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「なぁ、元カノってどんなやつ?」
「えっ?」
ご飯も風呂もすませて後は寝るだけとなった夜の10時。
ソファの上でダラダラしていると、目の前に座っていたシャークんがそんなことを言い出した。
え、元カノ…?
元カノってあの?
俺が困惑していると、シャークんは少し気まずそうに目を逸らした。
「居たことあるんだろ」
「まあ…そりゃありますケド」
確かに、元カノはいた。
中学のときにチョロっと付き合ったくらいの関係だけど。
そういえば、「優しすぎてつまんない」って言われて振られた記憶がある。…今考えれば意味分かんねぇなアレ。
俺が思い出に浸っていると、痺れを切らしたシャークんがソファに乗り上げてきた。
「なんで知りたいの」
俺の質問にシャークんは暫し黙ったあと、小さな声を出した。
「…嫉妬するのか気になった」
「え、嫉妬?だれが?」
「俺が」
「…どゆこと?」
「…」
…シャークんによれば、俺が元カノの話をして自分自身がどんな気持ちになるのか気になったらしい。
元はと言えば、シャークんとのこの関係も、俺から言い出して始まったものだ。
シャークんも善意で付き合ってくれてるのかな、なんて思ったり思わなかったり。
「どんな奴?」
「どんな奴って、ねぇ…」
シャークんの言葉に頭を悩ませる。
もう何年も前の事だし、顔もうろ覚えだ。だから、思いつく限りの情報を口に出す。
「いい子…だったかな。お菓子作りが上手で、よくクッキーとか貰ってた」
「ふーん」
「なんかふわふわしててフリルの服?とかよく着てたな。話してて楽しかった」
「可愛い?」
「うん、そりゃね」
シャークんの質問に俺も淡々と答えていく。
どれくらい付き合ったのかだの、キスはしたのかだの。
尋問かってくらい緊迫した空気の中、質疑応答を繰り返していると、やがて満足したのかシャークんが床に座り直した。
どうやら、嫉妬している様子は見られない。それどころか何の感情も抱いていなさそうだ。
「あとは?」
そんなシャークんの様子を見てなんか悔しくなって、ちょっと意地悪してやろうと思った。
「…巨乳だった」
俺の言葉にシャークんの体がピタッと固まる。流石にこういう話は苦手か。
「ふーん」
俺の言葉に、シャークんはそれだけいうと、テーブル上の水を飲んだ。
「どうだった?」
「なにが」
「嫉妬した?」
「全く」
まぁ、ですよね。
嫉妬とかしなそうだもんな。
シャークんの様子は特に変わった感じはせず、本当に何にも感じなかったようだ。
分かりきっていたことだけど、まぁ少し悲しかったり。
そんな自身の気持ちを見ないフリして、俺はアイスを食べに冷蔵庫へ向かった。
「シャークん、ご飯食べいかない?」
時は流れて1ヶ月後の金曜日の夜。
華金の夜ということもあって、久しぶりにシャークんとご飯を食べに行こうと声をかけた。
でも、返ってきたシャークんの言葉は意外なものだった。
「え、ご飯…?」
「え、だめ?」
「いやダメっていうか…」
シャークんが気まずそうに目をキョロキョロとさせる。
「…あ!飲み会!今日飲み会行くからっ…!」
シャークんは思い出したかのようにそういうと、ハンガーにかかっていたジャケットをひったくった。
「飲み会?誰と…?」
「え、えっと…き、きりやん!」
机にあった財布やらスマホがポケットの中に仕舞われていく。
「ごめん、もう行くわっ…」
あっという間に外行きの格好になったシャークんは、それだけいうと逃げるように部屋を出ていった。
「…」
ガチャン、と音がして、部屋に静寂が訪れる。
誰もいなくなった部屋を見つめる。
…シャークんがこんな感じに余所余所しくなったのは今に始まったことじゃない。
少し前くらいからだろうか、シャークんが俺を避けるようになった。
体を触ろうとしても避けられるし、どこか遊びに行こうと誘ってもさっきみたいに断られてしまう。
