「お前が欲しい」
それが、湊の今年の誕生日プレゼントの要望だった。
※※※
5月半ば。
「今年の誕生日プレゼントは何が欲しいですか?」
約1ヶ月後に迫った湊の誕生日のプレゼントの希望を湊に尋ねる。
「う…んと…」
普段からあまり物欲がない湊は毎年この質問に悩む。
「なんでも良いんですよ。アンタが本当に欲しい物言ってください」
「本当に…欲しいもの……?」
そう言ってはまた悩み込む。
「まだ時間はあります。少し考えてみてくたさい」
それから1週間後。
再び同じ質問をする。
「決まりましたか?」
「……まだ」
そろそろ目星をつけてもらわないと、手に入り難い物なら間に合わくなる。
「また、聞きますね」
それから、また1週間後。
「そろそろ決まりましたか?」
「いや…まだ…」
誕生日は、来週だ。
いよいよ時間がない。
そもそも、要望次第では手に入るかそれすら危うい。
「せめて、どんなのかだけでも…」
「欲しいものは既に決まっている。けど…」
「けど…?」
「まだ、言わない」
「それじゃ、誕生日当日に間に合いませんよ…」
「心配すんな。大丈夫だ。そもそも探して手に入る代物じゃねぇから」
わからない…。
探さずでも見つかる物とは…?
「早くしないと…」
誕生日当日に間に合わないっ…!そう言おうとしたが
「世界中探し回ったところで、俺が欲しいものは絶対に手に入らない。だから、もう気にすんな。早く学校行きなさいね、大学生」
上手くかわされた気がする…。
とうとう、誕生日前日。
あと、数分で日付が変わる。
まだ、湊の欲しい物は聞き出せていない。
暫し時計とにらめっこ。
長針と短針が12時を指す。
もう、完全にアウトだ。
間に合わなかった。
何も用意できていない。
肩を落とすシンに湊が近づく。
傍らに座り、シンの腕を広げさせ腕の中にすっぽり埋まる。
「ほら、間に合っただろ…」
なんのことか最初はわからなかった。
顔を上げ、「俺は…」そう言ってシンを見上げる。
「お前が欲しい…」
愛おしむようにシンの腕を掴む。
「…それはもう」
俺は、とっくにアンタのモノなのに…。
「お前が俺のために毎年必至になってプレゼントを探してくれるのは嬉しいよ。だけどな…俺が本当に欲しいのはやっぱり、お前なんだよ…」
「……湊さん」
「いつの間にかお前と一緒に居ることが当たり前のようになっているけど、それって実は当たり前じゃないんだよな。生きていくうえで普段何気なく過ごせる日常だって、当たり前になって感謝すらしなくなるだろ?でもそうやって生活できてるのって、知らない誰かが陰で努力してくれてるお陰なんだよな…。俺がこうして毎日楽しく暮らしているのは、シン。お前のお陰だ。他の何にも代えることができないし、何処を探したってお前の代わりは見つからない。お前が俺の傍に居てくれるだけで十分嬉しいし、何でもない日常が最高のプレゼントなんだ…だから、それを感謝できる日にしたい」
「……」
湊らしい…。
そんなふうに自分のことを想ってくれているのかと思うと、益々愛おしさが込み上げる。
「だけど、せっかくの誕生日だから今日1日、お前の時間を俺にくれないか?」
「そんなので良ければいくらでも…」
「ありがとうな…。最高の誕生日プレゼントだ…」
手を伸ばし、シンの頭に手を置くと顔を引き寄せ唇を重ねる。
「これから、毎年俺の誕生日プレゼントはこれな…」
少し恥ずかしそうに笑う湊が可愛すぎて背中から抱きしめた。
ずるいよ…湊さん…。
これじゃ…俺の方がプレゼントをもらったみたいだ…。
「やっぱお前の腕ん中が1番安心する……」
シンに寄りかかった湊は瞼を閉じた。
「あったけぇ……」
そう言うと、シンの腕の中で眠り始めた。
顔をずらし、眠る湊の顔を微笑みながら見つめる。
安心して眠る湊の寝顔は、世界一可愛い。
湊の髪に顔を埋め幸せをかみしめる。
これから毎年こうして、幸せを感じられる。そう思ったら自分は、どれだけ幸せ者なのか改めて思い知らされた。
寝顔だけで俺をこんなにも幸せな気持ちにさせる湊になんだか腹がたってきた。
それと同時に、そんな幸せをこの人から貰える自分にもムカついた。
どれだけこの人のことを好きなんだよ…俺は…。
愛しい人を強く抱きしめる。
そして腕の中で眠る湊にそっと囁いた…。
「お誕生日、おめでとうございます…」
【あとがき】
昨年は、駄菓子被りに慌ててしまったので、今年は日付が変わる前に投稿してみました笑
いよいよツアーが始まりますね♪
皆さまはご乗車される予定はありますか?
それでは、また…
2025.06.05
月乃水萌
HappyBirthday 湊晃♥
コメント
3件
湊さんお誕生日おめでとう🎉 2人ともプレゼントをもらってて最高ですね♡♡ 湊さんが言ってた通り当たり前に過ごしてる時間が当たり前じゃないのはその通りだなって思いました💚 ストーリーいいですね💕︎
湊さんおめでとう🎂 2人ともどちらにとっても最高のプレゼントだね🎁
湊さん、誕生日おめでとうございます! 今過ごしてるこの時間は当たり前のようで当たり前じゃない。本当にその通りですよね。シンより長く生きてきた湊さんが言うと、より重みが感じられますね☺️ 私は8.7に初乗車します!本当に楽しみです💚🚄