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全部。と云う事は、私が太宰さんでは無く中也さんを好きだと云う事もバレている筈だ。あの太宰さんが、其処を云わない筈が無い。
為らば此の指輪は。
「好きだ。結婚してくれ。」
そう云う訳だ。
「·····中也さんはずるいです。今日は私が好きッて云おうと思って来たのに!然も、私が云おうとしてた事の何倍も規模が大きい事を云うし!!指輪まで用意して、万が一私が受け取らない事は考えて無いの!?」
「ねぇよ」
何だ其れ。月を背景に、そんな風に自信満々に答えられて、指輪を差し出されて、少し微笑んだ感じの表情をされたら、断れる訳無い。
「·····中也さん」
「何だ」
「好き、です」
「知ってる」
「指輪、ください」
「嗚呼」
中也さんによって私の左手の薬指に輝いた其れは、シンプルなのに、今まで見た中で一番素敵に思えた。
「本当に私の事、二年間ずっと好きだったのですか?」
「手前、疑ってんのか?」
「だって、他の人の事が好きと云っている人を二年間も思い続けるなんて事、私には出来そうに無いので」
「素直に信じろよ、可愛くねぇな·····」
「えー、可愛くないと思う人に告白したのですか?」
「·····本当に可愛くねぇ」
「ふふ」
やばい。顔がにやけてしまう。
「何笑ってやがる」
本当に二年間好きでいてくれたなんて。
嬉し過ぎるの。
ねえ、
「中也さん」
だから、お礼を云わせて。
「ずっと好きでいてくれて、有り難う御座います」
「散々好きじゃねぇって云っておいて其れかよ·····」
何方からとも無く、近づいて。
───われら脣づけする時に、
月は頭上にあるでしょう
(中原中也「湖上」より)
Fin.