テラーノベル
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ー注意事項ー
・この作品はwrwrd様の二次創作です。
・本人様とは関係ありません。
・検索避けに協力してください。
・腐要素はありませんが、捉え方によってはそう感じる箇所もあります。
・軍パロ、怪我要素を含みます。
◇◇◇
夜明け前の空気はひどく冷たく、湿った鉄の匂いが鼻にこびりついた。
ciは膝を抱えたまま、隣のshpの横顔を盗み見た。
敵に捕まったのは自分の判断の甘さが原因だった。
足音を立て、背後からの接近を許し、そのまま手錠をかけられ牢に押し込まれた。
そして、今もこうして頑丈な鎖で繋がれている。鎖の反対側にはshpが。
ciは何度目か分からない「ごめん」を口にした。
「……黙って」
低く短い声が返る。怒っているわけではなく、ただ切り捨てるような響き。
その声に、ciは少しだけ救われる。
責められるより、何も言わない方が楽だった。
実際、今のciは口元を殴られて切れているし、何度も何度も殴られたせいで手錠が擦れ、手首は赤く腫れていた。
敵は、shpが部隊長でciが外交官である事を知っているらしい。
つまり、情報を多く持っていて、後輩であるciは狙われるということだ。
shpは小さく俯き、静かにciの怪我を見た。
脱出は、二人の息が合わなければ無理だ。
狭い牢屋で、手錠に繋がれたまま動くには、歩調も、呼吸のタイミングすら合わせる必要がある。
幸い、shpとciは相棒であり親友である。
息はピッタリであろう。
けれども、ciの怪我は見て見ぬふりができるような怪我ではない。
腹部から滲んで見える赤色を、shpは睨みつけた。
「shp」
「なに」
「小型ナイフ持ってたやんな」
「あるけど。使いもんにならへんよ。鎖が切れるとは思えへん」
ciは、震えながら笑った。
その表情に苛立ちを感じる。
「俺の手首切り落としてくれ」
そうだと思った。お前のことだから。
shpは大きくため息を着き、隣にあるciの頭に頭をぶつけた。
「無理」
「あ、はは…やっぱ骨ってそう簡単に切り落とせんか」
折れてたらいけるかなって思ったけど、と呟く。
shpはふん、と鼻を鳴らした。
「お前はずっとバカやな」
やがて銃声が遠くから響き、味方の突入が始まった。
「あの人らが、俺らを放る訳ないやろ」
shpの声と同時に壁が崩れる。
手錠が邪魔なはずなのにshpが引く力は強く、ciはshpの腕の中に包まれた。
「やばいお前やりすぎやァ!!!!」
「ヒヒヒッ!!!こんなに威力高いとは!!」
遠くから聞きなれた声が響いてくる。
安心して咳き込み、涙が崩れだした。
「zmさんshoさん、こっちー」
「ん??あ!!いたいた!!!!」
「はよ逃げるぞ!!!!!」
牢屋が開けられ、shpは勢いよく立ち上がり、ciを抱き上げた。
ciはとうに意識を失っていたらしい。
がくんと崩れる首に、shpは息を飲む。
「行くぞー!!!!こっちやァ!!!!」
zmがキャッキャと走るのを着いていく。
shoは時折こちらの様子を伺っていた。
「お前ら…その手錠の鍵は?」
「あっ」
振り返れば、もうそこは倒壊後であった。
◇◇◇
救出の後、ciとshpは医務室のベッドに座らされた。
手首には赤く深い痕が刻まれ、腫れている。
手錠を切断しようと技術兵が工具を持ってきたが、snが首を振った。
「今外せば傷が悪化する。治療が済むまで待とっか」
「痛いん?が、我慢できるけど」
「溶断って分かる?金属の熱が皮膚に伝われば、それだけでまた傷が広がるでしょ」
