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せな⚡️
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「海外に引っ越すことになった」
お見舞いを始めて3週間が経った頃、親から急に海外への引っ越しを告げられる。
ほんとに突然。
何の前触れも、前置きもなく。
部屋に呼ばれて、一言目がこれだ。
引っ越すなんて素振り、1㎜も見なかったし知らなかった。
父親の仕事の都合で、なんてよくある理由。
まさか、自分が体験するとは。
そんなのんきな考えが浮かんでは消えた。
「急で済まない、らん。あと5日後に飛行機に乗るから、荷物をまとめてくれ。学校に連絡はもう入れた 」
こういう時だけ仕事が早い。
「そんな……」
タイミングが悪い。最悪だ。
なんで今なんだよ。ついてない。
こっちには、友達もいるしこさめもいる。
……前までなら、こさめと別れるのをお互いに悲しみ合うはずなのに。
でも、今、こさめには記憶がない。覚えてない。
―――なら、いいんじゃないか……?
ちょうどいいんじゃないか?
忘れてるなら、辛いのは、寂しいのは、悲しいのは、俺だけで済む。
そんな自分のエゴで溢れた、最悪な考えがよぎった。
「すまないが、早めに準備してくれ」
「……わかったよ……」
自分の部屋に戻って、ベッドに倒れ込むと同時に、涙があふれてきた。
「嫌だなぁ……っ。こさをあんな目に合わせて、記憶まで奪って、俺は海外に行く?」
「ふざけんなっ!……なんで…今なの?」
無力さと残酷な運命に押しつぶされ、部屋の隅で泣き続けるしかなかった。
それから数日間、らんは病室に行けなかった。
会ったら悲しくなるから。涙がこぼれてしまうから。
自分の不安を、何も知らないこさめに押し付けてしまいそうだから。
だから、会いにはいけない。
一方、病室のベッドの上でこさめは奇妙な「焦燥感」に駆られていた。
毎日、夕方5時になると必ず扉を開けて入ってきた、あの先輩。
どこか寂しそうな瞳でメロンパンを買ってきてくれて、
優しく、一生懸命にこさめの側に居てくれた先輩。
その足音が、3日も、4日も、途絶えている。
「……うーん。なんであの人来ないんやろー?
寂しいな……。来なくてもいいって言っちゃったんはこさめの方なんやけどさ……」
病室の窓から外を見ると、桜はすっかり散り、緑の葉をつけていた。
記憶はない。
以前の関係も分からない。
なのに、胸の奥がありえないほど冷たくて、ざわざわと波立って、同仕様もなく寂しくなる。
夕方5時のチャイムが鳴ると、こさめの目線は無意識に病室の扉をジッと見つめてしまう。
そんな自分に戸惑っていた。
何も言うことない。
では、おつゆは〜
コメント
1件
うわあ……第4話、胸にくるなあ。らんの「忘れてるなら俺だけで済む」って自己犠牲のエゴ、めちゃくちゃ痛いし、こさめの無意識の焦燥感も切ない。記憶がなくても心は覚えてるみたいで、夕方5時に扉を見つめる描写が刺さった。引っ越しと記憶喪失、二重の別れが重なるタイミングの悪さに泣ける。続きが気になる!