Eliotの部屋。
noobがゲームの攻略本見せてもらいに来て、ふたりは床に並んで座り込んでいた。
「ここ、どうやって倒すの?」
noobが紙を指差す。
「これ? んー……こうかな」
Eliotが身を乗り出してきて、noobの手に自分の手を重ねる。
その瞬間――
**ぴたり。**
時間が止まったみたいに、距離が近い。
いや、近すぎる。
Eliotは説明するつもりで顔を寄せただけのはずなのに、
ふと気づいたら、ほんの数センチの距離でnoobの横顔を見つめてしまっていた。
「……あれ?近っ……」
Eliotが小声でつぶやく。
でも、どけない。
noobも、なぜか動けない。
指が触れたまま。
互いの息がかすかに混ざる。
ほんの少し首を動かしたらキスしちゃいそうな距離。
Eliotの喉が小さく鳴る。
「……ごめん。なんか……こうなるね、最近」
「ぼ、僕のせいじゃ……ないよね……?」
「ちがう……いや、ちがうのか? わかんない……」
答えがどこにもないのに、また空気だけが熱くなる。
本を見るはずが、
視線はお互いの口元ばかりに吸い寄せられて――
Eliotが、
ゆっくり、ゆっくり、気づかないふりで近づいてしまう。
何も意図してないくせに、
雰囲気だけは完全に“そういう距離”。
触れてないのに、noobの心臓はもう跳ねてる。
Eliotも、わけがわからないみたいに息が浅くなる。
「……noob、近づくとさ」
そこで言葉が途切れる。
続きなんてわからないのに。
ただ近づくたびに、
何かが勝手に甘くなってしまう。
互いに説明するでもなく、ただ近い距離で固まってしまったまま。
noobは気まずさと緊張で喉が鳴りそうになる。
けど動けない。
そんなnoobをじっと見つめていたEliotが――
ふと、口元をゆるくして微笑んだ。
まるで、
「なんでこんなに近いんだろうね」
「なんでこんな空気になってるんだろうね」
って無邪気に楽しんでるみたいな、やさしい笑い方。
その笑顔がやさしすぎて、
逆に距離を離せなくなる。
「……noobってさ」
Eliotが小声で言う。
近い。
声が、耳に直接落ちてくるみたいに近い。
「こうやって近くにいると、なんか……安心するんだよね。なんでだろ」
「っ……ぼ、僕に聞かれても……!」
「うん。僕もわかんない」
そう言ってまた柔らかく笑う。
その一瞬、胸の奥がじん……と熱くなる。
理由なんてどこにもないのに。
noobは視線を落とすけど、
Eliotの手はまだnoobの手の上にあるまま。
そしてEliotは、
まるで自然な誘われるような仕草で、
ほんのすこしだけ、ほんのすこしだけ……顔を近づける。
キスする気なんてない。
ただ近くにいるだけ。
でも、
唇の距離はもう、あと数センチ。
「……noob、顔赤いよ」
「そっ……そんなわけ……っ」
「可愛いなって思っちゃった」
――バクン。
心臓が跳ねる音が聞こえそう。
恋じゃない。
そんなつもりじゃない。
けど“距離だけが理由なく甘い”。
Eliotの笑顔ひとつで、
空気が一気に溶けていく。
「ねぇ……なんでこんな雰囲気になるんだろ」
Eliotの問いに、
noobは答えられない。
答えられないまま、
互いに視線だけが絡んでほどけなくなる。
Eliotの笑顔がまだ近いまま、
noobは胸の鼓動を落ち着けようとしていた。
けど、落ち着くどころか――
Eliotの瞳が、まるで何かを確かめるみたいに
じっとnoobの顔を見る。
「……ん」
細めた視線。
柔らかい光。
それだけで、noobの喉が詰まる。
次の瞬間。
Eliotの指先が、ゆっくりとnoobの頬に触れた。
本当に、無意識みたいに。
何のしかけもなく、自然に。
「……あ、ここ。赤い」
指先が、熱を確かめるようにすべる。
触れられた場所から、
むわっと温度が広がっていく。
noobの息が浅くなるの、
Eliotは気づいてるのか気づいてないのか。
Eliotはそのまま、
優しく、包むように頬をひと撫でしてから、
ふと思ったように微笑んだ。
「可愛い」
言った本人が、
恋愛感情ゼロの顔をしてる。
ただ、
“僕の大事な友達の反応が可愛い”
みたいな感覚で、本当に自然に口にした声。
でも――
noobにはそれが刺さる。
「っ……あ、ぁ……」
言葉にならない声が漏れる。
Eliotはその反応に首をかしげて、
頬に添えていた手を、ゆっくりと下ろしながら、
「そんなにびっくりする? 僕、変なことした?」
と、完全に無自覚な優しい顔で聞いてくる。
それが余計に心臓を揺らす。
距離はまだ近いまま。
コメント
1件
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