目を覚ますと、視界いっぱいに青が広がっていた。
綺麗な綺麗なその色に吸い込まれそうになりながら、ゆっくりと瞼を閉じ、また開けてみた。
また同じ空色が視界を埋め尽くす。
ここ、どこだ?
あたりに視線を移し替えれば、そこには大草原が広がっていた。
幻想的な目の前の光景に目を見開く。
それは決して感動からなんていいものじゃなかった。
重たい体を起き上がらせ、地に足をつかせてみる。
嗅覚、視覚、聴覚、味覚、そして、長草が触れる触覚。
風に揺れ、サワサワと音を立てながら足をくすぐる草に、自身がこの場所に存在していることを証明させられる。
雲が濃くなり、青にオレンジが差し掛かる。
次期に雨が降るだろう。
冴えた頭が過去を思い出させる。
消えたはずの、遠い記憶。
あぁ…そうか、「帰って来たんだ」。
「神様なんて信じた俺が馬鹿だったよ…、」
震えた声がどこまでも広がる草原へと消えていった。
『蒼い蒼い転生譚』
途方もない草原を進んでいくと、街があった。
小さく栄えるその街は夜が来ると明かりを灯し、朝になると明かりを消す。
そんな当たり前のことさえ、とても懐かしく思えた。
僕はとある老夫婦の家に泊まった。
農家を営んでいた際、僕の容姿を見た2人は放って置けなくなり、思わず声をかけたらしい。
なんとも優しく、温かい老夫婦に癒された。
その次の日、2人は跡形もなく消え去っていた。
寝具に残る血の跡に、僕がやったのだと、他の住民達は指を刺した。
「災いを呼ぶ悪魔の子」
生前から幾度となく聞いた言葉。
慣れたものだった。
人当たりの良かった老夫婦に悪態をついているものも少なくは無かったらしい。
食べ物がなくて困っている、食料費が無いので貸してくれないかと優しかった2人にせびるや否や、自身の食い扶持にしていたそうだ。
乾き切った大地に乾いた人の心。
昨日見た草原が嘘のようで、違う世界に迷い込んだようだと信じたかった。
__一つ、小さな街が無くなった。
北に進んでいくと、小さな村があった。
人々は僕を恐れた。
村人の1人が言った。
「〇〇街に住んでいた知り合いからの連絡が途絶えた。」
またある村人が言った。
「俺の知り合いは確か、白装束の少年が来たという手紙が送られた後に途絶えた。」
軽蔑、危惧の眼差しが四方八方から刺さる。
慣れた。
__また一つ、村が消えた。
村が無くなり、街が無くなり、世界が騒ぎになっているのだろう。
何人もの兵隊が嫌悪の目を向け、僕の前を通り過ぎて行った。
怪しい行動をしようものならすぐさま撃てるように、彼らは視界の端にはいつも僕を捉えていた。
懐かしい声が聞こえた。
___いいや、忘れてしまったのかもしれない。
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コメント
2件
このお話は少々特殊なものとなっており、他のお話に繋がっています。良ければ探してみてね(まだ出てなかったらごめんね)。