を負った子供に労いの言葉も、死んでしまった子供に弔いの言葉も言わない。
冷酷で残酷、気に入った子供にしか優しくしないお婆様だった。
あたしも楓も、お婆様からの愛情を注がれた事なんて一度もない。
「智也さんが言うのは、アサミ様と楓坊ちゃんが危険な目に遭うって事ですか?」
「!!?」
蓮の言う事が本当なら、楓とお母さんの命が危ないって事?
「それは大丈夫だ。アサミの護衛だけで十分事足りますから」
「え?アサミって…。智也さん、お母さんと知り合いなんですか?」
「本城家に身を置いているのなら安全ですよ。実は聖様のお母上、アサミは、鬼頭家の人間で…。つまりは僕の姉です。僕と聖様と楓君は血縁者なんです」
「「えぇぇぇ!!?」」
智也さんの言葉を聞いたあたしと蓮の声が重なった。
智也さんが、まさかの叔父!?
信じられないんだけど…!?
まさか、智也さんと血が繋がっているとは思ってもみなかった。
「智也さんが、お嬢の叔父だって…。親父は…、何で、教えてくれなかったんだ?」
「蓮、それは僕が口止めしたんだ」
智也さんが、口止めした?
「どうしてですか?」
そう言って、あたしは智也さんに尋ねた。
「僕も克也に聞くまで、聖様の存在を知らなかった。御子柴家…、亡き陽毬様が聖様を隠していたからです。理由は分かりませんが…、姉さんが聖様に酷い態度をとっている事も聞きました」
智也さんの話を聞きながら、蓮はあたしに視線を送り手を握ってきた。
「陽毬様と大西さんの葬儀の日、姉さんが聖様に罵声を浴びせたと。本当に申し訳ありません、聖様。姉がとんでもない事を…」
「智也さんが謝る事じゃないです。お母さんがあたしの事を恨むのは当然なんです。お母さんは楓の事は可愛がっていたから…、あたしと遊んだ所為で追い出されてしまったから」
「…、それでも姉さんは言ってはいけない言葉を言ったんです、してはいけない暴力もね。聖様、本当に申し訳ない事をしてしまった」
「智也さん、あたしには蓮が側にいてくれたから、お母さんの事を憎んだ事はないんです。だから、謝らないで下さい」
隣に座ってくれている蓮に視線を送りながら、智也さんに言葉を投げ掛ける。
あたしの視線に気が付いた蓮は、優しく繋がれていた手を握り直してくれた。
「それに一度だけ、お母さんに謝られた事があるんです」
「あぁ、それって…、あの時の?」
「あの時とは…?」
あたしと蓮の会話を聞いていた智也さんは、不思議そうな表情を浮かべたまま尋ねてきた。
***
まだ隔離させれる少し前、妖怪退治の任務を終えて御子柴家に帰ると、お母さんが門前であたしの帰りを待っていた時があった。
この頃のお母さんはまだ優しくしてくれていた。
車が御子柴家の門近くに停車し、運転手が後部座席のドアを開けてくれたので、あたしはすぐに車から降りて、お母さんの元に走り出した時だった。
「お母さんっ!!!」
「聖、おかえ…」
ドォォォーンッ!!!
お母さんの背後に大きな音を立てながら地面に着地した鬼が、鋭い牙を見せながら涎を垂らす。
「アサミ様っ!!!」
使用人達は突然現れた鬼に呆気を取られてしまい、中にいる御子柴家の人達を飛びに行こうとしない。
こんな時に何をしてんの!?
呆気に取られてる場合じゃないのに!!!
スッ…。
そう思いながら、あたしは巫女服の懐から式神を札を鬼にバレないように取り出す。
「ガハハハハッ!!!美味そうな人間が、ゴロゴロいんじゃねーか…」
「い、いやああああああああ!!!」
背後に現れた鬼がゆっくり、お母さんの方に手を伸ばそうと 歩み出そうとした時。
ビュンッ!!!