snが手首の包帯を巻き直しながら言った。
「力を入れすぎてない?二人とも腕に力が入りすぎてるよ」
ciは首をすくめ、shpは「ciが気を遣いすぎるんや」とだけ答えた。
こうして、救出後も二人の手首は繋がれたままになった。
日常は不便だ。
昼食の時間。
トレーを片手で持ち、もう片方はshpの動きに合わせる。
スプーンを口に運ぶのも、相手の動きを意識しなければならない。
shpが食べ終わるのを見て、ciは何度も食べる手を止めた。
「自分のペースで食え」
「……だって」
「だってちゃうわ。俺は待つから」
短く、けれど確かに優しい声。
ciの耳の奥が熱くなる。
ciは申し訳なさで胃が痛くなりそうだった。
「俺のせいで…」と呟けば、shpはいつも通り短く言う。
「慣れろ」
その声は冷たいようだが、足並みは常にciに合わせられていた。
夜。
同じベッドに座らざるを得ない状況で、ciは眠りにつけずにいた。
手錠の鎖が、二人の間の距離を半端に縮めたまま揺れている。
「……迷惑かけてごめん」
暗闇の中、ぽつりとこぼれた声に、shpは短く笑った。
「今さらやろ。とっくに慣れた」
「え?」
「あんま変わんないよ。いつもと」
「楽しい」
それがどういう意味なのか、ciは考える間もなく、shpの体温がすぐ隣で呼吸を刻むのを感じていた。
「shp、やっぱり怒ってるやんな」
突然、寝起きで頭が回ってない時に言われた。
shpがうん?と聞き直すが、同じことを言い直すだけである。
「なんか…口調がいつもとちゃうから」
「口調?…嗚呼、そういうこと」
「怒ってんのかなって…いや、それを聞いてどうすんのって感じやけどさ」
寝癖をぴょこぴょこさせたciが目線を泳がす。
雰囲気ぶち壊しの可愛い寝癖に、思わず微笑む。
「後悔してただけ」
「後悔?な、なにを…」
「なんでそんな聞きたいんよ」
「だ、だって…嫌われてるんちゃうかって」
心配なんだよ、とciは口を尖らせる。
鼻を鳴らしたshpが、顔を背けて小さく言った。
「お前を守れんかった自分に腹が立ってたんや」
「…えっ」
「こっち見んな」
「えっ、え…俺に怒ってるんちゃうの」
「何度も言わせんな」
「shpはなんも悪くないのに」
「お前が殴られてんのを、見てるだけやったこっちの気持ち考えろ馬鹿」
耳が真っ赤になるのを見て、ciは安心したように笑った。
「shpが優しいの珍しい!」
「あんなん見せられてお前…馬鹿。馬鹿やろ」
「んふふ、shp俺の事大好きやん」
「俺の手首切り落とせとか、冗談でも言うな」
ゴツッと額にデコピンをして、shpはまた顔を背けた。
「お前も嫌われてるって不安になるとか、俺の事大好きやん」
「……ッ!?」
真っ赤に染まるciは、顔を全力で下に向けた。
お互いに顔を背け、沈黙が続く。
「おーい朝ごは……なにしてんの」
沈黙を破ったutは、その光景に困惑をするのであった。
そして、朝食の後。
朝は色々話してたせいで、忘れていた洗顔をしようと洗面所にいた。
ciが洗面台に立つと、必ず横にshpがいる。
片方の手だけで顔を洗おうとするciを、shpは見ていられないとばかりに蛇口をひねり、タオルを押し付ける。
「お前、片手でやると水跳ねまくるやん」
「仕方ないやろ!」
「仕方なくないわ!俺の腕までビショビショなんやぞ!!」
ぶつぶつ言いながらも、shpはciの前髪を乱暴に拭き上げた。
その強さに文句を言いかけて、ciは口を閉じる。
手加減してくれてるのはわかってるから。
けれども、顔を上げて鏡を見てから、ゆっくりとshpを睨む。
本当に手加減していたのか。
芸術的に立ち上がった前髪に、shpは大笑いをしているのであった。
