心操Side
その後保険室にレトを連れていく時もどっちがレトを持つかで軽く揉めた。
この騒ぎで起きてくれと思いつつも起きてほしくない自分もいる。…と言うか逆になんでこれで起きないんだよ…
「お、レト、夢の中で笑ってんのか?…可愛いな。」
結局交代でおんぶすることになり、今は俺がおんぶしているのだが轟が度々レトの顔を覗き込み、可愛いだのなんだのを綻んだ顔で言うもんだから頭を抱えるしかない。
「轟…お前…」
「?なんだ?」
「いや、やっぱりなんでもない…」
レトのことが好きなのか聞こうとしたが、先に好きと言われるとなんとなく負けな気がして言うのは憚られた。
「そういえば、心操、お前レトのこと好きなのか?」
だからもう爆弾発言やめてほしい。また頭を抱える寸前、背中で声が聞こえた。
「んん…?しんそくん?…」
ナイスタイミング、レト。これでやっとトドハラ(轟ハラスメント)から逃れられる…!
「…!なんで私心操くんにおんぶされてるの…?!」
やっぱバットタイミングだったわ…
その後荒ぶる轟を抑え、なんとか誤解を解き三人で家路についている。轟が保険室に用があると知ったレトがわざわざ靴箱で待ち、自然と三人で帰る雰囲気となってしまった。
「あ、そういえば轟くん、私ヒーロー科にいくことになったんだよね」
「!本当か?」
なんでこんなに喜んでんだ…ブンブン振ってる尻尾が見えるんだけど…
「うん、なんか私の個性が危険らしい。」
「そうか。俺は来てくれて嬉しい。」
こいつ、ストレートに言いすぎだろ…いやでも待てよ、ストレートに言ったほうが気持ちは伝わりやすいのか?俺も言うべき、なのか?
「そ、そっかぁ…!ありがとう?」
「俺は寂しいんだけどな…」
よく言った俺。
「え”…そう言われたら行きづらいんだけど!?まあ私も望んでいきたい訳じゃないからね。たまにはそっちに遊びにいくよ?」
「そっか。ヒーロー科の授業とか色々聞かせて。絶対そっちに迎えにいくから。」
そのまま大人になっても、な。いつかは結婚すんのかな…いや、付き合ってもないのにこんなこと考えるのは野暮か…
「それもうプロポーズじゃん…」
「なっ…ちげえよ!揶揄うな!」
図星。
「えそんなに否定されるとそれはそれで悲しい…」
「結婚か…俺はレトみてぇな奴と結婚してぇな…」
「ちょ、君もプロポーズしてんね…あれ、もしかしてモテ期?」
なんで変なところで鈍いんだよ…
その後轟とも別れ、2人きりで帰っていると変な空気になり、お互い何も話さず歩いていた。
しかし気まずい雰囲気ではなく、むしろ心地が良い雰囲気で、暗くなり星が目立ち始めた空を見上げていた。
「……じゃあ、私ここだから。またね、心操くん。」
「ああ、またなレト。」
結局2人きりで何も話さなかったが返ってよかったのかもしれない。
そう思い逆方向の駅へと向かっていった。
「心操くんの隣、なんだか安心したなぁ……」
「レトのことが好きだから、レトの隣は暖かかったのか…?」
そんな2人の独り言