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蠢く肉塊
『……は』
そう、腑抜けた声を出す
目の前にはドクンドクンと心臓の鼓動と共鳴するように縮まったり元に戻ったりする潰れた肉
その光景を見て出たのはそんな腑抜けた声。
こう言う場合は悲鳴を出すと思っていたが、そんなことはなかった
目の前の光景を脳が理解を拒んでいるのかどうかは知らないが、俺の脳はひどく冷静で目の前の、さっきまで人間の形をしていたものを人間とは理解していなく只々、そういう”反応”をする虫や植物のように考えている。
ぼんやりとその肉塊が鼓動するのを眺めているとさっきの肉塊とは違い、段々と形作っていっている
俺の一番近くにある肉塊が白い棒のような物を作り出し、5本の棒に枝分かれして行きそれがやっと腕を形作っている事を理解した
しゅるしゅると筋繊維や神経を白い骨に巻き付けていき、肉が付いていき、それは完全に腕の形を成した。
その光景に脳はそれを完全に化け物と捉え、吐き気を催した
脳がぐるぐると思考を繰り返し、全身の血の気が引いていく
足が地面に縫い付けられたように動かない、逃げ出したいのに逃げれない
失敗だ、逃げるという判断を下すのが遅かった。
腕は器用に指を使って俺に近づいて来る
『っく、来るな!来るな来るな来るな来るなぁ! 』
生存本能がその場から逃げ出せと警告を出す
後ろへ引けば足がもつれて尻餅をつく
腕は徐々に俺に近づいて来る。
惨めにも腰が抜け立てなくなった俺は足や腕の力を使って後ろに引く
腕がどんどん近付いてくる
自分の呼吸が早くなり、ドクンドクンと心臓の鼓動が煩く感じる。
『ぁ』
と間抜けな声を出す、俺に近づいて来る腕を蹴った
腕は軽く、元の場所に戻った
拍子抜けなその腕はピクリとも動いていない
その様子に少し安堵して荒れた呼吸を落ち着かせる様にゆっくりと深呼吸をする。
コロリと何かが転がってきた
コロ、コロ
“何か”と目が合った
アメジストのような色のそれは死んだ魚のような濁った目をしていた。