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読んだわ。もう冒頭の南雲さんの叫びがレジェンドすぎて草。てか『苺光閃』再びかよ!まだ会話してるだけで悪夢の予感しかしないのに、実際撃たれたときの絶望感、読んでてゾクゾクしたわ。六駆おじさん無自覚に空気作ってるけど、あのバランス感覚、マジで才能だよな。莉子の「頑張っちゃうね!!」が一番怖かったわ。
「や、やまっ! おまっ!! おまぁぁぁぁぁぁぁっ!! 『双銃《リョウマ》』が! ちょまぁぁぁぁぁぁっ!! だから、私は嫌だって! ちょんぺめけめけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
南雲監察官の叫びが少々聞き取りづらくなっております。
それでも何故か意味の分かる諸君は、今すぐ南雲監察官室の門を叩こう。
「うへぇー。やっぱり南雲さんの作る装備でも限界ってあるんですにゃー」
「……なんですの、あの凶悪なスキルは。……逆神さん、凄まじいですわ」
「みみっ。あれは六駆師匠のお気に入りのスキルです。説明不要でヤバいです」
南雲に対して、「多分六駆がどこかでやるな」と予想していた乙女たちの反応は冷静そのものだった。
さらに彼女たちは六駆が打つであろう次の一手について話し合う。
「パイセンはねー。六駆くんが最近夢中になってる、古龍シリーズだと思うにゃー」
「みみみっ。芽衣はもう直接ボコボコにすると思うです。速さで誤魔化す作戦です」
「わたくしはあの方をお排泄物呼ばわりするの、やめようと思いますの……」
さあ、予想は出揃った。
だが先ほどの『大竜砲』を目撃した潜伏機動部隊も黙ってはいない。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「……なんじゃ、ありゃあ。誰が何を撃ったんだ? 青山、解析よろしくぅ」
「できるワケないでしょう! どこかの異世界の伝説のモンスターでもあんな火力は出せませんよ!!」
青山仁香、割とニアピンの予想をする。
続けて、柳浦とリャンが私見を述べた。
「撃ったのは山根さんでした。あの南雲監察官の作ったイドクロア装備ですから、もしかすると、とんでもない兵器なのかも」
「でも、そんな兵器って許可されますか? 事前に申請書類を出すじゃないですか」
リャンの冷静な分析が光る。
「まったくその通り」と潜伏機動部隊の精鋭たちが頷いた。
「そうなると、臭いのは山根さんだな。あの人は半分引退してるみたいなもんだから、情報がねぇんだよ。よろしくぅ」
「それを言うなら、ルーキーの逆神くんと小坂さんの情報もないですけど」
「だが、可能性の大きさから考えると、ランクの順番に脅威と推察するのが筋だろう。よろしくぅ?」
「……確かに。屋払隊長の判断に従います」
潜伏機動部隊の方針も決まる。
「山根さんを落とすぞ! 全員でかかる!! よろしくぅ!?」
「「「よろしくぅ!!!」」」
◆◇◆◇◆◇◆◇
こちらは、これからよろしくされる予定の山根健斗Aランク探索員。
彼の危機管理シミュレーション能力は極めて高い。
「あっ。これ絶対に勘違いされるっす。自分がさっきの『大竜砲』撃ったと思われてるっすよ。いや、撃ちましたけど。しまったなー。名前とか叫ぶんじゃなかった」
「なら、僕が4人の足を止めましょう。山根さんには指一本触れさせませんよ!」
「逆神くん! じゃあ、自分も1人くらい担当するっすね! 3人よろしくっす!」
迎撃態勢は整っている。
だが、決め手に欠いている現状をどうにかしなければならない。
彼らのシナリオでは、先ほどの『弾・大竜砲』でゲームセットだったため、代案の準備ができていなかった。
そこで意見を出すのがチームリーダーの莉子。
「あの、こんなのはどうですか? わたしが『苺光閃』を撃ちます! でも、普通に撃ったら南雲さんに悪いので、合体スキルって事にしたらどうでしょう?」
「さすがだなぁ、莉子は! 僕にはとてもそんなアイデアを思い付けない!!」
「いやー。まったくっすね。小坂さんは知恵の泉っすねぇ」
この3人にはブレーキ役がいないため、声を大にして言っておく必要がある。
『苺光閃』は極めて特殊なスキルであり、凶悪なスキルでもある。
合体スキルで誤魔化せると言う考えが甘いのだ。……苺だけに。苺だけに!