「俺なんかしたかなぁ…」
そう言って頭を掻くが、心当たりはないので、ため息を吐くことしかできない。
ふと窓際を見ると、サボテンの隣に飾られた写真が目に入った。一緒にボルダリングに行った時に撮った写真だ。
仲良さそうに映る2人を見て苦笑する。
やっぱり、シャークん冷めちゃってるのかなぁ…なんて。
誰もいない静かな空間がネガティブな思考を加速させた。
写真に映るのは子供みたいな笑顔を浮かべたシャークん。
付き合い始めてもう1年が経とうとしている。
好きじゃない奴と付き合うにしては、長く持ってくれた方なのかもしれない。
現在の時刻は19時。
ご飯を食べて、それからゆっくり考えよう。
そう決めて、手の中の写真をそっとおいた。
24時、リビングにて。
シャークんと話し合おうと思って待っていたけど中々帰ってこない。
これは酔いつぶれコースか。話し合いをしたかったのにこれじゃできそうにないな。
本日何度目か分からないため息を吐いて、テレビの画面を消す。
諦めて寝ようとソファを立ち上がったとき。
ガチャッ
「!」
ドアを開ける音がリビングに響いた。
よかった、帰ってきてくれた。
ホッと息を吐きながら玄関へ向かう。
「おかえり、シャークん…」
「え?」
玄関に立っていた人物を見て目を疑った。
「あ、え…?」
玄関に立っているのは酔いつぶれたシャークん。
そして、
「え、…?」
そんなシャークんに肩を貸している若い女性だった。
「シャークんさん、ひとり暮らしのはずじゃ…」
女性が困惑しながら俺の顔を見る。
「ど、どなたですか…?」
フリルのついた小綺麗な服に、可愛らしくリボンで纏められた長い巻き髪。
女がつけているであろう香水の匂いが鼻をさした。
どなたですか?は俺のセリフなんだけどな。
「…同居人です。それより運んできてもらっておいて申し訳ないんですが、どうやって鍵を開けたんです?」
「ぽ、ポケットの中に合鍵があったのでそれを使って…」
「インターホンは?」
「ひ、ひとり暮らしと聞いていたので…」
「誰から?」
「シャークんさんです…」
「へぇ…」
ひとり暮らしねぇ…
女に体重を預けてるシャークんに目を向ける。
寝ているせいか、ピクリとも動かない。
「…それ、貰いますよ」
「え、あ、はい…」
女からシャークんを受け取る。
シャークんの上着から女物の香水して、その匂いに顔を顰めた。
「重かったでしょ。最近鍛えてるから体重増えたんですよこの人」
そう言って、何も喋らないシャークんを抱き寄せる。
「あ、いえ…」
女の視線がシャークんに向けられる。
「…もしかして、シャークんのこと狙ってました?」
「えっ…?」
「すみませんね、この子俺の物なんで」
「は、」
シャークんの財布から千円札を数枚取り出し、女に押し付ける。
「これタクシー代です、送ってくれてどうもありがとうございました」
「ちょっ!」
何か言いたげな女を無視して、ドアを閉めた。
ガチャンと音がして、外部からの音が遮断される。
ドアに鍵をかけて、後ろを振り返れば、廊下にゴロンと寝っ転がっているシャークんが目に入った。
「んん…」
頬に手を寄せれば、すりすりと赤く染った頬っぺたを擦り付けてくる。
「シャークんさん、起きてくださ~い」
そう言って、体を揺らすとシャークんが薄く瞼を開けた。
寝ぼけ眼が俺を捉える。
「きん、とき…?」
「きんときさんですよ~」
乱れたシャークんの髪を手櫛で整える。
寝起きのシャークんの目にいつものような鋭さはなく、ぽやぽやと柔らかい雰囲気を纏っていた。
そんな様子を愛おしく思うと同時に、先程の女との会話を思い出して顬の部分が音を立てるのを感じる。
「あのねシャークんさん」
「んん…?」
「俺も男よ?あんなに密着してるのは流石に見逃せないわけ」
「あ、…」
「…なんでひとり暮らしって嘘ついちゃったの?」
脂肪の少ないスっとした頬を撫でる。
「シャークんって、俺のこと好きじゃない?」
