昔むかし、あるところに
おじさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは病弱でいつも寝ていました。
おばあさんはおじいさんの代わりに山へ芝刈へ行ったり、川で洗濯をしていました。
「ばあさん。いつもありがとうな。」
「何言っとるんだぁ。あたりめぇだぁ。」
「そうか。」
それが最後の会話でした。
数分後、じいさんは亡くなりました。
でも、ばあさんは悲しくありません。
じいさんが幽霊になって隣に居るから。
おじいさんはこの世に未練があるそうで、幽霊になってしまったみたいだ。
おばあさんは尋ねました。
「じいさんの未練って何だい。」
「多分、ばあさんと笑って話したり、楽させることだ。わしゃ、ずっと寝たきりだったから何も出来んかった。」
「そんな小さい事で幽霊になるなや。」
「小さい事ってなんや、ひどいな。」
「私は、じいさんが生きてくれているだけで幸せだった。」
おじいさんが亡くなり1ヶ月程が経しました。 相変わらず幽霊のままでなかなか成仏しません。ですが、生活はとても楽しそうでした。
おじいさんは幽霊になったことで動き回れるようになり、芝刈ができるようになりました。おじいさんはとても喜びました。
だからでしょうか、だんだんおじいさんの姿が薄くなってきました。きっとおじいさんの未練がなくなってきている証拠です。
ついに本当のお別れの時がやってきました。
「ばあさん、今までありがとうなぁ」
「こちらこそありがとうなぁ
おかげで楽しかったわ。」
「じゃあ、さようなら」
おじいさんは見えなくなりました。
おばあさんは悲しくて泣いてしまいました。
その後、おばあさんの悲しみを包むように季節外れの雪が降ったとさ。
おしまい