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◇◇◇◇
「それで?どうしたんだよ」
「白鳥はあなたのこと嫌ってると思いますって言って逃げてきた」
白鳥が日誌を取りにいったタイミングを見計らって相談すると、赤羽も混乱しているのだろう、眉間に皺を寄せながら首を捻った。
「一般人の可能性がある以上、こっちから実験とか死刑囚とか露骨に確認できねえしな」
「うーん……」
「だからといってお前みたいなセンセーショナルな事件を起こしてない限り、未成年の事件は公に報道されてないから、アイツの名前を検索しても出てこないしな」
「え、そうなの?」
青木は赤羽を振り返った。
「そりゃな。いくら法定年齢が引き下がったとはいえ、よっぽどじゃない限り未成年の実名は出ねえよ」
「ふうん……」
青木は机に突っ伏した。
自分はそれだけのことをやったのだ。
本来なら死刑を免除され生き残りたいなんて、望んじゃいけない立場なのかもしれない。
それでも――。
『お兄ちゃん!』
加奈の笑顔が蘇る。
身体が弱く、長生きは出来ないかもしれない加奈と少しでも一緒にいたい。
仕事に家事に看病に、身を粉にして働いてきた母親に恩返しがしたい。
たとえ行きつく先が地獄でも、2人のことは幸せにしてから死にたい。
「……ま、どっちにしろ、お前が勝てばいいわけだ」
赤羽は振り返った。
「状況は何一つ変わってない。いつも通りにしてろよ」
「う、うん。そうだよな!」
青木は顔を上げた。
ここでナーバスになっている場合ではない。
生き残るための行動をしなければ。
「あ、でも」
赤羽は天井を仰ぎ見た。
「万一に備えて、今夜は白鳥から目を離さない方がいいかもな。最後の最後に夜這いされるって可能性もある」
「……なるほど。それなら今夜は、どちらかの部屋でゲームでもしようと誘ってみるかな」
「それはいいけど――」
赤羽は教室の扉を振り返った。
「日誌を取りに行ったにしては遅くね?白鳥」
「――まさか……!」
青木は慌てて立ち上がった。
◇◇◇◇
「くそ……!どこだ、白鳥……!!」
青木は廊下を走り回っていた。
日誌がある職員室にはいなかった。
生徒たちが行きかう廊下にも、トイレにもその姿はない。
(白鳥……!白鳥白鳥白鳥……!!)
もうだめだ。
今日という今日は目が離せない。
ずっと一緒にいなければ――!
人の気配がない特別棟を駆け抜ける。
(数秒でも油断できない。だって、BL漫画の特徴といえば――)
「……んッ……」
「!!」
青木はその聞き覚えのある艶っぽい声に足を止めた。
「…………」
わずかに扉が開いている化学準備室に近づく。
そう。
BL漫画の特徴と言えば――。
(……急……展……開……!)
覗いた化学準備室。
ガラス棚に押し付けられるようにして、
白鳥が緑川にキスをされていた。