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「…どういう、こと?」
その声を零したのは、目の前の「彼」だった。
『オレは、未来から来た王馬小吉なんだよ!』
と笑ってみせると、彼は言った。
「…なるほど、だから背が…」
『にしし、大きいでしょ?』
嗚呼。自分と話すなんて不思議な体験だ。。
自分にも嘘を吐く。
…彼には気付かれないだろう。
「オレ」が「僕」なのに。
「…」
「…」
「…まぁ、気になる所は何個かあるけど…まぁ分かったよ。」
彼は、意外と攻めてこなかった。まだ探偵として未熟だったしねー!
「…で、なんでキミはここに居るの?」
…前言撤回。そんなこと無かった。
その瞬間―、
「ぴーんぽーんぱーんぽーん…!!」
「連絡事項がありまーす!体育館に集合してくださーい!
」
『…えー、今…??』
「連絡事項…?」
……一体何であろうか。
ーーー体育館ーーー
体育館に行くと、あの耳障りな声 がした。
「はー、もうみんな、集まるのが遅いよ!」
何様なのだろうか、1人で玉座に腰掛けるモノクマが居た。
どうせそこを聞いてもクマ様ですけど?とでも言われて腹が立つだけだと思うので、特になにも言わずに放置しておいた。
『…つっかれたー…』
「裏庭からここって地味に遠いよね……」
「…所で、なんで王馬くんが2人いるの?ゴ、ゴン太の見間違いかな…?! 」
…は?
「…あれ?あれあれあれ?オレじゃーん!」
……どういう事だ?
『…ちょっと……待って……?』
なんで……居るの!?
「こ、これが連絡事項でーす!!」
冷や汗をかいたモノクマが叫ぶ。
「この背の高い王馬くんはボクも誰か分かりませーん!!
視聴率ダダ下がりだよぉ!! 」
「な、なんで王馬が2人……!?」
「入間さん、どういうこと !?」
「ひぐぅッ…俺様は何もしてねぇよぉ……っ」
「ところで目の前にいるオレ、なにも言わないんだけど……?」
……目の前に居る彼は、本当に彼なのだろうか。
僕が都合よく勘違いしただけなのではないか。
嗚呼きっとそうだ。モノクマが態々そんな事する訳ないか。
じゃあ……
『キミは、誰……?』
「……?オレは王馬小吉だよー?超高校級の総統なんだー。 」
「ちょ、ちょっと待ってよ!2人の王馬くん!!
しかも、背の高い方の王馬くんは誰なの!?」
… 確かに、目の前に居る『彼』は『王馬小吉』だ。
でも、あの時、プレス機で潰された、「彼」は?
「彼」が今の『彼』なのか?いや、違う。「彼」の死体…いや、プレス機を見ただろ?
落ち着け、僕。『彼』は、「彼」じゃないんだ。
「王馬小吉」は、あの時、このクソみたいなコロシアイゲームで死んだんだ。
じゃあ、僕……いや、オレのすべき事は……
『……奇遇だね!オレも王馬小吉だよ!
オレは未来から来たんだー。だから、背も高いでしょ?』
疑われるな。自分を自分の嘘で騙せ。
「……ふーん?」
『にしし……自分と話すなんて中々無いよねー!
始めての体験だよー!ホントだよ!』
あぁ。懐かしい。彼でなくても、ここに居る『王馬小吉』は本物だ。
「…あれ、背の高い方の王馬くん、泣いてないっすか?」
「ほ、ほんとだ!ゴン太馬鹿だけど、王馬くんが泣いて るのは見えるよ!」
泣いている……?僕が?
頬に指を滑らせると、確かに僕の瞳から涙が出ていた。
…いや、僕の瞳ではないな。
いまでは、僕の瞳は、僕の月の色の瞳じゃない。
彼の、アメジストの様な紫色だ。
…自分でも皮肉たっぷりな言葉だな……。
『……なんで涙が出てるんだろうねー!
オレ、何もしてないのになー!』
無理に笑ったせいか、口角が痛い。
「な、なんか背の高い王馬くん、地味に様子がおかしいよ?! 」
『にしし…白銀ちゃん、そんなことないよ?』
…わざとらしいな。
でも流石に今この状況で死ねクソヤローなんて叫べない。
「ちょっと!なにほのぼのしてるの!?
