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「助けを求める前に、まずは自分で対処しなきゃ! 成長のチャンスだよ!!」
逆神六駆、おっさんを拗らせたような事を言い始める。
若い者が助けを求めているのに、わざと遅延行為を働くのはおっさんの悪しき慣例である。
「もぉ! 分かった! 逆神くんには頼らないもん! こんなツタ、わたしのスキルで! 『ライトカッター』! てぇぇぇいっ!」
気合一閃。
彼女のアームガードに装着された源石が、その念に呼応する。
莉子の手の平から、実に心地の良さそうなそよ風が吹いた。
「えええ!? な、なんでぇ!? 試験の時はできたのにぃ!!」
「……ああ。……ああー! そうだった! そうだった!!」
六駆は思い出していた。
そう言えば、莉子はスキルの練度が未発達だったなぁと。
さらに、試験は六駆による八百長で突破させた事実を。
「ごめんね、小坂さん! 実は試験の時のあれね、僕がやったんだよ! 君にはまだまだ修行が必要だったんだけど、ほら、何て言うか、ライブ感みたいなノリで!」
「えっ、えっ!? わたし、もしかして全然たいしたことないの!?」
「たいしたことないって言うか、限りなく一般人だね!」
「もぉー! おかしいと思ったんだよぉ! なんでそんな事するの!!」
「話せば長くなるんだけど、今じゃないとダメかな?」
「じゃあ後でいい!! とにかく、助けてぇ! なんだか気持ち悪くなって来たぁー!!」
莉子は逆さづりにされているのだから、なるほど気分も悪くなるだろう。
六駆はシンプルな解決を図るべく、ツタを切ることにした。
「ええと、アームガードを……。ダメだ、やっぱ反応しないか。じゃあ、仕方ない。『太刀風』!!」
「へっ? うひゃあっ!?」
六駆の放った『太刀風』は、ツタを一刀両断した。
するとどうなるか。
莉子が地面に落下する。
シンプルな解決法はシンプル過ぎて、アフターフォローがおざなりだった。
だが、1秒あれば充分なのが、六駆の重ねてきたキャリア。
「『瞬動』! よっと! やれやれ、危ないところだったね、小坂さん」
逆神家の基本スキルの1つである『瞬動』は、足に加速力を付与する事で、名前の通り瞬時に移動する事を可能にする。
「あ、ありがと。ってぇ、逆神くん! 後ろ、後ろ! なんかツタがいっぱい来てる!!」
「あ、本当だ。ウザいなぁ。……ちょっと待って。小坂さん。もしかして、このツタ、希少な生物だったりしないかな? 粉々にして良いヤツ? ちょっと、1回確認してもらってもいい? 万が一高価なものだったら、僕、立ち直れないよ!」
「それ、ただのヌタプラントだよぉ! ダンジョンに広く生息してる、普通の植物! 何の価値もないから、どうにかできるならどうにかしてぇ!!」
「それを聞きたかった!! 『水刃閃』!」
加圧された水を小さな穴から噴出させると、ダイヤモンドでさえも切断可能とされる。
その鋭利な刃を何度も受けたヌタプラントは、バラバラに散らばって力なく地面に落ちた。
「す、すごい……! なにそれ!? そんなスキル、見たことないよ!?」
「うーむ。まさか、こんなに早くバレるとは。僕の計算だと、2年くらいは騙せると思ったんだけどなぁ」
「よく分かんないけど、わたしの事をバカにしてることだけは分かるよ!?」
「いや、そんなつもりはないんだけど。ところで小坂さん」
「なによぉ!? またからかうんでしょ!?」
「いや。なんか、ぬめっとしたヤツに囲まれてるんだけど。どうしたら良いかな?」
「えっ? わっ、わわっ!? これ、メタルゲルだ! すごく硬くて、好戦的なモンスターだよ! で、でも、第1層にいるようなレベルじゃないよ!?」
「うわぁ。こいつら、さっきのツタ食べてる。雑食だねぇ!」
メタルゲルは、瞬く間にヌタプラントを食べ尽くした。
彼らは単純な思考しか持たない。
腹が減ったら、捕食する。
ざっと15はいるメタルゲルが、ヌタプラントを分け合って食べたところで、十分な満足感を得られたのだろうか。
六駆と莉子を取り囲んで、今にも襲い掛かろうとしている現状が答えであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「とりあえず、話はこいつらを倒してからって事でどうだろう?」
「う、うん。賛成だよ」
「ついでに良いかな? そろそろ小坂さん、下ろしても良い? 実は重くてさ」
「デリカシーがないよぉ!! 思ってても口に出しちゃダメなヤツ!!」
莉子は、六駆にお姫様抱っこされていたのだが、強引にその手を振りほどいて地面に立った。
日頃からトレーニングをしている彼女は、六駆の想定よりもずっと体力があり、それは嬉しい誤算でもあった。
「それじゃあ、さっさと片付けよう! 『太刀風』!!」
「あ、待って! 逆神くん!」
『太刀風』はメタルゲルに命中したものの、ガキンと言う金属音が響くだけで、彼らは無傷だった。
その理由は、物知り莉子さんが説明してくれる。
「メタルゲルは硬さだけだったらダンジョンに出て来るモンスターのトップテンに入るんだよ! だから、その、『太刀風』? それじゃあ倒せないと思う!」
「なるほど! 自分の攻撃が思うように通らないと、なんだか昔を思い出してワクワクしてくるな! よし、『水刃閃』ならどうだ!!」
「キシェエェェェェェェェ!!」
「あらら。一匹だけしか倒せない。意外と動きが速いな、こいつら」
「ちょ、ちょっとぉ! 逆神くん! 今のでなんだかこの子たち、すごく怒ってない!?」
「僕が食事の邪魔されたらガチギレするから、こいつらもそうなんじゃないかな?」
「なんでそんな爽やかに言うの!? 責任取ってどうにかしてよぉ!!」
六駆は「ちょっと派手になるけど、良い?」と莉子に確認を取った。
莉子は「なんでもいいよぉ!」と同意した。
「よっしゃ! テンション上がってきた! 『大竜砲』っ!!!」
六駆の両手から生み出されるのは、巨大な竜が吐く炎そのもの。
1度目の転生先の異世界で覚えた、古龍のブレスを召喚するスキルである。
「ん? ああ、これ、なんかヤバそうだ! 小坂さん、僕の後ろから動かないで!」
「ひゃ、ひゃい!」
——ドドドドドドドドドッ!
最初にボッと小さな破裂音がしたかと思えば、メタルゲルたちが一斉に大爆発を起こし、辺りは一瞬にして火の海と化した。
「おーおー! 景気よく燃えるよ! さては、可燃性の体液とか持ってるタイプだったな?」
「あのぉ、逆神くん? 言いにくい事があるんだけど」
「うん? なんだろう?」
「メタルゲルの外皮、すっごく高値で売れるよ。1キロで、30万くらい」
「あ、あ、んああ、ちっくしょぉぉぉっ!! なんてことしたんだ、僕はぁぁぁ!!!」
この時の爆音と六駆の絶叫は、第1層のいたるところへ反響したと言う。
彼は自分が数分前に言っていた通りに、立ち直れない心の傷を負った。