勿論、訓練は出来ないわけで。
部隊長であるshpの号令が響くたび、隊員たちの靴音が土を叩く。
ciはそのすぐ横、shpと鎖で繋がれたまま立っていた。
金属の鎖が互いの動きに合わせてわずかに揺れ、ジャラリと軽く鳴る。
「ほら、足下げろ、足!」
shpが前方の隊員に声を飛ばし、同時にciの肩を軽く押す。
「お前も突っ立ってるだけじゃ寒いやろ、一緒に少し走る?」
「……外交官に体力訓練させるつもり?」
「連れて歩くこっちの身にもなれ」
ぶっきらぼうな口調だが、鎖が引っ張られないよう、shpの手はちゃんと加減している。
渋々走り出したciの足音が、隊員たちの列に混ざる。
息が上がると、横でshpが片手を伸ばして腕を支えてくれた。
「ほら、もうちょい。転んだら鎖ごと俺も引きずられるんやぞー」
「はいはーい」
口では素っ気なく返しつつ、支える手の温もりに気づく自分が、少しだけ恥ずかしい。
訓練が一区切りつくと、shpはciの頭をポンと軽く叩いた。
「悪くないやん。外交官にしちゃ動けるほうやろ」
「……褒めてる?」
「褒めてる。ほら、水飲みや」
差し出されたボトルを受け取ると、鎖がまた小さく鳴る。
その音が、今は不思議と心地よく感じられた。
同時に、訓練が終わった隊員たちは水分補給と簡単な談笑の時間に入った。
shpとciも、鎖で繋がれたままベンチに腰を下ろす。
「部隊長!」
訓練服姿の若い隊員が、笑いながら近づいてきた。
「ciさん、引きずって走らせてたじゃないっすか。外交官なんて場違いすぎますよ、部隊長の隣にいて平気なんすか?」
ciの口がペットボトルに触れそうになって止まる。
笑い混じりの軽口でも、彼の胸には小さく刺さった。
自分はただでさえ足を引っ張っている。
そんな思いが、また頭をもたげる。
「……」
返事をせず俯くciに、shpがちらりと目を向けた。
「おい、お前」
shpの低い声に、空気がピリッと張り詰める。
「俺の横に立たせるって決めたのは俺やけど。ciを弱いだの何だの言うなら、戦えば?分野は違えど、ciはお前なんかに負けへん」
「…えっ」
「大体、幹部でもないお前が何言ってんの。お前程度の努力じゃ追いつけねェよ」
隊員は慌てて「すんません!」と頭を下げて離れていった。
ciは目を瞬かせる。
「……そこまで怒ることないやん」
「ある。…はよ水飲め」
ぶっきらぼうな声。
小さく「ありがと」と呟くと、shpはそっぽを向いたまま、ほんのわずかに口元を緩めた。
◇◇◇
数週間後、ciの手首は完全に治り、やっと手錠は外された。
金属が外れる「カチリ」という音が、想像以上に軽く響く。
自由になった手を見下ろし、安堵となぜか胸の奥に空洞が広がる。
「ようやくやなー」
shpはそう言いながら、少しだけ鎖を持ち上げたような仕草をした。
「……やっぱりもう少し繋いどく??」
冗談めいた口調だった。
けれどciは、笑いながらもほんの一瞬だけ、本気で頷きそうになった。
とにかく、色々あった訳だが。
「…shp、一緒に昼寝しよーぜ?」
「おー。丁度俺も眠かってん」
やっぱり隣に彼が居ないと寂しくなる日が数日続いた。
おわり
コメント
7件
ciさんが自分を犠牲にするのを怒るsypさんかっこいい!なんかやっぱこの2人一緒にいると微笑ましいよね!
とても染みました😇 二人の関係が尊くて昇天しかけました こういう関係書けるの尊敬しかないです゚・:*†┏┛ 墓 ┗┓†*:・゚
お互い大好きだもんね🥲 そういう関係めっちゃ憧れる!! shpくんがciくんのために怒るの愛が溢れすぎててやばい ciくんの寝癖絶対かわいいな