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ある夏の日、私は海に身を投げた_
【おはようございます。今日は7月12日、火曜日です。今日も一日頑張りましょう。】
アナウンサーの声と共に映像を流すテレビ、チクタクと鳴る時計に目を覚ました私は大量の汗を垂らしていた。
『な、なんで…?私、死んだはずじゃ…?確かに、海に落ちたのに…』
冷たい海水の中に確かに落ちた。新しいライブの衣装を纏って、整えた髪を解して…
もしかして、助けられたの?いや、なら病院に居るはず。でもここは、私がアイドルになる前に住んでいた部屋。散らかったモンスターの缶に散らばった服にメイク道具。何故…?
そう、私の第二の人生はここから始まった…
時計を見ると学校に行く30分前。
『支度しなくちゃじゃん…!!急がないと!!』
カーテンから差し込む太陽の光に眩しさを感じながらも脱衣所に向かう。
いつもの様に顔を洗って歯磨きをして着替えをする。
そして私が1番好きなメイクをして髪を整える作業。今日はどんな髪にしょうか、どんなメイクをしょうかと考える時間がとても好きだ。でも今日はそんな事言ってられない。
ぱぱっとメイクをして髪をクシで整えて
『もう、今日は結ばなくていっか…』
そうゴムを手首につけて脱衣所を出る。急いで鞄を持ってマスクをつける。テレビを消してカーテンを開けて家の鍵と自転車の鍵を持ち、ガチャンと言う音と共にマンションの扉が閉まる。
階段を下りて急いで自転車に足をかける。風と共に靡く髪は光に照らされて綺麗に光る。近所のお婆さん達に会えば
「お嬢ちゃん、今日も綺麗な髪だねぇ…」
そう褒めてくれるような輝きに胸が踊る。そんな事を考えていると私と一緒で遅れたのか、同じ制服の1人の女の子が前を走っていた。
「君、私と同じ制服…見かけない顔だけど…」
自転車の速度を落として声をかける。近寄ってみると香水の様な、洗剤の様ないい匂いがした。
「あ、えっと…遅れちゃって、」
えへ、と笑う笑顔はマスクをしていても分かる通り、綺麗で美しかった。
『綺麗…』
咄嗟にその言葉が口走った。え?と聞き返される。
『ううん!なんでもない!同じ学校なら校門まで乗って行ってよ!』
「いいの…?ありがとう」
私の背中に捕まる手は優しくて暖かい。ドキッとした気持ちを抑えて自転車を走らせる。
『私、真宮 奈津。ねぇ。君の名前は?』
「…如月 優美。」
『優美ちゃんね!よろしく!』
「うん、!」
この時間がいつまでも続けばいいのに…
キキーッと校門前に止まる。2人の時間が終わると思うと少しの寂しさが頭をよぎる。
『私自転車しまって来るから、先に行ってていいよ!』
「い、いや送ってくれたし…一緒に行きたい、」
ダメかな、?と聞く君の頬は少し赤くなっていた。可愛い、触れたいと思う気持ちが溢れてしまう。
「いい、かな…?ダメなら、全然いいんだよ…!」
『い、いいよ…一緒に、行こっか。』
断れるはずもなく、一緒に行く事になってしまった。私、君に嫌われたく…ないな。