ブシャッ!!!
式神札から飛び出してきたクロが鬼の首に噛み付き、白はお母さんの着物の袖を噛んで鬼から引き剥がす。
「グアアアアアアアッ!!!」
「ガルルルルッ!!!」
鬼がクロを引き剥がそうと暴れるが、クロは意地でも鬼の首から牙を離そうとしない。
ビチャッ!!!
暴れる度に噛まれている部分から血が噴き出し、お母さんが着ている着物に思いっきり血が付着した。
「ひっ!?」
「お母さん、頭下げてて」
腰から下げていた刀を抜きながら鬼に近付き、ゆっくりと暴れている鬼を見据えた。
早く鬼を殺さないと、お母さんが危ないな。
この距離からでも簡単に頭を落とせるな、こんな事を考えれるくらい余裕がある。
「クロ、もう良いよ」
「あっ?」
あたしの言葉を聞いたクロはすぐに鬼の首元から口を離し、鬼が呆気に取られている間に刀を振り翳した。
ブンッ!!!
ブシャアアアアアア!!!
振り翳した刃は綺麗に鬼の首を斬り落とし、噴水のように血が噴き出す。
ドサッ!!!
首を切り落とされた鬼はゆっくり地面に倒れた瞬間、傷口からダダ漏れる血で血溜まりが地面に広がって行く。
あんなに怖いと思っていた妖怪を見ても、何にも感じない。
鬼を切った時に飛んで来た血が生臭い。
「お母さん、大丈夫?怪我してな…」
あたしが言葉を言い終える前に、お母さんは力強く抱き締めながら同じ言葉を繰り返した。
「ごめん、ごめんね…、聖っ。本当にごめんね…」
「何で、お母さんが謝るの?お母さん、悪い事したの?」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
声を掛けても、お母さんは謝ってばかりだった。
その日以来、お母さんがあたしの事を出迎える事はなくなり、お婆様に隔離される事になる。
優しい言葉も温もりも、あたしにではなく弟の楓に注がれるようになり、お母さんの中であたしの存在が消えた。
***
思い出しながら当時の出来事を智也さんに説明すると、智也さんは紅茶を啜りながら話題を変えた。
「そうだったんですね…。僕は親父からの任務で、この学院の理事長をしているんですよ。」
「任務…」
そう言えば、お婆様は何で…。
あたしを隔離してまで、外部に情報が漏れないようにしたんだろう…。
今更なんだけと。
「それと、聖様。楓は今、壱級陰陽師なんですよ。それに東京に暮らしているんですよ」
「「えぇぇぇ!!?」」
あたしと蓮の驚きの声が再び重なる。
「壱級陰陽師って、蓮と同じ壱級って事だよね…?」
「坊ちゃんが、壱級…」
蓮は楓の事を”坊ちゃん”と昔から呼んでいる。
まさか、楓が陰陽師になってたなんて…、最後に会ったのは四歳の時だったからな…。
今の楓は、十四歳になるよね。
東京にいるならどこかで会えるかな、会いたいなぁ…。
「楓は特例ですが、この学院に通っています」
「楓が!?」
ブー、ブー、ブー。
あたしの声と重なるように、テーブルの上に置かれた智也さんのスマホが振動する。
「すみません、電話に出ても宜しいでしょうか?」
「あ、大丈夫ですよ」
「ありがとうございます、失礼します」
智也さんはあたしに謝罪してからスマホを手に取り、スマホを耳に当て通話に応じた。
「もしもし、もう到着なさってるよ。あぁ、すぐに来いよ」
通話相手と智也さんが話してる中。ツンツンッと蓮が肩を指で突いてくる。
「お嬢、一息つきませんか?お嬢、紅茶は初めてでしたよね?」
「え?あ、うん。どんな味なのか想像出来ない」
「実は智也さん、お茶にうるさいんですよ。その智也さんが出すって事は、かなり上手い筈ですよ」
