SZ【春に唄うメロディは】
・初のサゾ
・主の妄想
・ノベル初心者
・性描写無
・パロ系無
・zr視点のみ
突如として去ったサンジ君への思いに気付くゾロ君のお話。
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はぁ..と声に出して息を吐くと白い煙を出すように目の前が曇る。鼻先は紅く染まり、部屋の隅で毛布にくるまった。清々しい程寒い、冬が訪れた。とびきり寒い、冬が。それと同時に居ないはずの彼奴の事を不意にも考えてしまった。俺は両頬をバチンと叩くと、厨房に続く道を辿る。
俺は彼奴が気に入らなかった。女には優しくて男には厳しい、のに 俺だけには少し甘い。喧嘩の時は女に愛を伝えるより口が回り、俺が寝てると頭を撫でて来る。それが異常に苦しかった。胸の辺りがキュゥッてなる感じ。
偶に俺用に甘さ控えめなおやつとやらを作ってくれたり、朝は大体起きたら彼奴の顔がある、あのアホっぽい顔。俺はそれが別に嫌じゃなかった。言う気は無いが、胸がぽかぽかして嬉しかった。
それなのに彼奴は、俺の事を置いて消えやがった。それだけはいけ好かねェぞ、クソコック。
彼奴に会う度に胸がギュッと掴まれた感覚。
それが不意になくなってスッキリした。
なのに次はモヤモヤが現れてしまって、俺は苦しい。
苦しいと感じたことはないが、この感情は苦しいとやらだろう。
ふぅ..と外からの綺麗な空気を吸い込む。
彼奴が消えてから何度目かの冬がやってくる。
1度目の冬は寒かなかった。2度目は少し寒かった。
3度目..4度目..と続くのだろうか。彼奴は帰って来るのだろうか。
『..なにアホ面晒してんだァクソマリモ。』
そう聞こえた気がした。周りを見渡しても誰も居なかった。ああ、神様ってやつは最後まで意地悪してくるんだな。俺は彼奴の匂いが残る厨房で意識を落とした。
目を開けると船医が俺を心配そうに見ていた。
どうやら厨房で寝落ちたのを誰かが運んで来たそうだ。
一体誰が、と思ったが追求するのは止めておいた。
彼奴じゃなきゃ聞くだけ無駄だ。彼奴じゃなきゃ俺は認めない。
何度冬が訪れても俺は誓うぞ。お前は別に嫌いじゃねェって。好きだって。言ってやるよ。
そう思っていたら視界の端に金色の糸みたいな細く、綺麗にされた髪が映る。彼奴は居ないはずなのに、でも、可能性を信じたくて。横を見ると彼奴が座っていた。煙草も吸ってないけど、髭の生えた彼奴。
『..よォ、やっとお目覚めか。』
久々に聞いた彼奴の甘っちょろい声。
チョッパーに席を外して貰い、彼奴と話し始める。
『..俺が居なくても迷子になんなって言ったんだがな』
「…迷子になってねェ..。」
『迷子になってんだろ、なんで男部屋から厨房まで移動してんだ。』
俺は無言になる。彼奴と喋れてる、と言う事実に。
そしてまた、胸の辺りがキュッてなる。
目元が熱くなり、そして鼻先がまた紅くなる。
『っは、..俺が泣かせたみてェじゃん..』
「..な..ッで、」
『俺が聞きてェよバカマリモ。』
彼奴の手が俺の髪に触れる。
ああ、これは現実なんだな、夢じゃないんだな。
髪から伝ってくる指の温度は偽物なんかじゃなかった。
落ち着くと彼奴は立ち上がる。どうやら、またどこかへ行くらしい。
離れんな。また、離れちまうって許さねェぞ。
そういい、彼奴のスーツの裾を掴み留まった。彼奴は一瞬驚いた顔をし、すぐいつもの顔に戻る。
『分かった、少しだけな。』
俺は彼奴に抱き締められ、頭を撫でて貰う。
それが異常に心地よくて、俺は彼奴の耳元で呟く。
「俺は、別にお前のこと嫌いじゃねェ..」
好きだ、 と消えそうな声で囁く。
『知ってる、俺も好きだから。』
この時間は何れ終わってしまう。
だが、不覚にも終わらないでと思ってしまう。
俺はサンジが好きだ。そう伝える。
唇が当たる音がした。
何度目かの春が訪れた。まだ少し寒さの残る、けど少し暖かい春。
今回の春は彼奴が隣にいる。
料理が上手くて髭の生えた、煙草好きな彼奴。
俺は其奴に向かって伝えた。
「俺、サンジのこと好きだ。」
彼はコクリと頷き、俺にこう返す。
『俺はゾロのこと大好きだ。』
2人して顔を紅くした。
最高の思い出になりますよう、神様とやらに祝福されよう。
俺は彼奴を抱き締め、春の中2人で唄う。
愛のメロディとやらを。
コメント
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文章の書き方めっちゃ上手ですね!!