注意:広報官がヤンデレ気味、ピアノマンが兎に角可哀想。死ネタ
「戴きます。」
目測直径200メートルは有るであろう食事部屋、
天井の照明を豪勢なシャンデリアが乱反射させあちこちに虹色の光の宝石が舞い踊る。
壁に沿って何個か立ち並ぶ大窓には金色の装飾が施されており一体幾ら掛かるのか見当もつかない。
そんな二人という人数にはそぐわない贅沢な大部屋の真ん中にぽつりと置かれたテーブルに私と彼は目線を合わせていた。
彼から出された料理は何処の料理なのか判らないが、具材に対して明らかにそぐわない程調味料が乗っていた。
きっとミスでは無いのだろう、完璧主義である彼がこんな失態を犯す訳がない、もし仮に犯したのだとしても其れを私に、他人に悟らせる様な真似はしないだろう。きっとこれは意図的な物なのだろう、そんな事は分かっている
それを見つめてはフォークを動かせない事を悟られぬ様に手元に置かれた水を飲む。そんな茶番を惰性で小一時間程続けていた。
「ピアノマンさん、中々手が進んでいませんよ。食べさせてあげましょうか。」
流石に時間稼ぎをしているらしき様子を彼に悟られてしまった。そう勘付いた頃には遅く、私に向けてフォークの先が向けられていた。フォークには一切れのサーロインステーキが貫かれてあり、一寸だけ姿を見せるその先に何故か禍々しい不気味さと恐ろしさを感じた。まるでお前を食べてやると謂れた様な、喉元にフォークを突きつけられたかの様な、そんな感覚に陥ってしまった
純白だったテーブルクロスにはぽたぽたと染み出した茶色のソースが染み込んでいた
「ほら、口を開けて…」
大きな溜息を吐いた彼は自身の口に其れを含み、数回軽く咀嚼した後口付けに見せ掛けて彼が口移しした。
其れと共に強烈な吐き気が思考を支配して、反射的に全て吐き出してしまった。腕を動かした時にテーブルの上にあった皿を倒してしまい、私の背中に其れが全て乗っかる、皮膚越しでも分かる…此れは毒だ
「うげッ…ごほ、ぉ…ッ、え”ぇ…」
あっという間に口の中が肉の味から血の生臭い味へと変わる。そう、私は今吐血しているのだ。彼が盛った毒によって
意識が朦朧して混濁している。頭がかち割れてしまいそうな程激しい頭痛がする。耳鳴りが耳を切り落としてしまいたくなるほど叫んでいる。まるで私の身体の期間全てが泣き叫び慟哭しているかの様に一気にありとあらゆる痛みが私を襲う
「貴方と私はまるで此の皿と料理の様な関係ですね。お互いがお互いを色付ける為だけの恋人関係…食べられてしまっては全てが終わってしまうのに。
ですが、忘れないで下さい。例え料理が零れ落ちようとも皿には汚れが残ります。どれだけ強く洗おうとも、執拗に。例え私が死のうとも、貴方が死のうとも、私が死のうとも、此の油汚れの様に執拗に魂に残るんですよ。」
襲い来る死の苦痛の間際、屈んだ貴方は不気味な笑みを浮かべてこちらを見つめていた
「其れでは___さようなら。」