逆神流が既に異形のスキルなのに、その使い手が三代揃って知恵を絞って変な汁も絞って作り出した悪夢のスキル。
それが『苺光閃』。
「おっと! 敵さんが来ますね! じゃあ、莉子は後ろで煌気溜めててね! 莉子にも絶対に指一本触れさせないから、安心して!!」
「も、もぉぉぉ!! 六駆くんってばぁ!! ……わたし、頑張っちゃうね!!」
六駆おじさん、ラブコメの無自覚鈍感主人公みたいなセリフで、生み出される悪夢の質をグイグイ上げていく。
張り切って煌気をチャージし始めた小坂莉子。
彼女の煌気総量がお化けだと言う事も忘れてはならない。
◆◇◆◇◆◇◆◇
『先ほどの超巨大な炎のスキルはなんだったのでしょうか!? 急に周囲を守るように現れた壁スキルは今も健在!! 一体、誰が何をしたのかぁ!!』
『……や、山根。……うむ。……山根、かな』
『五楼さん、お言葉ですが山根くんのスキルは攻撃に向いていないものが多いと資料にも記載されていますけど』
『雷門! 貴様ぁ、今こそ号泣しながらなにか喚き散らせよ!! 冷静に分析するな!!』
『ええ……。五楼さん、ひどい事をおっしゃる』
もちろん、五楼京華には全てが分かっている。
『大竜砲』が現世に存在しないものである事も承知の上で、「これは隠し通さねばまずい!」と必死に脳を回転させていた。
もはや立派な逆神流被害者の会の一員である。
彼女は厳しい口調のため誤解されがちだが、根は優しい女性なのだ。
嫌ってはいるが、仮にも師匠である逆神大吾。
その息子が、協会本部のためにこれまでどれほどの活躍をして来たのかも五楼は知っている。
動機について察しているのは、彼女が逆神家に近いせいだろう。
不純だろうが何だろうが、今の探索員協会に逆神六駆は必要であると考える五楼京華。
ならば、色々と誤魔化さなければならない。
『武舞台の中央で交戦が始まるぅ! 屋払Aランク探索員をはじめ、3人が逆神Dランク探索員とスキルでやり合う!! さらに山根Aランク探索員がそこに残った『双銃』で援護射撃!! 一進一退の攻防が続いております! どちらも退かない、退くことはできない! クラスマックスが近いのかぁ!!』
五楼は眉間を押さえながら武舞台に目をやった。
そこで気付く。小坂莉子だけ不可解な距離を取っている事に。
莉子が逆神流使いである事も五楼は知っていた。
様々な情報が、上級監察官の脳内で足場の悪くなったジェンガのように組み上がっていく。
「あの娘。ひょっとしなくても頭のおかしい事をしようとしているのでは?」と、呆気なく答えにたどり着く五楼京華。
だが、解説席にいる彼女にはどうする事も出来ない。
彼女は生まれて初めて神に祈ったと言う。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「六駆くん! 山根さん! 行けます!! すっごく頑張って煌気溜めました!!」
「ご苦労様、莉子! じゃあ山根さん! 僕のスキルで隙を作りますから! そのタイミングで後方に飛んでください!」
「了解っすよ!」
六駆は武舞台の床めがけてスキルを放つ。
「ふぅぅんっ! 『光剣』!! 一刀流! 『岩石時雨斬り』!!」
細かい斬撃で地面を抉った六駆の一太刀。
実に良い塩梅の煙幕となり、潜伏機動隊の足を一瞬止める。
「よし! 莉子! 準備は良いよ!! 周囲への被害は出ないように壁出してるし! 敵さんが死なないように、僕が防御膜を『苺光閃』の先端に展開するから! 思い切りやって大丈夫!!」
大丈夫ではない。
「うんっ! 分かったぁ! やぁぁぁぁぁっ!!!」
「じゃあ、山根さん! 僕らもなんか煌気出している空気で! ふぅぅぅんっ!!」
「了解っす! はえぇぇぇぇぇんっ!!」
間抜けな声とともに、その時はやって来る。
「たぁぁぁぁっ!! 『苺光閃』っ!!! 広域放出!! てぇやぁぁぁぁぁっ!!!」
煙幕が晴れるのと同時に、苺色の悪夢が武舞台の上にいる潜伏機動部隊に襲い掛かった。