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リオは正座をして、両手のひらをギデオンの背中に近づける。次に目を閉じ深く深呼吸を繰り返す。そして目を開けると、手のひらに全神経を集めた。 リオの両手が白く光り、ギデオンの背中を包む。少しずつ少しずつ裂けた皮膚が塞がり血が止まる。そして全ての傷が塞がり赤い線だけになる。

傷が塞がっても、リオは手のひらをかざし続けた。冬に近づこうとする季節で寒いのに、リオの額から汗が流れる。山の中の日の当たらない滝の裏側で、より一段と寒い場所のせいで、リオの吐く息が白いのに、顎から汗がぽたぽたと滴り落ちる。

赤い線が更に薄くなった所で、リオの両手がだらんと落ちた。視界が周り、ギデオンの隣に倒れ込む。思いのほか下の岩に強く肩を打ちつけて「いて…」と声が出た。出た瞬間に腕と足に痛みを感じる。


「あー…転んで打ったっけ…。血、出てんのかな」


カーディガンとシャツの袖をめくる力もない。でも血が滲んでいる様子はないから、打っただけなのかもしれない。そんなことよりもギデオンだ。傷は塞いだ。後は目を覚ましてくれれば。

リオは目を細めてギデオンの背中を見つめる。


「ギデオン…もう、大丈夫だよ」

「んんっ…」


ギデオンの意識が戻ったのだろうか。微かに身体が揺れている。

よかった…生きてて。ギデオン、俺、怒るからな。怒ると俺の方が怖いんだからな。それで早く城に戻って、一緒にゆっくり眠ろう。ギデオンのせいで俺も不眠症になっちゃったからさ…責任取ってくれよな。


「ふぅ…ここは…」


ギデオンの低く掠れた声が聞こえる。

背中を向けていた身体を仰向けにして、手のひらで額を押さえている。

リオは、声をかけようと口を開きかけたが、寝不足続きで長距離移動を強行した上に、魔法を使って体力を消耗したために、もう声すら出せない。

天井を見ていた紫の瞳がこちらを向く。そして信じられない物でも見たかのような、これでもかというくらいに大きく目を見開く。


「リオ?リオか!なぜここにいる?それよりも俺は…」


ギデオンが勢いよく上半身を起こした。両手を見て、その手で全身を触る。背中にも触れて首を傾げ、何度も何度も背中に触れて「どういうことだ?」と低く呻いた。

リオはギデオンの様子を眺めながら、どう説明しようかと考えた。俺が来た時には傷は無かったと言おうか。もしくは、ケリーから聞いた話を出して、不思議な力を使う何者かが来て治したのではないかと言おうか。

そこまで考えて、リオは鼻から息を漏らす。

そもそも今のリオは、喋ることすらできない。心底疲れている。これは、あれだな。年に数回くる、発熱だ。ああ…ギデオンにもゲイルさんにも、手のかかる奴だと呆れられちゃうな。でもいいや。ギデオンが無事だったから。ギデオンの怪我を治したことは、俺だけが知ってればいい。


「リオはなぜここにいる?もしや俺を捜しに来たのか?」


リオは微かに頷く。頷くだけでも頭がクラクラしてしんどい。

ギデオンが焦った様子で、リオの背中を支えて起こす。


「どうした?動けぬのか?魔獣に襲われたか?…いや違う。身体が熱い。熱があるではないかっ」


リオは、いたずらがバレた子供のように、へにゃりと笑う。笑った拍子に、目尻から雫が一粒落ちた。


狼領主は俺を抱いて眠りたい

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