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・国語赤点ギリギリのやつが書いてます。なので文が意味不明です。
・国じゃない奴が出てきます。思いっきしです。苦手な方はお逃げください。
・国に対しての超個人的な解釈がございます。解釈違いでぶっ倒れても責任は取れません。
・ファンタジー寄りです。
冷たい風が頬を撫でる。
雪は止みかけているが、まだちらちらと白い粉が舞っている。
朝の光がその一粒一粒に反射し、きらめいている。
とある日本の街での、お話。
街の片隅に、一人の少女が俯きながら歩いていた。
丸い顔の真ん中には赤い丸が描かれており、さらに猫耳を生やしている。もしかしたら、それは飾りなのかもしれないが、傍から見ると人間とはとうてい思えないような姿形だ。
しかし、街をゆく人々は、そんなことを不思議にも思わない。否、そもそも彼女の存在に気づかないのだろう。
まあ、それもそうだ。なんてったって彼女は日本。国の化身なのだから。
彼女は何百回、あるいは千回以上冬を見てきた。
歌を詠む声が凍った庭に響く冬。
山に息をひそめる武士たちの冬。
寒さの中、人々が町を出歩く冬。
焦げた空が絶望を連れてくる冬。
いつも、違った冬だった。
冷たい風がまた頬を撫でる。
彼女は顔を上げる。
マフラーを直し、ポケットの中のカイロを握る。
そのとき、風の向こうからやわらかな香りが流れてきた。
甘く、しかしその中に少し尖った酸っぱさを含む香り。
蜜柑だ。
もうそんな時期なのかと彼女は思い、まあこんなにも寒いし、と彼女は勝手に納得している。
それにしても、街中で蜜柑の香りがするとはどういうことだろう。歩きながら食べているのか、それともそういう香水があるのか。
まあわからないが、蜜柑の香りがここまではっきりするだろうか。
そんなことを一人で考えながら、もういいかと思考を放棄しようとした時、誰かが彼女に声をかけた。
「おねーさん、これ落としたよ」
声をかけてくれたのはほんの5、6歳程度の子供。定期を落としたというので、拾ってくれたらしい。
「わっ、拾ってくれてありがとう!これなかったら私、家に帰れなくなっちゃうところだった!」
そう感謝を伝えると、子供は、
「ううん、落ちたところを見たら拾って渡さないと!」
と言った。
何と優しい子供なのだろうか。私がこんなに小さい時なんて、怖くて知らない人に声をかけることすらできなかったのに。
…ん?
この子、どうして私のことを認識できるの?
国同士とか、そういう人(?)たちしか私――つまり国を認識できないものなんじゃあないの?
…まあそんなこともあるか。
やはりこの女、だいぶ適当に生きている。
そういえば、さっきより蜜柑の香りが強くなった気がする。彼女がそう思ったときにはすでに口が動いていた。
「ねえ。蜜柑の香りがすると思わない?
どこからするんだろうね?」
彼女は、冗談っぽく、また軽い世間話のつもりで言った。
しかし子供は、一瞬反応したかと思えば、黙り込んでしまった。
なんか蜜柑にトラウマでも持ってんのかなあ。
そんな呑気なことを考える彼女。
「…そうだね。蜜柑の香りするね。」
突然、子供が口を開いた。
彼女はそれに少し驚きながら言った。
「やっぱ蜜柑の香りするよね!?
そうだ、ねぇねぇ。君は蜜柑好き?私はすっごく大好き!
冬が来た!って感じがするからね。
そういや、今年は蜜柑まだ買ってないなあ。」
「うん。僕も好きだよ。蜜柑。」
子供は、それだけ言った。
声をかけてきたときのような元気はどこにいったんだ。
彼女はそう思いながら、話を続けた。
「蜜柑っていつからあったかなぁ〜。んー。
でもやっぱり、今の甘い蜜柑が一番美味しいよねえ。」
「昔は甘くなかったの?いつごろの話?」
子供は興味があるようだ。
「んー?それ言っちゃうとなあ。私の年齢が何歳以上かバレちゃう!」
「おねーさん。いくつ?」
「そんなことレディに聞くもんじゃありません!」
そんな軽い話をしていた。
気づけば、人の流れが増えていて。
そろそろ、行かなければならない。
「んじゃ!そろそろ行かないと!
私の話に付き合ってくれてありがとね!」
そう言って彼女は子供に別れを告げた。
「うん。じゃーね。おねーさん。」
その時。子供と彼女の間を風が通り抜けた。
とても強い風に、反射的に目を閉じる。
次に目を開けたとき、子供の姿はそこにはなかった。
ただ一つの蜜柑が残されているだけ。
ちらちらと降る雪に朝の光が反射する朝。
その空気の中で、甘く、少しの酸っぱさを含んだ香りがしていた。