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ケットはパーティーが終わる最後までいろいろなことを気遣いながら動き回っていた。
ゲストであるクマやゴリラには手伝いの報酬も含めて、いくつかの手土産を渡した上で、今後も定期的に贈り物をする予定で妥結した。場合によってはアルから得られる樹海に関する有益な情報や世界樹の恩恵も少し加味する必要がある。
「ニャー」
パーティー中に働き詰めにさせていた妖精たちを労い、感謝の意を示し、今後のシフトの融通も考えることを約束する。
片付けもざっとは妖精たちと一緒に終わらせて、最後は自分で点検する。それも終わった頃には少し残ってしまった料理をつまんで、ホッと一息を吐いていた。
「みんニャ、楽しそうでよかったニャ」
ケットはいつもそう振り返って満足していた。ゲストのクマやゴリラ、ムツキやユウはもちろんのこと、ナジュミネ、リゥパ、クー、妖精たちが見せていた笑顔を思い出し、彼は顔が嬉しそうに綻んでしまう。
「お疲れ」
「お疲れ様ですね。またたび持ってきましたよ」
ケットの前に、クーとアルが現れる。アルはパーティーに参加できなかったものの樹海の警備が終わって真っ直ぐ戻ってきたようだ。一方のクーはユウを部屋に送ってから少し話し相手をした後にパーティー会場へ戻ってきたようだ。まだ頭にはリボンがついたままである。
「クー、アル、お疲れ様ニャ。ま、またたび! もう匂いだけでたまらニャいニャ」
ケットはアルから葉っぱ付きのまたたびの枝を急いで受け取る。先ほどとは違う笑顔でまたたびに頬ずりをして喜んでいる。
「いつも大変だな」
クーはぼそりと呟く。ケットは些細な一言も聞き逃さずにその言葉の答えを探す。
「ニャー……ん。無理させてニャいかニャ。みんニャ、嫌じゃニャければいいニャ」
ケットがうんうん唸り始める。
「違う。お前がだよ」
「ニャッ? オイラ?」
ケットはクーの言葉があまりにも予想外だったのか、素っ頓狂な声を上げてしまう。
「クーの言う通りです。ケットは頑張り過ぎるところがありますからね」
「オイラはご主人の魔力がある限り、無限に働けるニャ。疲れ知らずニャ」
「……はあ。そうじゃない」
ケットがグッと力強い感じを表現してみると、クーは軽い溜め息を吐く。
「ニャ?」
「体力も気力も仮に無限だとしても、他者への気遣いやそれによるエネルギー消費は魔力じゃ補えませんよ」
アルはクーの言いたいことを補足して代弁している。クーもアルもケットのことが心配なようだ。
「そう。お前はどうも不格好だ」
「そこは不器用でいいでしょうに」
「不器用もそうだが、なんだか不格好だ」
「散々に言われている気がするニャ」
「それだけ、私もクーも気になっているってことですよ」
ケットが肩を落とすような仕草をすると、アルがポンポンと肩を叩く。クーは大きな欠伸をし始める。
「……オイラは忙しくしていたいニャ。日々を忙しくすることで気にしニャくていいこともいっぱいあるニャ」
「ふぁふ……ほらな。不格好だろ?」
「そうみたいですね」
少し思うところがある素振りを見せるケットに対して、クーもアルも意に介していない様子だった。はいはい、といつものことだと言わんばかりに流している。
「ニャんニャ! クーもアルもひどいニャ。喧嘩ニャら買うニャ! オイラの光速ネコパンチの威力を忘れたかニャ?」
ケットは立ち上がって、虚空に向かって、凄まじいスピードのネコパンチを繰り出している。光速ほどはなくとも、高速なのは間違いなかった。
「まさか。それは遠慮願いたいですね」
「お前と戦うといろいろと面倒だからな」
「どっちにしろ、散々ニャ……」
クーもアルもやはり、軽く流してしまう。しかし、その空気に不穏さはなく、むしろ、直後にドッと全員が笑い始める。彼らだけの特有の雰囲気であり、これはこのメンバーだから成立する会話の流れでもあった。
「まあ、いつでも話しくらいはしてくれ。自分だけで抱えるのはやめろ。俺たちは腐れ縁だろ」
「そこは親友でいいじゃないですか」
「……ふん。腐れ縁で充分だ」
「クーも素直じゃニャいニャ」
クーは鼻を鳴らして、腐れ縁を強調する。ケットもアルも嬉しそうな表情になる。
「俺らは前からこんなもんだ。変わらんさ」
「そうですね。こんな良い時間なら変わらないことを望むばかりです」
「間違いニャいニャ。さて、そろそろ次は夕方の支度ニャ」
一頻り笑った後、ケットはそう呟いて家の方へと向かおうとする。
「無理はするなよ」
「ありがとニャ」
クーとアルもケットについていく形で家の方へと向かう。