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歌パロ rimn 覚悟
前半ライくん後半はロウくん視点です
ある日突然、ウェンから電話がかかってきた。
「ライ!?…よかった繋がって。」
いつも明るいウェンの声は震えている。
丁度本部にいて他3人も後ろにいることを伝えると共有の許可をもらえたのでスマホをスピーカーにしてみんなにも聞いてもらう。
「ごめん、実は…」
内容はウェンが一つ取り残したゴザカシーが咄嗟に逃げ、マナを攫ったという事だった。
近辺を調査したがゴザカシーの気配もマナも見つからなかったのこと。
「東、今立て込んでる人多くて…」
ヒーローは日常のパトロールに加え長期任務もザラにある。
マナが抜けたのなら今必死で穴埋めをしているのだろう。
心臓が痛いくらいなっている。
落ち着け…落ち着け…
「…情報が欲しい。
そいつが何処にいるのかは目星ついてんの?」
「ん、大体。またデータは送る。西がやれば多分すぐ見つかると思うから」
「取り逃がしたっていうのは普通にミス?」
「っ…数が多くて倒れたと思ってた奴がまだ力残ってたみたいでそれで逃げられた」
「攻撃喰らって倒れてた奴がマナに勝てると思うか?大体戦闘力もわかっとるやろ
あっちも」
「だな。けどこっちはマナを取られてる。
作戦成功ってわけだ。名前通り、小賢しいやり方で」
みんなの顔が険しくなる。
まさか…
手足が震えて、平静でいるのがやっとだった。
「ありがとう、ウェンまた何かあったら…
逐一教えて。」
「うん。本当…ごめん」
電話が切れる。
「ライ、ちょっと来い。」
「小柳く…」
「たこ!」
星導の声がカゲツの声に遮られる。
いつもより低い声のカゲツの声がずしりと重たい。
「お前らはこれからの任務数日空けてもいいよう上に掛け合ってくれ…頼む。」
やばい、耳鳴りしてきた。
みんな動いてるのに…俺も…
「ライ、ソファ座っとけ。なんか飲むもんももってくる。」
半強制的にすわらせられ、ちょっとしたら冷たいコーヒーが出てくる。
口に入れると少し甘く、ミルクの味が少しだけ俺を落ち着かせた。
「…俺はマナを助けたいと思ってるから、全部、今俺の経験から分かることを伝える。」
向かいの椅子に座ったロウは覚悟を決めたようにまっすぐみてくる。
「ゴザカシーは弱っている状態、逃げた先にはマナ。あっちは2人の関係は知らないかもしれないが虚をつこうとすればいくらでも方法はある。カマをかけたり、暗示をかけたり…あるいは近しい人間の姿に化ける、とか。」
俺の姿に…
化けるくらいならそんなに確かにそんな力を使わない。
普段はバレるからやらないが、
「俺と2人のとこ見られてたのかな。俺の姿で現れたらマナは…敵でも殺せなさそうだな。」
ぽつりというとそうだな。と絞り出したような声を出す。
「人と関われば嫌悪や不信感は例え恋人でも多少は抱くもんだ。その暗い部分に漬け込めば元々俺らが悪だと洗脳するのも容易い。そういう奴らは…よく見てきた」
暗い部分、洗脳。
「有る事無い事いって、判断を曇らせる。そうすればこちら側もそれでも助けたい側と、殺す側で対立し力を発揮できなくなり、結果致命傷を喰らう。よくあるパターンだ。」
殺す…?なんて。
「だからもしもの場合。もしも…マナがもういつものあいつに戻らないと確信した場合、また、ディティカの4人が1人でも殺される危険がある場合は…俺がとどめを指す。それが、俺の考えだ。」
言葉一つ一つが苦しい。
ナイフが突き刺さるように痛い。
そんな事…させたくない。
そんな事をしたらロウが…
「俺に、やらせて。マナは俺のだ。もし、殺さないといけないときは、俺がやる」
ロウは口を開いたが言葉を発せずに黙る。
「…分かった、また夜話好き。それまではゆっくり休んどけ。」
優しい声に、ありがとうの言葉が震えた。
部屋から出るとカゲツと星導が聞き耳を立てていた。
「趣味悪いぞ。」
ため息をつきそのまま去ろうとするとカゲツが呆れたように呟く。
「殺せるわけないやろ、ライに」
甘いわと言われてその通りだと思う。
本来なら否定するべきだった。
この場合感情で大きく戦場が変わることが予想される。
連れて行かない、戦わせないが定石だ。
「…ごめん、さっきは。」
さっき俺を止めようとした事を謝る星導。
「いい。俺も一緒だ」
ぬるくなったな、ここに居て。
「マジで殺せないと判断したときは俺が殺す。俺は暗殺者だ。…任せろ。」
築いた仲間。
過ごした日々を、俺は無くしたく無い。
けど、だからこそ。
あいつはきっと殺せないし、2人とも死ぬのはもっての外。
出来るのは…俺だけだ。