あの日以降、僕は家では何も考えることが出来ずにいた。ただ起きて、飯を食べて、風呂に入って、寝る。途中家族が話しかけたりしたかもしれないが、何も覚えていない。
学校では、やや支障はあったかもしれないが、まだ随分マシだった。友達と話している時ーそれが楽しかった。家族のことを忘れることができたから。
しかし、段々と、家という場所が自分にとって安心できる場所ではないことが学校生活にも響いてきた。
実は、あの事件は前期の期末考査中の出来事だった。それもあって、テストの勉強は集中できるワケなく、結果は、まぁ、ひどいものだった。欠点 はなかったものの、家族には到底見せれるものではなかった。家に帰ることが、テストのことと前の事件のこととで、凄まじく絶望を感じさせるものだった。
僕は、フラフラと友達がいる教室へ行った。その時の顔といったら、恐らく絶望以外感じさせるものはなかったのだろう。友達は一瞬驚いたような顔を見せ、励まそうと、笑わそうとしてくれた。それが無駄だと分かると、教室が二人だけになるまで待ってくれて、相談にのってくれた。
その日僕は、はじめて、友達を信じて良いものなんだと認識した。当然、家族と友達とでは共に暮らしている時間があまりにも違いすぎるため、友達が僕の悩みについて理解してくれるのは、家族よりも早いのかもしれない。が、友達に依存してしまうことも、この先のことに大きく関わっていたのだろうか。