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日向があかりの古いiPodを指差し、
「おんがく~」
と言いながら、両手で頭を抱え、激しく身体を揺さぶっている、そんな朝。
子ども……よくわからない、と思いながら、あかりが店に行くと、窓から青葉の姿が見えた。
いやこれ、青葉さんじゃないな。
歩き方違うから、きっと大吾さん。
大吾は勢いよく扉を開けて入ってくると、
「おい、うちの妹とお前の弟、付き合ってもいいか」
と言ってきた。
なんという単刀直入な人……。
「え? カンナさん、うちの弟と付き合ってくださるんですか?」
「ああ、お前の弟がいいと言えばな」
そこをまず、来斗に確かめてくださいよ~。
っていうか、我々二人の間で話がまとまるのはどうなんでしょうね。
まず、来斗に告白させるべきでは、とあかりは思っていたが、なんとなく大吾の迫力に押されて言えなかった。
「でもあのー、本当にカンナさん、うちの弟でいいんですか?」
「なんか来斗さん、海辺で素敵な顔で素敵な話をしてくれた、とか言ってたぞ。
海辺で、が、ポイントだったのか。
素敵な顔、がポイントだったのか。
素敵な話、がポイントだったのか」
まあ、顔だろうな、と大吾は身も蓋もないことを言う。
「あいつ、超面食いだからな」
まあ、このお兄さんの顔をずっと間近で見てればそうなるかな、とは思うのだが……。
「でも、よく人は自分にない物を求めるって言うじゃないですか。
カンナさん、あんな綺麗なのに、面食いなんですね」
美女と野獣の組み合わせって多いし。
美人は相手に顔を求めないのかと思っていた。
っていうか、来斗の顔は見慣れているので、特に綺麗だと思ったことはないんだが……。
なんかしっかりしてるわりに、ぼんやりしてて。
子どもの頃のまま、
「ねーちゃんねーちゃん」
とか言ってるイメージだったんだけど。
あの来斗に彼女が……。
それもあんな立派な彼女が、と母のような気持ちでホロリと来そうになる。
「ああでも、来斗くんの話も気に入ったみたいだぞ」
「え?
来斗、なんか語ってたんですか?
秘密警察に尋問されただけじゃ……」
「なんだ、秘密警察って」
と言われ、いえいえ、と誤魔化す。
なんか、私の頭の中では、うちの弟は軍服みたいな制服着たあなたの妹さんに波止場から倉庫に連れて行かれ。
鞭で叩かれながら、尋問されてたんですけど。
「来斗の話は夢があると言ってたぞ」
「夢?」
『ねーちゃん、俺、将来大金持ちになって。
自動販売機のボタン全部押せる人になるーっ』
と不思議なことを言っていた幼き日の弟を思い出していると、大吾が言った。
「ぼくは魔法の呪文を知ってるんですって言ってたらしいぞ。
なんでも叶う秘密の呪文」
「ああ、それなら私も知ってます」
とあかりは言った。
なんだ、この姉弟……という顔を大吾はする。