テラーノベル
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(大丈夫かなぁ…)
スマホを落としたことに気づいてから中身を見られていないか心配で話に集中できない。
「ーー、ー…。この予定で進んでいくので、後ほどスケジュール送りますね」
「了解です…!」
打ち合わせが終わった瞬間、急いで椅子を立つ。
(… …スマホ)
胸の奥に嫌な予感が残ったまま。
誰かの目に触れていないか。
見られていたとして、その内容がみんなに広まっていないか。
考えないようにしても、
今朝見たスマホの画面が頭をよぎる。
(見られて…ないよね…)
足取りが自然と早くなってスタジオへ向かう廊下を急ぐ。
確かめないと落ち着けない。
スタジオに向かう足が1歩ずつ進むごとに、心に不安が募っていく。
「…よし。」
誰かに見られていないか不安を抱えたまま、扉に手を伸ばした。
「涼ちゃんっ…!!」
トイレから急いで戻ってくると、スタジオの扉を見つめる涼ちゃんを見つけ、反射的に声が出る。
スマホが無いことによる焦りからか、普段とは違う妙な雰囲気を纏っていた。
(返さなくちゃ…)
今返さければ機会はない。
スタジオの中にはスタッフさんが沢山いるし、俺が涼ちゃんのスマホを持っていることを知っている元貴がいる。
返さなければ、きっと誤解される。
黙っていたら、信じてもらえなくなるかもしれない。
もし、人のスマホを勝手に触ったことがみんなにバレてしまったら…
だからこそ、入って行ってしまう前にちゃんと謝らないといけなかったのに。
「…あ、待って、!…」
ゆっくりと扉に手をかけたかと思えば、勢いよく開け、あっという間に中に入って行ってしまった。
(…ど、どうしよう…)
周りにバレずに返すチャンスは今しか無かった。
しかし、悩んでいてもいつかは返さなくては行けないのが事実。
(…バレてでも返さなきゃだよね)
涼ちゃんが行ってしまったことは変えられない。
だからこそ、影響を少なくするためにも早く行って謝ることが最優先。
そんなことくらい分かってるはずなのに。
(…行けない、)
中身を見た時の高揚感とは裏腹に罪悪感と、恐怖心が膨らんでいく。
(ドアの前にスマホを置いておこうか…?)
(またトイレに籠っておこうか…?)
お腹が痛くなり、病院に行くと嘘をついてスマホをそっとスタジオ前に置いておけば、スタッフからは心配され、元貴からも疑われなくて済むかもしれない。
(…スマホ置かなきゃ。)
なんとしてでもこの状況から逃れるために、足音や僅かな呼吸音も立てないよう、息を殺してドアに向かった。
幸いなことにスマホの中身について誰にも知られていなかった。
しかし、何処にあるかも知られていない。
(…いつ失くしちゃったんだろう?)
帰る時までに見つかればいいので、周りのスタッフさんと一緒に探してもらうことにし、今はとりあえず忘れることにする。
少し気が休まり周りを見渡すと、
(あれ、?)
若井がいないことに気づいた。
スタッフさんによると、スタジオを出てから20分以上は経っているらしい。
(大丈夫かなぁ…)
帰ってくる気配も無いので益々心配になってきた。
元貴は僕が帰ってきたときからスタッフさんと話していて、若井について聞ける雰囲気ではない。
「元貴ー、若井探しに行ってくるねー」
忙しそうに資料に目を通している途中、一瞬だけ顔を上げ少し頷いた後、すぐまた話に戻っていった。
(…どこに行っちゃったのかな、)
若井が何処にいるのか分からないまま、とりあえずスタジオの出口に向かう。
ドアノブに手をかけゆっくり開けると、
「…っ、え?」
目の前に若井がいた。
安心しかけた次の瞬間、視線が止まる。
若井の手の中。
見慣れたケース。
間違えようのない、自分のスマホ。
「……え?」
喉がひくりと鳴って、言葉が出てこない。
どうして若井が持っているのか、
考えるより先に、嫌な想像が頭をよぎる。
(……見た?)
心臓が急に煩くなっていく。
画面は消しておいたか。
ロックは、ちゃんとかかっていたか。
必死に表情や体の震えを隠す。
動揺しているのがバレてはいけないと思い、無理やり口元にぎこちない笑みを作った。
「…え、えっと、それって、」
声は出たけど、続きが詰まる。
聞きたいのに、聞けない。
これ以上言ったら崩れてしまいそうで、視線を逸らしたまま返事を待つ。
「…涼ちゃん。」
視界が揺れた。
信じられないほど鼓動が早くなる。
「その…、早く返さなくてごめん。返そうと思ったら涼ちゃん打ち合わせ中でさ…」
(…、えっ?)
自分が一番心配していたスマホの中身のことに関しては触れられなかった。
若井は早く返さなかったことに謝罪しているだけ。
安心して一気に息を吐いた。
「っ、全然!ありがと…!」
差し出されたスマホを受け取りながらホッと胸を撫で下ろす。
「じゃあ戻ろっか、!」
早く戻ろうと言い、若井を連れてドアを開けようとすると
「…あのさ。」
腕を引っ張って引き止められた。
「ん?どうしたの?」
具合でも悪いのかと思い、心配の眼差しを向ける。
大丈夫かと問いかけると、
「…俺、見ちゃった。」
その言葉を聞いた瞬間、
一瞬で頭が真っ白になった。
「……えっ。」
胸の奥がドクンと鳴る。
思っていたよりも、声が高く出た。
誤魔化す余裕もなくて、視線が床と顔を行き来する。
「な、なんのこと?」
恥ずかしさが一気に込み上げて、顔が熱くなった。
隠していたはずのものを、真正面から掴まれたような感覚。
「う、うそだよね…?」
見つめ返してくるだけで、若井は何も言ってこない。
(っ、うぅっ…)
話すだけで涙が溢れてしまいそうになる。
必死に隠してきたつもりなのに。
メンバーだけにはバレたくないとあんなに思っていたのに。
思い返せばこれまでしてきた隠し事はなんだかんだ毎回見破られてきた。
今回は絶対に隠さなければいけない内容で、今まで以上に気を付けたつもりなのに。
自分の不甲斐なさに心が潰されていく。
「…なに見たの。」
聞いてはいけないと分かっているのに、諦めたように口は動いていた。
「ねぇ、なに見たの。」
若井は申し訳なさそうに俯いたままで答えない。
「答えてよっ…!!」
若井のぶら下がっていた手を掴んで、縋るように揺さぶる。
「お願いだからっ…。」
その時、勢いよく手を掴み返され急に引っ張られた。
(っ、!?)
力強く掴まれたかと思ったのも束の間、手を引かれながら廊下を走り出す。
「ま、まって!!」
精一杯叫んだ声も全く聞こえていない。
急いでスタジオから離れるかのように、若井はぐんぐんと進んでいく。
追いつかない頭のまま、いつの間にかトイレに連れてこられていた。
「…っ、急にどうしたんだよっ!」
肩で息をする僕に若井が話す。
「もう俺、我慢できないかも」
遅くなってごめんなさい…😖第4話です!
あれ、いいね数より見てる人の方が多いぞ…?
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続き楽しみにしてます!✨️