本当に誰!?」
モノクマはもう勘づいてるみたいだが、1つの世界線に2人の同一人物が居るのはおかしい、と思っているのだろう。
僕が『王馬小吉』じゃないことはわかっているが、僕が『最原終一』だったことは分からないんだろうな。
あぁ。あれだけ憎らしかった相手が、慌てふためいている。
……彼は、こんな気分だったのかな…ちょっと面白い。
「……え、えーい!」
…なんか再生し始めたぞ。あのクマ。
しかも僕のモノパッドだけで――
『ねこふんじゃった 赤松楓処刑執行』
…僕は秒でモノパッドの電源を落とそうとした。
でも、身体が動かない。『見ろ』と本能が告げている。
…モノキッドの生首が転がった所で、動画は終了した。
「…ど、どう!?何か心当たり、ない!?」
『あ…あぁ…』
「…?もう1人のオレ、どうしたのー?」
『あああああああああああああああ!!!!!』
「お、王馬くんが発狂しました! 」
「うるせーぞツルショタァ!! 」
「お、王馬くん!?」
『赤松さん!!赤松さんが!!
僕のせいで!!僕がちゃんと推理しなかったせいで!!!僕が床のへこみを見つけてたら!!
僕が赤松さんにあんなこと言わなければ!!』
「…僕?しかも、赤松さんって…」
「どうしたの王馬くん…?なんか、様子が…」
『…………』
「…………」
『…にしし…驚いた?』
「「「「「…えっ?」」」」」
『嘘だよー!オレはあんなのを見てびっくりしないよ!
でもなんか赤松ちゃんに似てたよね!…どういうこと?』
「う、嘘かよ…」
「ご、53回目のも違うの!?」
『ッハ!なんだと思ってんの?オレのことを!
ほんっと馬鹿だよねー!』
「…プレス機」
ピタッ…
「小吉、 プレス機って言われただけでどうしたのー?」
『…あぁ、ごめん、何も聞いてなかったよー!会話にプレス機なんて言うの、モノクマだけだよー!』
「…えい」
「ちょっと、おとうちゃん、それ全画面だよ!?」
「いいんだよおら!!これでも見とけ!!」
『…最原ちゃん、やっほー!…どうしたの?』
『…いや、何も……って、何その傷!?』
『…え? あー。これ?痛くないよ!』
『…嘘だよね。ちょっと来て。』
『えっ、ちょっと…』
『…意外と包帯巻くの、上手いね。最原ちゃん。』
『… ありがとう。あんまり左手、動かさないでね』
『…オレ、こうやって怪我治してもらったの、はじめてだ
なー。』
『そ、そうなの!?』
『なんて、嘘だよ。 …ありがとう、最原ちゃん。 』
『…ーッ!!どういたしまして!!』
『あはは、真っ赤になってるー』
『うるさいよ、王馬くん!!』
「…ありゃ、間違えちった」
「何してるのおとうちゃーん!!」
「というかコレ…オレ?やば。最原ちゃんって…そこの帽子かけてる子?」
『…あぁ。』
「え?なに?どうしたオレ?」
「なんて言ったっすか?」
『懐かしい、なぁ…』
「いよし!確定演出ー!!流すビデオ間違えちったけど結果オーライ!!」
「モノクマ、どういうことー?なんで小吉の映像がでたのー?
どうしてー?どうしてー?」
「うぷぷ……そこにいるのは…」
『…王馬小吉だよ。』
「え?いやいや…だから」
『王馬小吉だよ。オレは。
…彼と約束したんだ。
…だから、オレは王馬小吉だよ。』
「ちょっと、何言ってんの?キミは、最原くんでしょ?」
「えっ?」
「最原くん…なんすか?」
「めんどい…帰りたいぞ…」
「生命の神秘を感じるヨ……!! 」
『……』
「ねー、もうオレ帰りt」
急に、王馬くんが倒れた。
…殴られた?みたいに。
「王馬くん!?」
「…………」
「……
っあー、いったた!!大丈夫だよー!」
なにか、違う。先程までの彼じゃない。
……もしかして
「にしし…やっほー、最原ちゃん。久しぶり。オレだよ!」