「ふふっ、そうなんだ。じゃあ、安心だね?」
蓮の話を聞きながら、思わず笑ってしまった。
楓やお母さんの事が話題に出たから気を遣って、空気を変えてくれたのだろう。
用意された紅茶を口に運ぶと、想像以上に紅茶が美味しくて驚いた。
「この紅茶、すごく美味しいっ。紅茶って、こんなに美味しいものだったんだ」
「うん、美味い。やっぱり、智也さんが用意しただけの事はあります」
「でしょ?海外から取り寄せた物なんですよ」
通話を終えた智也さんは、あたし達の会話に入ってきた。
「はい、すごく美味しいです。蓮が智也さんは紅茶にうるさいって…」
「おいおい、蓮。うるさいって何だよ、こだわりがあるって言えよ?」
「こだわりが強過ぎるんですよ、智也さんは。この間も、何件も紅茶店に連れ回したじゃないですか」
「お前が聖様に紅茶を飲ませたいって言ったんだろ?よく言うぜ…」
蓮と智也さんのやりとりを聞きながら、小さく笑うと二人は優しい視線を送ってくる。
コンコンコンッ…。
そんな時、ふいに扉が叩かれ部屋に響く。
扉が叩かれた瞬間、蓮は素早く立ち上がり、あたしを背中に隠すように前に立った。
人避け札を貼っているのに、誰かが理事長室に来たんだ。
「大丈夫ですよ、さっき僕と通話していた相手ですから」
そう言って智也さんは、スタスタと扉の前に歩いて行き、ゆっくりと扉を開ける。
ギィィ…。
開かれた扉の先に現れたのは、あたしと同じ髪色と瞳の十四歳ぐらいの男の子で懐かしい感じがした。
ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ…。
心臓が高鳴り、呼吸がしづらくなる。
男の子もあたしの事を見て驚いていたが、茶色の瞳に大粒の涙が溜まり始めた。
あの頃よりも背が伸びてて、耳には沢山のピアスを着けているが、可愛らしい顔付きは変わっていない。
見た瞬間に確信した、あたしが見間違えるはずが無い。
「ね、姉ちゃん…?」
男の子は声を震わせながら、あたしの事を見ながら昔に呼んでいたように呼ぶ。
「久しぶり…、楓…」
「っ…、姉ちゃんっ」
楓はゆっくりとあたしの所まで歩いてきて、震える手であたしの手を握り締めた。
***
御子柴家を追い出された御子柴楓を迎えに来たのは、鬼頭家の時期当主の鬼頭智也だった。
「お前が楓か、姉さんから手紙で聞いてたよ。今日から、お前は僕の家で暮らす事になるよ」
「…、姉ちゃんにもう会えないって事?」
「お姉ちゃんがいるのか?まぁ…、しばらくは会えないだろうな…」
「姉ちゃんに会えなくなるのは嫌だ…。俺が弱い所為で、ばあちゃんから姉ちゃんを守れなかった」
御子柴楓の言葉を聞いた鬼頭智也は、目線を合わせる為に腰を低くし、御子柴楓の肩を強く掴む。
ガシッ!!!
「楓、お前はこれからいくらでも強くなれる。お前が努力すればの話だが、姉ちゃんを守りたいなら強くなれ。大丈夫、僕が手伝ってやる、安心しろ」
「うん…っ、うん…っ。俺、強くなる、姉ちゃんを守る為に強くなる」
大阪にある鬼頭家に身を置く事になった御子柴楓は、鬼頭智也の宣言通りに鍛え上げられていた。
追い出された日に決意を決めた御子柴楓は手に血豆が出来る程、木刀を振るい続け、体力作りに力を入れ、鬼頭智也に稽古をつけてもらう日々を送っていた中。
鬼頭家の地下で封印されていた酒呑童子が目覚め、目の前で鬼頭家野人間達を殺される光景を目にした。
「や、やめてくれ…っ!!!」
「この程度か、陰陽師共。つまらな過ぎて、反吐が出そうだ」
ゴキッ、ブシャアアア!!!
