テラーノベル
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夏休みも後半。
約束の日。
駅前で待っていた奏斗のところへ、冴がやってきた。
「お待たせ。」
「全然!……って、今日はこっち?」
いつもの本屋とは反対方向。
「うん。」
「どこ行くの?」
「秘密。」
「また秘密?」
「……嫌?」
「まさか。」
奏斗は笑った。
「楽しみ。」
-–
駅から少し歩く。
住宅街を抜けて、細い坂道を上る。
「ここ、初めて来た。」
「うん。」
「結構歩くな。」
「もう少し。」
やがて、木々の間に小さな階段が現れた。
その先には――
小さな丘。
ベンチが一つ置かれていて、その向こうには街並みが広がっている。
「……わ。」
奏斗が思わず声を漏らした。
「すごい。」
「……。」
冴は少し嬉しそうだった。
「ここ。」
「俺がよく来てた場所。」
「小さい頃から?」
「うん。」
「一人で?」
「……うん。」
冴はベンチに座る。
「静かだから。」
奏斗も隣に座った。
「確かに。」
蝉の声。
木の葉が揺れる音。
遠くから聞こえる車の音。
学校や祭りとは違う、穏やかな時間。
-–
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りともと
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猫下僕
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「……神崎。」
「ん?」
「ここ。」
「?」
「誰にも教えたことない。」
奏斗は少し驚いた。
「え。」
「だから。」
冴は前を向いたまま言う。
「神崎が初めて。」
「……。」
奏斗は何も言えなくなった。
しばらくして。
「なんで俺に教えてくれたの?」
冴は答えなかった。
「……。」
風が吹く。
冴の髪が少し揺れる。
「分からない。」
「え?」
「でも。」
「神崎には。」
少しだけ間を置いて。
「見てほしいと思った。」
奏斗の胸が、どくんと鳴る。
「……そっか。」
それ以上は言えなかった。
-–
「神崎。」
「ん?」
「この前。」
「夏祭り。」
「うん。」
「楽しかった?」
「もちろん。」
「……よかった。」
冴は小さく笑う。
「じゃあ。」
「また来よう。」
「ここ?」
「うん。」
奏斗が笑う。
「来年も。」
冴は少しだけ目を丸くして。
「……うん。」
-–
しばらく二人で景色を眺める。
すると。
「……眠い。」
奏斗がぽつりと言った。
「寝れば?」
「ここで?」
「うん。」
「じゃあ……少しだけ。」
奏斗はベンチの背もたれに寄りかかる。
「……。」
数分後。
静かな寝息。
冴は横を見る。
「……寝た。」
少しだけ笑う。
いつも明るくて、よくしゃべる。
そんな奏斗が、今はとても静かだった。
冴はしばらくその横顔を見ていた。
そして。
「……ありがとう。」
小さくつぶやく。
「一緒に来てくれて。」
もちろん、奏斗には聞こえない。
-–
しばらくして。
「……ん。」
奏斗が目を開ける。
「寝てた?」
「うん。」
「どれくらい?」
「二十分くらい。」
「ごめん!」
「別に。」
「退屈だった?」
「……ううん。」
冴は少し笑う。
「待つのも、悪くなかった。」
「……。」
奏斗はその言葉を聞いて、なぜか嬉しくなった。
「じゃあ、また寝ようかな。」
「今度は起こす。」
「ひどい。」
「帰る時間だから。」
「そっか。」
二人は立ち上がる。
-–
帰り道。
坂を下りながら、奏斗が言った。
「石川。」
「なに。」
「今日、連れてきてくれてありがとう。」
「……うん。」
「俺も。」
「?」
「秘密の場所、できた気がする。」
冴が足を止める。
「……秘密の場所?」
「うん。」
「二人の。」
冴は少し考えてから。
「……それなら。」
「また来ないとね。」
奏斗が笑う。
「約束。」
「うん。」
夕方の坂道を、二人は並んで歩いていった。
-–
第21話 おわり 🌿
次回・第22話「二学期のはじまり」
夏休みが終わり、久しぶりの学校。
「久しぶり!」
「……うん。」
たったそれだけの再会なのに、二人とも少し嬉しい。
だけど――
新学期の教室には、転校してきた新しいクラスメイトがいた。
そして、その子はどうやら冴と以前から知り合いらしくて……?
コメント
1件
ああ〜〜〜〜もうこの回ヤバかった!!😭💕✨ 冴が「誰にも教えたことない」って言った場所に奏斗を連れてくるの、重すぎるし尊すぎるんだが?!「神崎には見てほしいと思った」って…それもう完全に特別じゃんか!!!奏斗が寝てる間に「ありがとう」ってつぶやく冴にも胸がギュッとなった…🥺💘 「二人の秘密の場所」って言葉、最高すぎて叫んだわ。そして次回の転校生…冴と知り合いって何事?!続き気になりすぎて寝れないんだけど!!🌿💦