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ポートマフィアのビルに乗り込んでから、もう1週間が経つ。
僕たちは、白い芥川と一緒に2人の行方を探している。
だが、一向に見つからない。
心当たりのある場所はもう何十回と回った。
それでも、手がかりすら何も掴めない状態だ。
白い芥川は、もう生気を失っている。己の惨めさと、恋人を失い、さらには浮気をされているのだから。
僕はとても胸騒ぎがしていて、芥川が気が気では無い。
あいつは体調はあまり良くないし、そもそも体が弱い。だからきっと、黒い僕なら芥川を抑え込むのなんて簡単なんじゃないかと思っている。
どうしよう。
僕のせいで芥川に何かあったら。
命を落としている可能性だって十分に考えられる。
辛い。顔を見たい。声を聞きたい。触れたい。
「ー会いたい。」
僕は咄嗟に口を押えた。
思わず声に出てしまったのだ。
「…ごめんなさい。僕のせいです。あれだけ場所がわかるなどと言ったのに、これだけ探しても見つからない。本当に、ごめんなさい。」
白い芥川はこちらを向いて、今にも泣きそうな顔で深くお辞儀をした。
白い芥川の方が辛いんだ。
白い芥川に任せっぱなしではダメだ。僕も頑張らなくちゃいけない。
「ねぇ。もう少し、心当たりのある場所はない?」
「…もう少し、ですか?」
「うん。たとえ海外だろうと、地下だろうと、海中だろうと、空中だろうと僕は絶対に探し出さなきゃいけないんだ。」
「…そうですよね。僕、もう少し振り絞ってみます。」
そうして僕らは芥川奪還に向けて捜索を始めた。
初めは普通に目撃情報などを集めるべく、花袋さんに協力をお願いした。
その次は、安吾さんに協力をお願いした。
他にも、ポートマフィアの黒蜥蜴や、嫌だったけどフィッツ・ジェラルドにもお願いした。
その人たちに捜査を手伝ってもらいつつ、僕らは色々なところを転々とさまよった
それから1ヶ月が経ってしまった。
頑張って探したが、全員が首を横に振ってしまった。
最後に、僕らはしぶしぶ乱歩さんにお願いすることにした。
何故しぶしぶなのかって?
それは、白い芥川が『乱歩』という度に発作を起こし、猛烈に拒んでいたからだ。
彼らの世界の乱歩さんがトラウマなのだと言う。
白い芥川は、目を合わさないように必死で僕の背中にひしひしとしがみついていた。
「…乱歩さん。どうしてもお願いしたいことがありまして…」
「いいよ。」
「ありがとうございます!それで、それが…」
「わかってる。芥川龍之介のことだろう?あいつなら…此処辺りかな。」
「え、そこって…」
乱歩さんは地図を取りだし、スっと一点を指さした。
そこは…
東京湾のど真ん中
だった。
「な、何故そんなところに!?」
「…そこからは面白くないからいやー。」
「ら、乱歩さん…」
相変わらずの自己中心的な発言を聞いて、少し嘘だろ、と思ってしまう。
「でも、本当にありがとうございます!!」
乱歩さんが急に表情を険しくした。
「逢いに行くなら、必ず油断するなよ。相手は多分、いや必ず、本気の心を持っている。簡単には折れないだろう。」
「それでも…それでも大切な人なので、助けないと。」
「そっか。じゃあ敦、後で駄菓子1000円分持ってきてね。」
「了解です。」
じゃぁ〜ねぇ〜。と手を振る乱歩さんを背に、僕たちは決戦場に向かう。
待ってろよ、黒い僕。
さぁ、今度こそ始まる。僕らの決戦だ。