酒呑童子はそう言葉を吐き捨てながら、鬼頭家の使用人の頭を握り潰した。
手にベットリと肉片と血が付着し、返り血塗れの酒呑童子の姿は悪鬼そのものを象徴している。
「おいおい、増援はまだか!!?どうなってるんや!!?」
「親父、騒いでないで下がれ。酒呑童子の間合いに入るな」
鬼頭智也、当主である鬼頭基次でさえも手を出せない状況の中で、酒呑童子に向かって引き金が引かれた。
パアァァァァァンッ!!!
ブシュッ!!!
放たれた銃弾は酒呑童子の頬を擦り、白い肌から赤黒い血が流れ落ちる。
「俺に撃ってきたのはお前か?小僧」
「「楓!?」」
鬼頭基次と鬼頭智也の背後から現れた御子柴楓の手には妖銃が握られており、酒呑童子に発砲したのが御子柴楓だと分かる。
「勝手に出て来て、暴れまくってんじゃねーよ」
「へぇ?俺に生意気な口を聞く奴なんて何千年ぶりだ?ガキの相手をしたい所だが、奴に呼ばれてるんでね」
「は?奴って誰の事だ」
「近いうちに分かるんじゃねーか?」
バサバサッ!!!
酒呑童子がそう言うと空から巨大な鴉が現れ、そのまま酒呑童子を背に乗せた。
ブワァァァァァッ!!!
暴風を吹き起こしながら、巨大な鴉と共に酒呑童子は鬼頭家を後にした直後、八岐大蛇に御子柴家が惨殺された事を知らされる事になる。
「智也さんっ!!!姉ちゃんは、姉ちゃんはどうなったんだ!?」
「まだ生存者がいるかどうか知らされていない。僕も京都に向かわないといけない、お前はここに残れ」
「けどっ!!!」
「智也!!!早く行くぞ!!!」
鬼頭智也に呼ばれた鬼頭智也は、最後まで御子柴楓の話を聞かずに鬼頭家を後にしてしまった。
御子柴家も鬼頭家も大きな損害を負い、後始末をする日々が何ヶ月も続いていた。
当時の御子柴楓は御子柴聖が生存しているか、それすらも知らされておらず、曖昧なまま十年を過ごしていた。
御子柴楓は御子柴聖が生きている事を信じて、今まで以上に鍛錬に力を入れ、最年少で壱級を取り、東京陰陽師学院に飛び級で通う事になった。
鬼頭智也と共に大阪から東京に移住し、壱級の人達との任務を送る日々。
御子柴楓は御子柴聖の事を一時も忘れる事はなく、御子柴楓の願いが叶う日が訪れたのだ。
ブー、ブー、ブー。
任務を終えた御子柴楓のスマホに、鬼頭智也からの着信が入る。
「もしもし、智也さん?何」
「悪いな、楓。急で申し訳ないが、学院に戻って来てくれないか?」
「はぁ?今、任務が終わった所なんだけど…。急用なの?」
「京都から御子柴聖様がいらっしゃる。お前のお姉さんだ」
鬼頭智也の言葉を聞いた御子柴楓は、その場で固まり思考が停止してしまう。
「ようやく会えるぞ、すぐに戻って来い」
「っ…、分かったっ!!!」
連絡を受けた御子柴楓は急いで学院に戻り、御子柴聖と十年ぶりに対面出来たのだった。
***
御子柴聖 十七歳
「姉ちゃんっ、本当に姉ちゃんなんだよね?」
「うん、そうだよ…。大きくなったね、楓」
「っ…、生きててくれて良かったっ」
ガバッ!!!
そう言って、楓はあたしの事を強く抱き締めた。
まるで自分の手であたしが生きているのを確かめるように。