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「うおおおおお!!」
フリードは大剣を構えて突進した。
とりあえず彼の存在の手当をしてから魔術師ギルドに連れて行き、ギルドの導師であり竜殺しの仲間であるエルフのエリアに見せて一緒にその正体を探ろう。
そう考えていた為に殺戮を許してしまった不覚、嫁いで来た姉を暖かく迎え入れてくれたこの村の人々を無惨に殺された怒りと悲しみでフリードの心に灼熱の嵐が吹き荒れた。
己に向けられた恐るべき怒りと憎悪を鋭敏に感じ取ったのか、彼の存在は村人への殺戮を止め、フリードへその眼と剣先を向けた。
そしてフリードの胴を両断すべく横なぎの一撃を見舞った。
だがフリードは怯むことなくさらに足を大きく一歩踏み込み、真っ向大剣を振り下ろした。
フリードの超絶的な膂力で振るわれる魔法の大剣は彼の存在の剣を握った腕を切り落とし、そのまま返す刀でその首を刎ね飛ばした。
その存在は美しい顔貌に驚愕の表情を浮かべたが、それもほんの数瞬に過ぎず、すぐに淡い光の粒子となって消えて行った。残された胴体と剣も同様であった。
「凄い……!」
ファ―ルス村の人々は目を見張った。若くして伝説となった竜殺しの英雄、エトルリア帝国において五指に入ると言われる剣の使い手。
フリードの幼少時代を知る村の人々はそれらの風聞がどこか信じられず、大げさに話が盛られているのだろうと少なからず考えていた。
しかし今、目の当たりにした凄絶な剣技によってそれらの話が大げさでも何でもなく、我らの村の一員と言っていいフリードこそが当代最高の英雄であり、最強の剣士なのだと誇らしく思った。
「……」
しかし当のフリードは己に向けられる感嘆と尊敬の眼差しなどまるで意に介さなかった。
先程謎の存在を倒した剣の威力と速度。それは己の想定を明らかに超えていたからである。
そして彼の存在に対峙した瞬間、これまで感じたことの無い力が己の五体に満ち満ちた感覚をはっきりと自覚していた。
謎の力が生じたことによって身体能力が一時的に強化されて一瞬で倒すことが出来たのである。
これまでの冒険で幾度も仲間の魔術師に身体能力向上の魔法を施されてきたが、それらの魔法とは明らかに感覚が違っていた。
例え謎の力が生じなくても、本来の己の実力で倒すことは確実に出来ただろう。
だがもっと手こずることは疑いなかった。
「一体どうなってるんだ、これは……」
グレータードラゴンを倒した謎の存在と、その存在と対峙したことによって己に生じた謎の力。
これまで強さと功名を得る為になるべく物事を複雑に考えず、単純に真直ぐ生きようと己を律して生きて来たフリードであったが、深まる疑問で生まれて初めて混乱に陥っていた。