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『群青色の心中』〜貴方となら海の底まで〜
最終話 『群青色の心中』
迎える…結婚式当日。外は今日を祝福するかのように気持ちのいい天気。春の暖かい風が私の頬を染めた。
『……。』
『主様。』
『ボスキ……。』
『大丈夫だ。全て終わったら、俺がすぐ隣に行く。』
俺は主様の手を握る。
『もう少し、あと少しだけ、耐えてくれ。』
『えぇ。いくらでも私は耐えられるわ。
貴方と…幸せになる為なら。』
こつんっとおでこをつけて愛を確かめる。
『お嬢様。準備が出来ました。』
『こちらもです。お嬢様。』
こくんっと頷き、4人は顔を見合わせる。
首に光るネックレスは誓いの証を示していた。
『では、みんな、また後でね。』
私達の祝福を歓声と拍手が響く。
私は一人でバージンロードを歩く。
コツコツ…。
そして、ヤーラン様へ向き直る。
『美しいですよ、メリアさん。』
『クスッ。お褒め頂き光栄ですわ。』
神父が口を開く。
『2人は病める時も健やかなる時も2人が死を分かつまで、お互いを愛し、愛されることを、誓いますか?』
淡々と誓いの言葉を聞き流す。
結婚式の場では愛の沈黙といってお互いが微笑むだけで演出になる。なんと言っても今の私は笑顔だから。偽りの笑顔。愛する人以外には見せないそんな顔。
『それでは、誓いのキスを。』
『……誓いのキス、はしません。』
『え…?』
私は頬を赤く染める。
『恥ずかしい…ので。2人きりの時でも…よろしいですか?ヤーラン様。』
うるっとした目で見つめる。
『も、もちろんです。メリアさん。』
『ふふ、でも代わりに……。最高の劇を用意いたします。』
『劇?そんなのあったか?』
『いいえ、何も聞いてないけど……。』
式場関係者がボソボソと呟く。
『すぅ……。』
私は息を吐いて、口を開く。
『本当は家の為に…なんにも知らない男に…。好きでもない男と結婚なんてしたくないんです。私。』
『め、メリア、お前、何を…っ。』
『…。』
『ねぇ。ボスキ・アリーナス。』
私はバージンロードのスタートのところにいるボスキに目を向けた。
『…はい。主様。』
『私の事を攫ってくれますか?私の貴族という身分も。貴方の従者という身分も全て捨て、私のことを。』
私はボスキに手を伸ばす。
コツコツ……。
俺はゆっくりと主様に近づく。
『あんたが望むなら、何処へでも攫ってやる。地獄でも。どこまでも。』
主様の目線を真っ直ぐ見つめた。
『ふふっ。』
『『じゃあ――2人で死のうか。』』
その言葉を口にした時、式場の扉が開き、ソウマ率いる近衛兵、マルメロが入ってきた。
『『お嬢様!!』』
『タイミングバッチリだな。主様!』
私は白いウエディング服を脱ぎ捨てる。
『もう1枚下に着てたんだな。俺好みのウエディングドレス。』
『ボスキと逃げるなら相応しい正装よ。』
俺は主様の手を握る。
『逃げるぞ、俺のプリンセス。』
『ふふ、やめてよ恥ずかしい…。』
私はボスキの頬をつつく。
『く、メリア!クソ、お前たち何をしてる!メリアを捕らえろ!』
『旦那様、我々近衛兵はお嬢様の味方です。私は、我々はお嬢様を守る為の近衛兵です。貴方の命令はもう聞きません。』
『く…おのれ、恩を仇で返すつもりか!』
『…私を信じて雇ってくださったことは感謝しています。ですが私はお嬢様の執事です。自分の主は己の身で守ります。』
私は剣を抜く
ジャキッ。
『く…っ。』
旦那様の顔に剣を向ける。
『お嬢様を…解放してあげてください。旦那様。』
『お嬢様を守るのが、メイドの仕事。』
私はメガネを外す。
『お嬢様のメイドとして…仕事をします。』
『マルメロ?貴方まさか……。』
『フッ…爪を隠してたのか。』
私はスカートをたくしあげ、矢を取り出す。
『メイド服って便利なんですよ。長いスカートがどんなものも隠してくれますから。』
『マルメロ……。』
『さぁ、行ってください。使用人の心配など無用です。お嬢様に仕えることができて、私は幸せでした。』
『……マルメロ、貴方――。』
『……っ。これからすること、なんとなく私には分かりますから。』
『……。』
私の手を握るボスキの手が…。力強くなる。
『忘れません。お嬢様。貴方のような素敵な人に仕えられたこと。』
『マルメロ…っ。』
『っ、さぁ、早く、ここは私とソウマさんが何とかします。』
マルメロは込み上げてくる何かを押し殺し私達を遠ざける。
『行くぞ、主様!』
『っ…!』
『っ。待て、行くな、メリア――!!』
私を呼ぶ声が遠ざかっていく。
『はぁ、はぁ…。』
もう、どれくらい走っただろうか。
外はもう真っ暗。
月夜に照らされた2人の影。
真っ暗な夜の闇に――取り込まれてしまいそう。
『この海……。』
『この前来たところだな。』
『夜の光に照らされて……ボスキみたいね。』
『フッどういう意味だ?』
『夢中になってずっと見ていたいってこと。』
『主様……。』
2人、手を繋ぎ冷たい海の中を歩く。
『今ここで…誓いのキス…してくれる?』
『もちろんだ。主様。』
主様の頬に触れてキスをする。
淡いリップ音を立て、唇は離れる。
『『……クスッ。』』
2人は微笑み合い、幸せを噛み締める。
数ヶ月後――。
ムスカリア家は貴族としての地位を失い没落。
近衛兵による下克上として新聞に載ることに。
ソウマさんは新しいお屋敷で変わらず執事として働いている。ちなみに私もそこの屋敷のメイドとして。
そして、お嬢様とボスキさんはというと――。
……。きっと、幸せにしてるんだと思う。
お嬢様のことだ。きっと、どこかで…幸せになっている。海で死体が見つかったという話も聞かなかった。きっと、どこかで生きている。
チャリ…。
首元のネックレスに触れる。
『お嬢様……。』
春が終わり、暑い夏が来る。
青色に光る海の色。2人に映える夏の景色――
それはもう――見られない。
チカッ――。
太陽に照らされた。浜辺の2つのネックレス――。それは何を語るか――。
知らない方が――幸せなこともある。
Merry Bad End――♡