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柊「……笠井?」
『……救急車、だ、けは辞めッ、て、くだ、さ…』
柊「…薬は?」
……そりゃあ、無い。
先生の腕を力無い手で掴みながら、俺は下を向いた。
柊「その調子じゃ病院、1度も行ってないな?」
先生は俺に確認するように言って、俺の背中を摩ってくれる。
それに対して、俺はゆっくりと頷いた。
怖い。恐い、コワイ。
人の感性というものは時に人を狂わせる。
同情を求め、批判をすれば怖い目に遭う。
背筋が一気に冷えて、体温が下がったような気がした。
冷や汗が俺の頬を伝って、服に落ち、服に沁みる。
精神的な痛みも、肉体的な痛みも、何方も良いものとは言えない。
けれど、どちらかと言えば、精神的な痛みの方が嫌いだ。
“他人が気づけないから”だ。
そこまで、思っていたら、先生が口を開く。
柊「……親御さんは?いつも思ってたけど、見たことが無い。三者面談だって、」
言葉を続けようとした先生を制する。
『…縁、を、切ってます。』
先生は酷く驚いた顔をした。
今の俺には演技にしか見えなくって、気を使わせているようにしか見えない。
少し、そこまで言って見たら痛みは引いた。
知ってた、知ってたよ。
ストレス性なことくらい。
あたまがいたい。
血圧でも上がったのだろう。
俯いたままの俺を見て、また先生は言う。
柊「……笠井、病院は嫌い…だろうな。」
分かってて、言うのには理由は果たしてあるのだろうか。
『……嫌い、ですよ。大っ嫌いです。』
俺は目を細めて先生をしっかりと見た。