俺の言葉に、シャークんの目がだんだん開いていく。
少し潤んだ深い緑色の瞳と目が合った。
「な、んで…」
シャークんの小さな口の端から言葉が溢れる。
酒を飲んだあとのせいか、いつもより声が枯れていた。
「シャークんが好きじゃないなら。俺、やめてもいいよ」
そう言って笑うと、胸の奥がズキンと痛んだ。
やっぱりシャークんのこと好きなんだなって再認識して心の中で苦笑する。
シャークんの頬に触れていた手を離したとき。
グイッと腕を引っ張られた。
「うわっ…」
視界が回転して、背中に痛みが走る。
気づけば、視界に天井が映っていた。
目の前にシャークんの顔が見える。
「なんでっ…!」
髪に隠れて、シャークんの表情が上手く読み取れない。
掴まれたシャツの襟がグシャッと音を立てた。
「…俺のこと好きじゃないんでしょ?」
「んなこと言ってない…!」
「…あんだけ女の子に嘘ついといて?浮気するつもりだったんだもんね」
シャークんの言葉にカチンときて、冷たくそう言い返してしまう。
俺の返答にシャークんは子供のように傷ついた顔をした。
やがて、俺のシャツの襟をゆっくりと離す。
「…俺だって、」
「え?」
「俺だって分かんねぇよっ…!」
ポタポタと水滴が俺の頬にかかる。
照明の光に照らされ、頬の水滴がキラキラと輝いていた。
shk視点
きんときの元カノの話聞いたとき。
当初は何も思わなかった。
何も思わなかったのに。
その日の夜。
夢にその女が出てきた。
会ったこともないからただのイメージだけど、きんときと一緒に歩いていて、2人とも楽しそうに笑ってた。
俺とは正反対の属性。
そんな女と歩いてるきんときを想像すると、何だかイライラした。
その日から、何かとあの女を思い出すようになった。
可愛かった、お菓子作りが上手かった、フリルのついた服を着ていた、巨乳だった。
どれも、俺には当てはまらない。
可愛くないし、料理は苦手だし、服は興味ないし、胸も…ガリガリだからない。
あの女に、勝てるところはひとつもない。
毎日それを実感していって、胸がムカムカした。
俺は確かに嫉妬していた。
きんときは俺のこと好きじゃないんじゃないか。本当は、あの女のような奴がタイプなのでないか。
ある日から、そう思うようになった。
それからきんときの行動すべてが、俺への善意による行動のように感じた。
きんときの行動が嘘にしか見えなくなって、避けるようになった。
そんな日々を1ヶ月ほど続けていたとき。
咄嗟に飲み会と嘘をついて家を出ていってしまって、行く宛てもなく街を彷徨いていた。そしたら、たまたま仕事仲間の女性と出会ったからそのまま飲みに行くことになった。
その女性はきんときの元カノの情報にそっくりで、見ていると気分が落ち込んだ。
時刻は23時。飲み始めて2時間が経っている。酒が回ってくると、女性が俺の肩に寄りかかってきた。
一瞬きんときの顔がよぎった。でも、直ぐに頭を振る。
いつもだったら拒否するけど、どうでもよくなった。
きんときも、俺と同じように嫉妬してしまえばいい。俺と同じ気持ちになればいいんだ。
だから、女性にひとり暮らしだと嘘をついた。
「お前が…お前がっ、元カノこと可愛いっていうからぁ…!!」
意図せず涙がきんときに落ちる。
こんなことで泣くなんて女々すぎてダサい。
そう思うのに、涙は止まってくれなかった。
「…そういうことね」
下からきんときがフフッと笑う声が聞こえる。
何笑ってんだ、こっちは真剣なのに。
「俺、シャークんのこと好きだよ」
きんときの腕が俺の方に伸びる。
そのまま、きんときの体に倒れ込むような形で抱き寄せられた。
「嫉妬してくれてたのね。嬉しい」
「しっ、嫉妬っていうかっ…!」
「ふふ、」
言い返そうと思ったけど、頭をポンポンと撫でられて、子供っぽくて嫌だったけど落ち着くから、そのままきんときの胸に頭を置いた。
「…俺、どこも可愛くない」
「なんで?可愛いよ」
