起きて、準備をし、家を出る
それから仕事をして、帰って、やがて寝る
その繰り返しだ
私の周りは、優しくて心が温まるような人たちがたくさんいる。
敦君や国木田君、乱歩さん…
幸せだ
幸せなはずなんだ
こんなにも贅沢なのに、今を幸せと感じることができない。
なんでだろうな
依頼を遂行しているときも、他の社員と話しているときも、名前のない感情や考えが脳裏によぎる。
周りから見ると、とんだ被害妄想だろう。
でも、たとえ唯の被害妄想だとしても
今を’’幸せ’’と感じてみたい
そんな浅はかな願い、叶うわけないよね。自分でもわかってる。
でも、もし叶ったのなら?
もし偽りの自分を捨てることができるのなら?
きっと、その瞬間は、脳内に焼き付いて離れない、夢のような瞬間なんだろうな。
まぁ、どれだけ真面目に、くだらない妄想をしたって何にもならないんだけどね
さっさと寝よう
ある夢を見た
まだ私がポートマフィアに居た頃だ。織田作と、安吾と私の3人でバーに飲んでいる夢だ。
世間には特別な夢だとか、珍しい夢があり、それを見たときには周りの人に話したり、強く印象に残るものだ。
でも、私が見た夢はそんなものとはかけ離れていた。
空を飛んだり、おかしな経験をしている夢じゃない。ただ、バーで飲みながら他愛もない話をしているだけだ。
そう、いわゆるくだらない夢だ。おそらく、殆どの人がそう考える。
だが、私にとっては至高のひと時なんだ、
どうあがいても、戻れない場所にあって、今からでは絶対に戻ることのない関係性。
「太宰は、すごいな。この年で幹部だなんて。俺は唯の雑用だ」
「なに言っているんだい、織田作。君はどの幹部、どの職業よりも素晴らしい役目を担っているじゃないか!」
「なんだ?その役目というのは」
「…私の友人っていう役目だよ、」
「ははっ、確かにな。」
「そうですよ、織田作さん。太宰君とここまで親密な関係になれるのはあなたしかいません。」
3人の会話は、途切れることはない。
ああ、いつだって会いたくてたまらないな。
それでも会えることができないなんて、なんだか複雑な感情だね。
織田作だったら、この感情にどんな名前を付けるのかな。
「…夢か。」
私は目を覚ました。
時計が差す時刻は9時17分。ありゃ、遅刻だ。また国木田君に怒られちゃう
いつものように準備をしながら、考え事をする
だが、さっきまでの夢のせいで何も考えることができない。
急に現れてなにをするかと思えば、何事もなかったかのように出ていく。夢とは大抵そんなものだ。
でもね、忘れられないんだよ。忘れろなんて言われてもね
だって、あれが私の幸せなんだ。
君が居ない世界はくすんでいて、そんな場所で生きる意味なんて見いだせない。
そのせいかは分からないが、私は錠剤を飲む癖がついていた。
辞めなきゃいけないし、続けちゃいけないものだって分かってる。分かってるよ。
なら何故飲んでしまうか。それは私でも分からない。
私は瓶から数粒の錠剤を取り出し、口に入れた。
次は鏡の前に立ち、笑顔を作る。
探偵社ではずっと作り笑顔のまんまだ。
そうでもしないと、私は探偵社に居られなくなる。
皆の知ってる私は、よく笑っている。
だけど、そんなの作り物だ。 大切な人を失ってから、笑い方なんて忘れてしまったよ。
作り笑顔の練習をしていたら、視界に花束がうつった。
白いゼラニウムとチューベローズ。これは昨日、依頼人にもらったものだ
あの時の依頼人は泣いて喜んでいたな。
私は、何もかも分からない
錠剤を飲んでしまうわけも、人の喜びも、生きている意味も
教えてほしい。誰でもいいんだ。
ずっと思い悩んでいたことが解決すると、少しは生きている気がするから。
それでも、生きなきゃいけない。息苦しさしか感じないこの世界で。
君の言う人を救う側になれてるか、分からないもんね。
たとえ、偽りの仮面でも、無題の人生でも
「…いってきます。」
End
さやえんどうさんの題コン参加しました!!
ちょっと遅れましたが💦
あと、最近全然投稿できなくて、ごめんなさい!!
これから、頑張りますね!!✨
あ、今回のお話は「無題」でございます
あと、この話で使ったもの(?)をちょっと解説しますね、
起きたときの時刻は、9時17分
9は「苦」と同じ音ですよね
17はローマ数字のXVIIを並べ替えるとVIXIとなり、「私は死んだ」という意味になります
まぁ、どちらも不吉な数字です
次に、ちょっと出てきた花束です
白いゼラニウム…「偽り」「あなたの愛を信じない」
チューベローズ…「危険な快楽」
なんか花言葉使いたかったんです!!!
さやえんどうさんの題コン、楽しかったです!!
ある限りの語彙力を総動員させました!!
コメント
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あかんもう好き結婚してくれ