「っ…!意味わからん…」
「顔赤いね、かわいい」
「うるさいっ…!」
そう言って胸を叩くが、きんときはニヤニヤしたまま俺の頭を撫でた。
「…まぁ避けられたのはちょっと傷ついたけどね」
「……ごめん」
「いーよ別に。もう気にしてない」
「あ、でもさ」
顔を上げると、照明の光を吸収している綺麗な青色の瞳と目が合った。
「なに」
「知らん女の匂いがするのは気になるなぁ」
きんときが俺の髪の毛を撫でる。
口元は笑っているけど目は笑っていない。
嫌な予感がした。
「いや…」
「ね、シャークん」
「ベッド行こっか」
「あっ♡あふっ…♡♡んん♡♡」
「体熱いね」
「さけ、♡のんだっ♡からぁ♡♡」
ベッドに運ばれるなり、口を塞がれ服の下から手が入ってくる。
「服脱いで?女の匂いするのヤダ」
「…ぬがして」
俺がそう言うと、きんときは一瞬固まったあとニヤッと口角を上げた。
「可愛いねお前」
きんときの細長い指が俺の服を1枚1枚丁寧に脱がしていく。
月明かりがきんときの顔を照らす。
優しげな雰囲気を纏ったその顔に安心して、目を閉じた。
「あっ♡あっ♡あっ♡♡」
「気持ちい?」
「んあ♡♡あひ♡♡きもちっ♡♡♡」
尽くすばかりのいつものセックスとは違い、少し自分勝手なセックス。
欲に素直でもきんときは俺を気遣ってくれて、気づけば脳みそはトロトロに蕩けていた。
「ふぁっ♡あっ♡あぁ♡♡」
「…シャークんさ、」
「な、に♡♡あっ♡♡♡んあっ♡♡♡」
「自分のこと可愛くないっていうけど、」
「んんっ♡♡あっ♡♡んひ♡♡♡」
「俺はめちゃくちゃ可愛いと思うよ?」
「っ♡♡はっ♡ぁ…!?♡♡」
目を薄らと開ければ、優しく微笑むきんときと目が合う。
「どこ、が♡♡ひ、♡♡♡」
「んー、たとえばね、」
きんときの手が俺の腰を撫でる。
「うひゃっ♡♡!?あっ♡♡やめっ♡♡♡」
「くすぐったがりなところとか」
「やへ♡♡やめへっ♡♡♡」
「耳弱いところとか」
「んんっ♡♡んあっ♡♡みみ、だめっ…♡♡♡」
「すぐ顔トロトロになっちゃうとこも好きだよ」
「あ゛っ♡♡ぁがっ♡♡♡ひぃ♡♡♡」
恥ずかしくて顔を隠そうとするが、きんときによって手を捕まえられる。
するりと掴まれて、恋人繋ぎにされた。
俺がびっくりしていると、一気にナカのモノを押し込められる。
「んっ♡♡お゛ぉ♡♡♡ほ♡♡♡あ゛っ♡♡」
「快楽耐性ザコなとこもすき♡」
「あ、へぇ♡♡あっ♡♡お゛ぉ…♡♡♡」
「アヘ顔かわいい、えっちなことだいすきだもんね♡」
「あ゛っ♡へ♡♡しゅ、き♡♡♡ぉ゛あっ♡♡♡」
動きが激しくなり、口からは言葉にもならない声が出ていく。
汚い声で恥ずかしいのに、体に力が入らない。
「お゛っ♡♡♡あぁ゛♡♡♡やぁ゛♡♡♡♡」
「…ごめん、イクっ、」
「あぁ♡♡んっ♡おッ♡♡♡んお゛っ♡あ♡♡♡」
繋がれた手がギュウっと握られる。
「あっ♡♡あ゛っ♡♡♡」
「っ、だいすきだよ、」
「ひっ♡♡♡ひぅ♡♡あぁっ♡♡♡」
ナカに熱いものが広がっていく。
その感覚に満足するのもつかの間。
きんときの動きがまた激しくなる。
「はっ♡♡はぁ♡♡♡んあっ♡♡♡♡」
満足してなそうなきんときの顔。
いつも余裕なきんときの顔が歪んでるのを見て、俺も口角が上がる。
「お゛っ♡♡♡あっ♡♡、ぁ♡♡♡」
その顔を近くで拝んでやろうと、きんときに向かって腕を伸ばした。
コメント
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淡々と出てくる恋人の元カノの話しで平常心抱いてるはずのshkが暴走してぐちゃぐちゃになるの最高でした。 サボテンもプレゼント企画を思い出すし、ちゃんと聞いてよく考えてイラついて不安になって流れと設定が本当に大好きです。 余裕なくて、自分の欲のままに動くけどやっぱり少し気遣ってくれるknと快楽耐性なくてぐしゃぐしゃshk最高でした。 いつも素敵な話をありがとうございます!🥲︎